宝塚ボーガン殺人 裁判で心神耗弱を主張し争う

2020年6月、宝塚市の自宅でボーガンを使い、実母や祖母、弟を殺害し、伯母にも重傷を負わせたとして逮捕・起訴されていた野津英滉被告の初公判がありました
野津被告の裁判は2022年に始められる予定でしたが、野津被告の精神状態が悪化したとの理由で取り消されています
他の病気とは異なり、精神障害の場合は被告にどこまで治療をするべきか、判断が難しいところがあります。もちろん、被告は無罪の推定を受けるので命に関わる病気なら治療しなければなりません。ただ、精神障害の場合、治療した結果、人格が大きく変容してしまうようでは後の裁判に影響が出てしまいます。だからといって治療せず放置はできません
裁判の考え方としては、治療により人格を含む精神状態全般に影響が及んだとしても、裁かられるのは犯行当時の被告本人なのですから、たとえ人格の変容があったとしても裁判そのものは有効であり、罪を問える…となっています。ただ、治療の結果、完全に心神喪失状態になってしまったケースでは自己防御力を喪失したものとして裁判は行われません


兵庫県宝塚市の住宅で令和2年6月、家族ら4人をボーガン(クロスボウ)で撃って殺傷したとして、殺人や殺人未遂の罪に問われた無職、野津英滉(ひであき)被告(28)の裁判員裁判の初公判が25日、神戸地裁(松田道別裁判長)で開かれ、被告は起訴内容を認めた。弁護側は「心神耗弱状態だった」として、責任能力を争う姿勢を示した。
野津被告の公判期日は4年10~11月にいったん指定されたが、被告の心身の不調を理由に取り消されていた。
検察側は冒頭陳述で、母親からの愛情を感じられなかったことなどから被告が家族3人に不満を募らせ、「将来の展望を奪われた」と考えていたと指摘。3人を殺して死刑になろうと考え、確実に死刑になるため伯母の殺害も計画したとした。
事件前にはナイフも購入していたが、ボーガンの方が「(実行に)抵抗が少ない」と考えたとも指摘。自宅付近のブロック塀などで試し打ちもしており、「計画性が高い。強固な殺意を持って犯行に及んだ」として、完全責任能力が認められると主張した。
これに対し、弁護側は被告について「ストレスの多い厳しい家庭環境だった」とした上で、事件当時は発達障害の影響を強く受け、心神耗弱状態だったと主張した。
起訴状によると、被告は2年6月4日、自宅で同居していた祖母の好美(よしみ)さん=当時(75)=と弟の英志(ひでゆき)さん=同(22)、別居する母親のマユミさん=同(47)=の頭部をボーガンで撃って殺害し、伯母(55)にも首に矢を命中させて重傷を負わせたとされる。
ボーガンは引き金を引いて装塡された矢を発射する仕組み。事件を機に規制を求める声が高まり、4年の改正銃刀法の施行で所持が原則禁止された。
(産経新聞の記事から引用)


今後、起訴前に検察側が実施した精神鑑定の結果が明らかにされるはずです。また、弁護側の申し立てによって別の鑑定医による2度めの精神鑑定が行われているはずで、そちらの鑑定結果も弁護側の証拠として提出されます
前回も書いたように、野津被告は中学時代に引きこもりとなり(その原因や事情は不明です)、その後、神戸市内の高校に通うながらガソリンスタンドでアルバイトを続けた、とされます。となれば、対人関係に難があったとは考えにくく、どのような発達障害の症状を抱えていたのか問われます
もちろん、発達障害(最近では自閉スペクトラム症の呼称です)を抱えたこどもが皆、ボーガンを乱射したりはしません。殺害の動機を抱くようになった事情・環境と発達障害そのものを混同させるのは誤りですし、危険な考え方です
過去の裁判例からしても、発達障害=心神耗弱だから減刑、などと単純に決めつける雑な判例は滅多にありません。むしろ、発達障害が犯行に影響していることを考慮しても有罪とし、量刑判断の中で1年~2年くらい求刑から割り引く判断が多いように感じます(あくまで自分の所感です)
野津被告が殺意を抱くに至った経緯と発達障害の影響について、慎重な判断が求められます

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