宝塚ボーガン殺人 野津被告に死刑求刑
自分の母親、祖母、実弟をボーガンで殺害し、伯母にも重傷を負わせた野津英滉の裁判で、神戸地検は死刑を求刑しています
弁護側は「犯行当時、被告は心神耗弱状態であった」と主張し、有期刑が相当だと最終弁論を展開しています
弁護側は「犯行当時、被告は心神耗弱状態であった」と主張し、有期刑が相当だと最終弁論を展開しています
3人を殺害し、1人に重傷を負わせた犯行ですから検察が死刑を求刑するのは妥当でしょう。ただ、前回ブログで取り上げたように、野津被告は祖母が発達障害で実母も発達障害という家庭環境に生まれ、本人自身も自閉スペクトラム症を抱えた事情があり、そこをどう判断するかが問題です。もちろん、殺害行為そのものは野津被告の意志であり、電波や天の声に操られているわけでもなく、ボーガンによる試し撃ちも行って殺傷能力を確認していますので、計画的な犯行に違いはありません
兵庫県宝塚市の住宅で2020年、洋弓銃ボーガン(クロスボウ)で家族ら4人を殺傷したとして殺人と殺人未遂の罪に問われた、無職野津英滉(ひであき)被告(28)の裁判員裁判が15日、神戸地裁(松田道別(ちわき)裁判長)で結審した。
検察側は「刑事責任は類をみないほど大きい」として死刑を求刑。弁護側は「事件当時は心神耗弱の状態だった」として懲役25年の判決を求めた。
争点は被告の刑事責任能力の程度。検察側は、被告の精神鑑定結果を踏まえ、動機に妄想や荒唐無稽な事情はなく、事件当日の行動も合理的と指摘。自閉スペクトラム症が犯行に与えた影響は大きくなく、完全責任能力があったと主張した。そのうえで、動機は自己中心的で人命軽視の程度は大きく、「極刑はやむを得ない」と述べた。
弁護側は、自閉スペクトラム症の特性である極端な思考を考慮せずに、動機を説明することは難しいと主張。被告が自身の行動を制御する能力があったのかは疑問が残るうえ、他の事件と比較して刑事責任が最も重いとは言えないなどとして、「有期懲役を考えるべき事案」と訴えた。
被告は20年6月4日午前、自宅で祖母の好美さん(当時75)、弟の英志(ひでゆき)さん(同22)、母のマユミさん(同47)の頭にクロスボウの矢を放って殺害。伯母(55)も撃って首の骨を折るなどの傷害を負わせたとして起訴された。
被告人質問などによると、被告は18年夏から心身に不調が生じ、この苦しみの原因は母、弟、祖母にあると考えるようになった。3人を殺害して死刑になろうと考え、確実に死刑になるために、伯母も殺害の対象としたという。
この日は、伯母が意見陳述し「あなたの行動は絶対に許されることなんてない。死ぬ瞬間まで後悔し、苦しみ、3人にざんげし続けて欲しい」と涙ながらに述べた。
判決は31日に言い渡される。
(朝日新聞の記事から引用)
先に長野の4人殺害事件でも死刑判決が示されています。犯行の形態も経緯も環境も異なるため、長野の事件と同一視するのは適切ではないものの、複数名の殺害という範疇で考えるなら、本件も死刑判決が予想されるのは当然です
複数名を殺害するような凶悪犯は死刑が当然、という世間一般のとらえ方(社会の空気)がそう求めているともいえます
敢えてその空気に逆らうような判決を示せるだけの胆力が裁判官にあるのか、それとも空気を読んで求刑通り死刑判決を言い渡すのか、31日の判決が注目されます。死刑を言い渡すのであれば、野津被告は判決を耳にして「なるほど、そうか」と納得できるだけの判決文を示してもらいたいものです
野津被告は死刑になりたいと欲して親族殺害を実行したのですから、判決文を聞いて「何も判っていないじゃないか」と不満を抱き、控訴したくなるような紋切り型の判決では困ります
話は逸れますが、高市早苗自民党総裁ら安倍晋三元首相の流れをくむ保守派政治家は、「美しい日本の家族(制度)」を過度に重視します
つまり核家族化を良しとせず、夫婦別姓に反対し、明治時代のような家父長制を理想とする考えを抱いているわけです
ただ、家族関係が近しく密であればあるほど、本件のような家族間の殺人が増えるのではないか、と想像します。他国と簡単には比較できないものの、「家族関係が上手く行かないのであればこどもたちは家を離れ、出ていくのが当たり前」といった社会が外国にあるのに、日本の場合は20歳を過ぎても親またはその他の近親者と同居しているのが当たり前です。ゆえに20歳を過ぎても実家のこども部屋で暮らす「こどもオジサン」とか「こどもオバサン」と揶揄される存在があります
親との同居が悪いのではなく、その中身(大人になっても親に生活の面倒を見てもらっているオジサン、オバサン)が問題です。親に寄生する息子や娘の存在もひっくるめて「美しい日本の家族」とは言えないと感じたので書きました
(関連記事)
宝塚ボーガン殺人 「罪の意識はまったくない」
宝塚ボーガン殺人 裁判で心神耗弱を主張し争う
宝塚ボーガン殺人 事件から5年を経て公判再開
宝塚ボーガン殺人 野津被告の病気で公判予定取消し
宝塚ボーガン殺人 野津英滉を起訴
宝塚ボーガン殺人 家族3人殺害
神戸5人殺傷事件を考える 心神喪失で無罪判決
神戸5人殺傷事件を考える 無期懲役求刑
神戸5人殺傷事件を考える 「ゾンビを殺した」
神戸5人殺傷事件を考える 初公判で心神喪失主張
神戸5人殺傷事件を考える 2度連続の精神鑑定
神戸5人殺傷事件を考える 逮捕後は黙秘
福岡母子3人殺害事件を考える 死刑判決
福岡母子3人殺害事件を考える 冤罪を主張も言い分は?
福岡母子3人殺害事件を考える 初公判で無罪主張
福岡母子3人殺害事件を考える 中田容疑者黙秘
福岡母子3人殺害事件を考える 夫の警察官を逮捕
淡路島5人殺害事件 平野被告に死刑判決