北九州市中学生刺殺 2度目の鑑定留置へ

2024年12月、北九州市のマクドナルド店内で男女の中学生が男に刺され、1人が死亡、1人が重傷を負った事件の続報です
鑑定留置となっていた平原政徳容疑者について、福岡地検小倉支部は起訴するかどうかの判断を保留し、再度の鑑定留置を実施すると報じられています
一度は終了した鑑定留置の結果を受け、起訴する方針であると報道されていましが、土壇場で判断がひっくり返り異例となる起訴前の2度目の鑑定留置、という事態になっています
起訴の方針を報じた記事と、2度目の鑑定留置を決めたと報じる記事の2つを貼ります


北九州市小倉南区のファストフード店で2024年12月、中学3年の男女2人が殺傷された事件で、殺人容疑などで逮捕された平原(ひらばる)政徳容疑者(44)について、福岡地検小倉支部が殺人罪などで月内にも起訴する方針を固めたことが関係者への取材で判明した。地検小倉支部は14日に平原容疑者の鑑定留置を終了。これまでの捜査も踏まえ、刑事責任を問えると判断した模様だ。
事件は24年12月14日夜、小倉南区徳力(とくりき)1のマクドナルド店舗内で発生。レジの列の最後尾に並んでいた中学3年の男女2人が立て続けに刃物で刺された。腹部を刺された女子生徒(15)は死亡し、腰を刺された男子生徒も1カ月の重傷を負った。福岡県警は同19日に男子生徒に対する殺人未遂容疑で平原容疑者を逮捕し、25年1月9日に女子生徒への殺人容疑で再逮捕していた。
関係者によると、平原容疑者には事件当時、精神疾患があった。ただ、地検小倉支部は当初から、幻覚に支配されて事件を起こしたケースではないとみていた。
一方、平原容疑者が面識のない中学生2人に対し、一方的な怒りを募らせて襲ったとみられる状況から、動機は判然としていなかった。想定される裁判員裁判では刑事責任能力が争点になる可能性があることから、14日まで約3カ月間の鑑定留置を実施していた。
地検小倉支部は事件後に逃走して県警の捜査を警戒するような態度を示すといった合理的な行動を繰り返していたことなども踏まえ、刑事責任能力があると結論付けた模様だ。
平原容疑者の勾留期限はまだ残っており、地検小倉支部は鑑定結果も踏まえ、さらに補充捜査を重ねた上で最終的に起訴する見通し。
(毎日新聞の記事から引用)

北九州市の中学3年男女殺傷事件で、福岡地検小倉支部は16日、殺人容疑などで逮捕された平原政徳容疑者(44)の2度目の鑑定留置を始めた。7月15日まで。起訴前の勾留中に、検察が再び鑑定留置を行うのは異例。14日に終了した医師による精神鑑定の結果、刑事責任能力が疑問視され、もう一度調べる必要があると判断した。
起訴した場合、公判では精神状態が争点になる可能性が高い。地検は「責任能力の有無・程度につき、判断に慎重を期すため」としている。
捜査関係者や弁護人によると、平原容疑者は2人を刺したことは否定していないが、殺意については認めていないとみられる。
事件は昨年12月14日夜、同市小倉南区のファストフード店で発生。一緒に勉強に訪れた男子生徒(15)と中島咲彩さん(15)が刃物で刺され、中島さんは死亡、男子生徒も重傷を負った。
県警が同19日に男子生徒に対する殺人未遂容疑で平原容疑者を逮捕。今年1月9日に中島さんに対する殺人容疑で再逮捕した後、地検が同16日に1度目の鑑定留置を始めた。
(共同通信の記事から引用)


小倉支部の判断だけでなく、福岡地検の検事正や次席検事も加わって裁判に耐えられるか(つまり有罪判決に持ち込めるか)を検討したのでしょう
鑑定留置(精神鑑定)の結果、平原容疑者に精神疾患があったとの鑑定書が出たようです。しかし、小倉支部では当初、精神疾患の影響はあったものの幻聴や幻覚に支配されて責任能力を完全に喪失していたわけではなく、刑事責任を問えると判断して起訴するつもりだったと思われます
が、裁判で刑事責任能力が争点になった場合、心神耗弱と判断され相応の減刑した判決が下されるのではないかと危惧する声が出て、補充捜査の実施と再度の鑑定留置をすべきとの結論になった…と推測されます
犯行動機を平原被告は語っていません。通常は鑑定留置による医師の所見(犯行に至った経緯、その心情の変化などなど)を参考にして犯行動機部分を検事が推察し、起訴状を作成するのですが、本件の場合は医師の所見が犯行の動機となる部分を補完するのは弱かったのかもしれません
ただし、鑑定医は捜査官ではありませんので事件について事細かく掘り下げたりはしませんし、それを求められてもいません。刑事責任能力の有無を判断するのはあくまで検事の役割で、鑑定医は社会生活を支障なく送れるだけの判断能力・見当識があるかどうかを判断するにとどまります
平原容疑者の日常生活と中学生刺殺という犯行がかけ離れすぎ、犯行に至る心情の変化なり動機をある程度説明できないと、「刑事責任能力がなかったのではないか」と突っ込まれてしまうのを懸念したのでしょう
補充捜査は平原容疑者の犯行動機を説明できる裏付け(縁者や知人が本人から聞いた話、周辺住民の目撃談など)を探せ、というものと思われます
追記:平原容疑者の2度目の鑑定留置期間(7月15日まで)が切れるのを前に、福岡地検はさらに鑑定留置期間の延長が必要と判断し、裁判所に申し立てる方針だと報じられています。精神疾患のため(心神喪失)、刑罰に問えないとして起訴を断念する事態は何としても避けたいのでしょう

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