細田守監督「果しなきスカーレット」大コケ
日本のアニメーション界を代表する作家の1人、細田守監督の劇場版アニメ「果てしなきスカーレット」が公開されました。「正月映画の本命」と前評判を煽る報道があったものの、公開から悪評プンプンで観客動員は低調のまま推移しており、正月映画どころかクリスマス前に打ち切りになりそうです
これまで「サマーウォーズ」や「時をかける少女」でファンを増やしてきた細田監督ですが、なぜ「果てしなきスカーレット」で躓いてしまったのか?
まずは「正月映画の本命」と持ち上げていた東洋経済Online掲載の記事から一部を引用します
賛否両論ありながら…。それでも細田守監督《果てしなきスカーレット》が正月映画興行の"大本命"であるワケ
(前略)
本作は、細田監督の8作目の長編アニメーション映画であり、原作・脚本・監督を手がける4年ぶりのオリジナル新作になる。
これまでの7作では、作品ごとに、青春、家族の絆、親子愛、種族を超えた友情、命の連鎖、現実と仮想の世界など、そのときどきの明確なテーマのもと、監督自らの社会への思いをメッセージとして込めてきた。
そんな作品の多くは国内外の映画祭で高く評価され、数々の賞を受賞するとともに、国内興行を盛り上げてきた。
2010年代以降の作品では、『おおかみこどもの雨と雪』(2012年)が興収42.2億円、『バケモノの子』(2015年)が興収58.5億円、『未来のミライ』(2018年)が興収28.8億円、『竜とそばかすの姫』(2021年)が興収66億円といずれも大ヒット。
(中略)
物語は、16世紀末のデンマークからはじまる。王である父が、父の弟の謀略により処刑された王女スカーレット(芦田愛菜)は、父の復讐を遂げようとするが失敗し、「死者の国」で目を覚ます。そこは、人々が略奪と暴力に明け暮れ、力のない者や傷ついた者は「虚無」となり、その存在が消えてしまう死後の世界だった。
スカーレットはそこで、仮死状態でやってきた現代日本の看護師の青年・聖(岡田将生)と出会う一方、父を殺して王位を奪った叔父もまたその世界にいることを知る。改めて復讐を胸に誓ったスカーレットは、父の仇を追い求め「見果てぬ場所」と呼ばれる幻の地を、聖とともに目指す。
その過程では、中世ヨーロッパに生まれ、戦うことでしか生きられないスカーレットと、平和な現代日本で育ち、たとえ戦争でも傷つけ合うことを望まない聖は、ことあるごとにぶつかり、ときに対立もする。
しかし、異なる時代の社会を生きてきたふたりの関係性は、数々の困難をともに乗り越えていくうちに変わっていく。傷ついた自分の身体を治療し、敵・味方にかかわらず優しく接する聖の温かい人柄に触れ、凍りついていたスカーレットの心は、徐々に溶かされていく。
その果てしない旅路の末にたどり着く場所で、スカーレットはある決断を迫られる。旅を経て、世界を知り、自分とは異なる他者への理解と共感を得ることができるようになった彼女の成長物語には、現代社会に対する力強いメッセージが込められている。
(中略)
ある意味、伝えるテーマは真っ直ぐであり、ありきたりとも言えるかもしれない。加えて、ストーリーは子ども向けのわかりやすい構造の王道のアクション作品だ。誰もが楽しめる万人向けの映画である一方、大人の映画ファンにとっては、その物語性を物足りなく感じる部分もあるかもしれない。
それでも、青くさいほどに真っ直ぐな思いが込められたド直球のストーリーと、それを映すアニメーションの圧巻の美しさには、観客の心を揺さぶる力が宿っている。
(以下、略)
以上のように絶賛し、多くの観客動員が見込めると力説していたのですが、フタを開けたら批判の嵐というのが実際です
批判される点はさまざまですが、脚本の問題を指摘する声が最も多いようです
本作は細田監督自身が脚本を担当しています。しかし、過去の細田作品の多くは奥寺佐渡子が脚本を担当し、その緻密な構成と繊細な心理描写こそが細田作品の魅力を作り上げていた、といえます
ちなみに奥寺佐渡子による脚本で大ヒットとなっているのが、現在もロングラン上映中の映画「国宝」です。いかに脚本の力が大きいものであるかが判ります
脚本の問題で言うなら、細田監督率いる制作チームの中で、「ここ、おかしいんじゃないですが?」と監督に面と向かって指摘できる人物がいなかったのでしょう。これは宮崎駿監督のスタジオジブリも同じで、宮崎監督の脚本をおかしいと言えるのは鈴木敏夫プロデューサーくらいで、一介のアニメーターがダメ出ししようものなら「出ていけ!」と追い出されたはずです
有名監督が脚本も演出も兼ねると、往々にしてこのような結果を招きます。ワンマン体制が功を奏して大ヒット作品を生み出す場合もあれば、「果てしなき…」のように誰からも批判される出来栄えで終わる場合もあると
細田監督も本作での躓きを教訓として、しっかりした脚本家を起用して次作に挑んでもらいたいものです
予告『果てしなきスカーレット』
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