京都アニメーション放火事件 控訴取り下げの行方
1審で死刑判決を受けた青葉真死刑囚ですが、高等裁判所に判決を不服として控訴していました。しかし、1月27日に青葉死刑囚自身が控訴取り下げの手続きをしたため、担当弁護士が慌てて大阪高裁に取り下げを無効とするよう申し入れをしています
被告が弁護士に相談しないまま控訴を取り下げるのは珍しくありません。背景には、青葉死刑囚が1審での弁護側主張に対する不満と不審があったとされます
36人が死亡、32人が重軽傷を負った京都アニメーション放火殺人事件で、一審の京都地裁で死刑判決を言い渡された青葉真司死刑囚(46)が、自ら控訴を取り下げた理由について、控訴審でも弁護側が自身の言動を妄想だと主張することに不満があったと弁護人に説明していたことが3日、関係者への取材で分かった。
青葉死刑囚本人が1月27日に控訴取り下げ書を大阪高裁に提出し、刑が確定。弁護側は同30日付で、取り下げを無効とするよう高裁に申し入れていた。
関係者によると、弁護側が先月28日に無効を申し入れた理由を説明する書面を高裁に提出した。
書面によると、青葉死刑囚は弁護人に対し、控訴審でも妄想と主張されることを懸念して取り下げたと伝えたという。弁護側は、こうした経緯を踏まえて、青葉死刑囚が自身を守るための正常な判断ができていなかったとして、本人による控訴取り下げは無効だと主張している。
弁護側は一審で、青葉死刑囚が責任能力のない心神喪失か、著しく低い心神耗弱状態だったと主張。昨年1月25日の地裁判決は、精神鑑定に基づき青葉死刑囚が「妄想性障害」だったと認定する一方、放火殺人という手段の選択に妄想の影響はほとんどないとして完全責任能力を認め、死刑を言い渡した。弁護側と本人が大阪高裁に控訴していた。
刑事訴訟法は被告本人が控訴を取り下げることができると定めている。一方、刑訴法に明確な規定はないが、本人が行った控訴取り下げに対し、弁護人は無効を申し入れることができる。
(京都新聞の記事から引用)
1審で弁護人は、「青葉死刑囚が妄想に支配された状態で、刑事責任能力を問えない心神喪失か、あるいは政治責任能力が大きく減退した心神耗弱状態にあった」と主張して争っていました。が、青葉死刑囚にすれば「京都アニメーションが自分の小説をパクった」とした認識と、それに伴う怒りは十分に現実的なもの(リアル)であり、それを頭から「妄想」だと決めつける弁護人の弁論に納得できなかったのでしょう
弁護人にすれば刑事責任能力で争い、減刑を勝ち取ることこそ青葉死刑囚の利益と考え、「妄想に支配された男」との前提で裁判を闘ったわけですが、両者の間に考え方の違いがあったと言わざるを得ません
青葉死刑囚にすれば自分の体験した怒りや不満、鬱憤をリアルなものとし、そこをベースに裁判を闘いたかったのでしょう
当ブログで前回取り上げた、青葉死刑囚の控訴趣意書も弁護人の主張してきた「妄想に支配された男」路線のままであり、これでは控訴審でも「妄想を抱いた男」扱いされるわけで、青葉死刑囚が控訴を取り下げる気になったのは理解できます
であるからといって、弁護人がいまさら控訴趣意書を差し替え、「妄想に支配された男」路線を放棄するとは考えられません。大阪高裁が青葉死刑囚による控訴取り下げを「気の迷い」として受け入れず、弁護人の申し立てどおり控訴審を行うかどうかが注目されます
もし控訴取り下げが認められないならば、青葉死刑囚は弁護人を解任し、新たな弁護人を選任して控訴審に臨むしかないないでしょう
(注:青葉被告は精神鑑定の結果、妄想性パーソナリティ障害とされており、繰り返し書いているように精神障害ではなく人格障害の扱いになります。ゆえに、刑事裁判で心神喪失が認められ無罪判決を受ける可能性はありません)
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