マンガ「ブルーピリオド」感想
アニメ「ブルーピリオド」の感想は以前、書きました。アニメの方は主人公矢口八虎が東京藝大の油絵専攻に合格するまでを描いたものです
原作マンガはその後の八虎と同級生らが、東京藝大で切磋琢磨する様子が描かれています
マンガを最新刊まで読み進めましたので、感想なりを書いておきます
世田介くんという存在
高橋世田介くんは矢口八虎が大学受験のため美術予備校に通い始めた際に出会った、同年代の美大志望の高校生です。絵画は自己流で、私立高校の特進クラス在籍というキャラ。空気が読めない性格ながら初めてのデッサンで抜群の表現力を発揮するところは、ある種の発達障害(自閉スペクトラム症)を抱えているものと推測されます。箸や鉛筆、絵筆などきちんと持つことができず、握り箸のまま食事をし、握ったままの手で鉛筆を使い、絵筆もグーで握ったままで使っています
世田介くんは美術予備校の指導に馴染めず、途中で辞めてしまい、それでも現役で東京藝大学に合格しています
1年生を担当する猫屋敷教授は世田介くんに、もっと視野を広げるよう促し、フロイトやラカンを読めと勧めます
大学の1年生に教授がそんなアドバイスをするのは藝大ならではか、と驚かされます。法学部や経営学で教授が1年生にそのような助言をするのは考えられません。せいぜい、3年生になってどこかのゼミに所属するようになってからでしょう
ただ、世田介くんは猫屋敷教授の助言に反発し、「押し付けるな」と拒絶しています
全般的に、「遅めの反抗期」といった印象です
八虎と世田介の屈折した関係
世田介くんは友達もいない大学生なのですが、同じ油絵専攻の八虎は何かと世田介くんに接近し、どうにか関係を維持しようと務めます
2人は対称的と呼べる存在ではなく、随分と歪で凸凹した非対称的存在であり、互いに補完し合うほど噛み合ったりはしていません。むしろ、互いにわかり合えない存在です
ここが「ブルーピリオド」の描写の優れたところです。凡庸な作家なら、主人公の隣に主人公とは真逆な人物を配置し、ライバルであると同時に互いに補完し合う関係として描くのでしょう
が、そのような予定調和的なストーリー仕立てにはせず、噛み合わないまま衝突し、火花を散らす関係として描き出しているところが作品としての妙味になっています
プレッシャーという魔法
東京藝大の教授たちは1年生の作品を容赦なくぶった斬り、批判し、時には講評もしないほど無視するなど、学生たちにプレッシャーをかけまくるシーンが「ブルーピリオド」に登場します
作者山口つばさが実体験したまま、なのでしょう
背景には4年間で作家・芸術家としてやっていける、その前段階まで学生を引き上げる目的があり、これは他の学部にない美術学部ならではの特性です
もちろん、すべての学生が作家・芸術家を目指すわけもなく、一般企業に就職したり美術教師になったりするのですが、あくまで東京藝大の存立目的は日本を代表する作家・芸術家の輩出であり、教授たちの指導もそこを目指し妥協しない姿勢があります
結果として、主人公矢口八虎や高橋世田介、その他の学生が作家・芸術家になるのかどうかは判りませんが、プレッシャーに受けつつ成長しようとする姿が「ブルーピリオド」の最大の見せ場だと思います
まだ連載が継続していますので、彼ら・彼女らがどこへ向かうのか、ハラハラしながら見守りたいと思います
静止画MAD】%【ブルーピリオド】
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