中国軍人として戦った日本人をアニメ化「血と心」

砂原恵、の名前を聞いても誰だか判らないと答える人がほとんどであろうと思います。自分のまったく知りませんでした
太平洋戦争前、中国の満州で暮らしていた砂原少年は、その後日本人でありながら中国の人民解放軍に身を投じた人物です。中国では彼の人生を描いた漫画が出版され、アニメ化もされています
そのアニメ「血与心(血と心)」を取り上げます
「砂原恵」あるいは「血与心」で検索すると中国語のサイトが次々と見つかります。が、日本ではまったく注目されず、漫画にしろアニメにしろ話題にもなっていません。むしろ、中国側が大いに持ち上げ政治的なプロパガンダに使おうとしているのが目につく、と言うべきかもしれません
つまり、中国政府にとって都合の良い日本人、なのでしょう
あれこれ言う前に、動画を紹介しておきます

『血と心一一砂原恵さんの波乱な青春』EP1

中国の公式な対外宣伝サイト、「中国網(チャイナネット)」にはアニメ制作陣による座談会風の記事が掲載されており、これがかなりの長文です。参加者は中国外交部アジア太平洋センター広報部長、中国共産党中央学校准教授、中華日本学会会長、エグゼクティブプロデューサー、制作総監督、脚本家などなどが並んでいます
せっかくなので、彼ら彼女らの発言の一部を引用します


共通の志を持ち感動を伝える
楊璐:確かに高さんの仰る通り、『血と心』のプロジェクトチームでは、アニメチームから記録映像チームまで、エグゼクティブ・プロデューサーからプロデューサーまで、監督から脚本家まで、求めていたのは『血と心』プロジェクトに深く賛同し、同じ目標を持つ仲間でした。そして、各界の専門家のアドバイザーの先生たちが強力な支持によって、私たちの創作をさらに鍛え上げてくれました。私としては、この物語がもたらしてくれた感動が、作品を磨き上げる最大の原動力となりました。歴史は、写真や映像の記録があっても、いつも遠くにあって、真実味がないような感じで、それが近代の歴史であっても、ぼんやりとしたモノクロ画面の背後にもとは色彩や感触があったとはなかなか想像できませんでした。子どものころ、私は日本の残留孤児に関するノンフィクションを読みショックを受けました。そのとき初めて、私たちと日本との間には、戦争や血と涙、恨みだけではなく、複雑に絡み合った絆があり、一人一人の平凡で生き生きとした生命が、時代の奔流の中で、一生懸命に生きて、未来を追い求めていたことを知りました。私はアニメによって、平凡かつ偉大な物語を描きたいと思っています。その物語では、私たちと同じように、全ての人に喜怒哀楽があり、追求するものや夢があります。時代はゆっくりと移り変わり、小川のように全ての命の背後に流れています。時代の奔流は全ての人を巻き込みますが、人々はまた共に歴史の物語を紡いでいきます。そして『血と心』はこのような物語を完璧に伝えています。
高天予:シナリオライター兼シナリオ編集である私は総監督の楊さんとコンビです。私も彼らと同じく、この伝奇的な物語に非常に感動しました。私と楊さんが取り組むべきことは、砂原さんの立場の変化――「軍国少年」から「中国革命軍人」への変化――この大きな人物の軌跡をいかにリアルに表現するかということでした。私たちは砂原さんご本人の人生を深く掘り下げ、歴史を注釈とし、個人を主体として、価値観の変化の重要な節目を探し、彼の心の動きに沿って物語の流れを組み立てました。私たちは砂原さんの価値観の変化を五つの段階に分けました。つまり、①日本の敗戦を経験し、関東軍に捨てられ、軍国主義の価値観が崩れた②中国の農民に身をやつし、地元の人々に受け入れられ、新たな社会的関係が生まれ、新しい立場を確立した③土地改革を経験し、中国の土地と結ばれ、新しい家ができた④自ら解放軍に入隊し、解放戦争を経験し、中国革命と人生が結ばれ、革命価値観が確立した⑤朝鮮戦争を経験し、新中国の運命と結ばれ、アイデンティティーを再構築した――としました。内在の価値観を外在化し、視聴できるものとするために、私たちは「食べ物」を象徴的記号として選びました。中国人は「民は食をもって天となす」といいます。
(以下、略。中国網の記事から引用)


中国のこどもたちは夏休みの宿題としてこのアニメを視聴し、感想文を10ページ以上書け、などと命じられているのかもしれません
このアニメは2021年から22年頃にかけて制作されたのでしょうが、作画があまりにひどく、稚拙と言うほかない作品です。もう少し、作画の工夫ができなかったのでしょうか?あるいは中国アニメとしては十分な水準と思われているのか?
上記のように制作チームのアドバイサーとして中国共産党中央学校の准教授まで参加しており、「思想的に正しいかどうか」は入念にチェックしたのでしょう。しかし、作画レベルについては誰も感心を払わなかったと思われます
1980年代の日本のセルアニメの方がよほど高水準なレベルではないのか、と言いたくなります
日本語版まで作っているところからすると、日本の視聴者にも見せ、砂原さんの思想と行動に共感するよう求めているのでしょう。が、このレベルの作画ではよほどのマニアでないと視聴しないはずです
頭でっかちな中国共産党らしい上から目線の発想で、アニメで日本の若者にも影響を与えようとしているのかもしれませんが、無駄な試みです
紹介した第1話以外も視聴しましたが、やたら敬礼するシーンが多いのも妙な演出です。人民解放軍への忠誠心をアピールする目的で、敬礼のシーンをふんだんに盛り込んだと推測されるのですが、陳腐です
中には私服の人間が敬礼をするシーンもあり、これはバカのやることです。アメリカのトランプ大統領はスーツ姿でたびたび敬礼をしてるのですが(まあ、バカだからでしょう。敬礼する自分=カッコいいと思ってそうです)
制服を着た軍人や警察官は敬礼をしますが、彼らも私服であれば立礼するのが作法ですし、もし民間人なら敬礼をすべきではありません。敬礼はあくまで軍人や警察官といった制服着用者の作法だからです。これも政府や中国共産党が「もっと敬礼のシーンを入れろ」と要求した結果なのかもしれません。アメリカでは立礼する作法がないので、誰かに敬意を示すならば、私服の民間人なら胸に手を当てるポーズでしょうか
日本でも芸能人やHIKAKINなど、私服姿のまま敬礼するのを決めポーズにしている人たちがいたりしますが、勘違いも甚だしいと自分は感じます

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