宝塚ボーガン殺人 野津被告の壮絶な生い立ち

殺人事件の被告が「壮絶な生い立ち」を抱えているとの報道は飽きるほど見てきました。環境の負因が犯行の引き金などという、決まり切ったセリフは使いたくないのですが、人格形成や価値観、人生観といったものに環境が与える影響は決して無視できないとの考えには同感です
宝塚市でボーガンを使い実母、祖母、実弟を殺害し伯母に重傷を負わせた野津英滉被告(28)について、いかなる生い立ちであったか、情報は断片的に報じられるだけで全体像が掴めないままでした
ここにきてNEWSポストセブンが、野津被告の生い立ちをまとめて記事にしていますので、一部を引用します。この記事は第2回公判で弁護人が明らかにした、野津被告の供述によるものです


(前略)
両親は、弟が生まれてすぐ離婚した。父が母に向かって「こっちの方が被害者だ」「こんな奴に子を育てられるか」などと親権を主張していたと、被告人は祖母から聞かされたという。
被告人が小学生のときから、被告人、母、弟の3人暮らしだった。母から直接伝えられていなかったが、母は先天的なアスペルガー症候群・発達障害を持っていたと後から知ったのだという。被告人本人は小学生の頃に自閉症スペクトラムだと診断され、弟は多動性障害だった。弟が生まれてから、母は弟につきっきりだった。
母と弟は、日常的にベロを舐め合ったり、同級生がイチャイチャとじゃれあうような関わりをしていた。食事はカップ麺の上に白米をのせたものなど、「小学生が思いつくようなもの」であったという。最初はそれが普通だと思っていたが、学校で同級生の弁当と見比べて「ちょっと違うな」と思うようになったという。
被告人は弟のことを「いらんことしいのクソガキ」と表現した。弟は被告人の嫌がることをわざとし、自分のわがままが通るまで駄々をこねたという。
母親は怒ると口を聞いてくれなかったり、物を壊したり、行先も告げずに家を出て外泊することがあった。中学生に入って、被告人の表現では「母の資質を疑った」「親としての資格がないのでは」などと思い、ストレスがたまり暴力を振るうようになる。
(中略)
「母親ごっこをする女の子」
被告人にとって、母親は特にストレスの原因だと感じていたようで、陳述には多くの時間が費やされた。
母親は人からの見られ方をとても気にしていたという。周囲にはシングルマザーとしてしっかりしていると見せていたが、被告人自身は愛情を受けていないと感じており、自分ら子どものことを「頑張っていることを示す道具」としか思っていないのでは、と感じていた。他にも「母から教わったことはない」、「母親ごっこをする女の子」とも表現されていた。
そんな家族関係のストレスもあってか、中学生時から被告人は強迫性洗浄障害と診断されたという。何度も手を洗い、トイレには1~2時間こもる。それにさらにストレスもたまり、中学生時に自殺を考える。しかし、自殺しても母は何も感じないどころか、自分の良いようにあれこれ言うだろうと考え、それならば前向きに生きようという思いに転じた。
(以下、略。NEWSポストセブンの記事から引用)


実母がアスペルガー障害、野津被告は自閉スペクトル症、弟は注意欠陥多動障害という家庭ですから、一般人の想像を超える状態だったろうと想像します。そんな家族を祖母が懸命に世話をしたのだろうと思われますが、家庭環境が改善はしなかったのでしょう
両親の離婚も、実母が家事などまったくできない人であったため、と考えられます(家事は女の仕事、という先入観はさておき)
祖母にすれば、変わり者の娘ではあるけれど自分の産んだこどもですから、人並みに結婚して家庭を持ってほしいと願うのは理解できます。しかし、実生活は目茶苦茶で、夫は愛想を尽かして出ていきました
記事では触れられていないのですが、野津被告の母親がアスペルガー障害との診断を受けたのは大人になってからではないか、と想像します。こどもの頃に診断を受けていたのであれば、専門的な治療を受ける機会があったはずです。もちろん、その機会を活かすことができたかどうかは別ですが
記事からの引用では省略しましたが、野津被告は祖母についても母親と同様に異常があったと主張しており、祖母もおそらく何らかの発達障害を抱えた人だった可能性があります
こうした家庭環境にあっても、野津被告自身が家を出て自活するだけの能力がなく、結局は祖母宅に同居せざるを得ない状態にあり、不遇感と不満を蓄積していったと考えられます

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