八戸5歳児虐待死 検証報告書は出たものの

こどもが虐待の結果死亡する事件が繰り返されています。事件が起こるたび、児童相談所の対応が問題視され、第三者委員会による検証報告書が作成されるのですが、この検証報告が役に立っているのか、児童相談所の業務が改善されているのか、疑問です
八戸で当時5歳の幼児が母親の同棲相手だった男から冷水を浴びさせられ殺害された事件では、八戸児童相談所が「対応に問題はなかった」と言わんばかりの会見をしていました
しかし、その後の報道で児童相談所の稚拙な対応が明るみになるや、児童相談所長は「当時、虐待の通報が急増し、緊急を要する件への対応に追われていたので…」と釈明にもならない釈明をしています
報道によれば、八戸の児童相談所の対応について検証結果がまとめられ、報告書として提出されたとありますので、取り上げます


青森県八戸市で昨年1月、宮本望愛(のの)ちゃん=当時(5)=が母親と交際相手の男に冷水を浴びせられ死亡した事件で、県は17日、第三者組織がまとめた検証報告書を公表した。報告書は、2023年9月に2度目の虐待通告を受けた八戸児童相談所の対応について「警察の情報のみで安全と判断せず、速やかに接触して確認するべきだった」と指摘した。警察が望愛ちゃんと接触したことを理由に、目視で安全を確認しなかったことを問題視した。
報告書によると、23年7月の最初の虐待通告時に児相は、望愛ちゃんは元気-と親族から聞いただけで本人に会えなかった。面接が実現したのは10月の1回だけで、望愛ちゃん本人は「(母親や交際相手が)たたかない」と答えていた。
児相は結局、当時妊娠中の母親に産科受診や保育所利用に関する指導助言を行ったとして同年11月に指導を終結させた。しかし報告書は、指導が守られているか確認したり、一家が交際相手の実家を離れアパートへ転居したばかりであるといった状況の変化を考慮したりした上で「指導終結の判断を慎重にする必要があった」と結論づけた。
八戸市についても、健診未受診や未就園などさまざまな情報を踏まえ、一家の虐待リスクを把握し主体的に関与する方法を検討するべきだった-と言及した。
児相は「指導終結」を市に連絡したとの認識だったが、市は終結を把握しておらず、両者の連携不足についても明らかになった。
報告書は、八戸市へ転入する前から一家にはさまざまな機関が関与していたものの、それぞれが把握している情報は一部分のみで「一時保護」など緊急的な対応を判断するのは難しかった-と総括。虐待悪化防止のためには、各機関の連携により的確な情報共有や役割分担をすることが土台になると提言した。
県に対しては、当時の八戸児相が多くの虐待通告を抱え負担が増大していたとし、職員の適正配置や専門性の向上、業務の効率化などを進めるよう要望した。
事件では望愛ちゃんが低体温症による急性循環不全で死亡。母親と交際相手は保護責任者遺棄致死罪で起訴され、母親は懲役9年の実刑判決が確定している。
(東奥日報の記事から引用)


この事件で母親の宮本菜々美被告には懲役9年の刑が確定していますが、冷水を浴びせて望愛ちゃんを死亡させた関戸亮被告の公判はまだ始まっていません。おそらく容疑を否認しているのでしょう
さて、事件処理の方はともかくとして、なぜ児童相談所が腰の引けた対応しかしないのかが問題です。本件の場合、家庭訪問をしなかった理由として宮本被告と関戸被告が「仕事が忙しくて訪問を受けられない」と拒絶していたと児童相談所側は説明しますが、関戸被告は無職で家の中でゴロゴロしていたのが実際です。官庁執務時間内(8時半から夕方5時)に家庭訪問できないのであれば、早朝なり夜間に家庭訪問すべきであり、その際の勤務時間については児童相談所内で調整するのが当然です
また、家庭訪問した際には望愛ちゃんの服の上から「体にアザがないことを確認した」と児童相談所は説明しており、「それで仕事をしたつもりなのか」と言いたくなります。服の上から体のアザが見えるはずがありません
虐待がバレるのを警戒した関戸被告が服を脱がせるのに強硬に反対し、児童相談所職員を脅したり凄んだりしたと想像するのですが、そこで怯んだらダメでしょう
体にアザがないか確認しようとして、これに反対する保護者はほぼ確実に虐待をしているのですから
どれだけ立派な検証報告書ができあがったとしても、現場の児童相談所職員の意識が変わらなければ無駄です

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