相模原両親殺害 保護処分相当として家裁に移送決定
両親を殺害したとして逮捕、起訴されていた少年は横浜家庭裁判所で検察官送致となり、横浜地裁で刑事裁判となりました。検察は懲役10年以上15年以下の不定期刑を求刑していましたが、本日の横浜地裁の判決公判で「保護処分が相当」とし、横浜家庭裁判所へ事件を戻す決定がありました
父親から精神的虐待を受けた少年を「被害者でもある」と認め、懲役刑ではなく少年院での矯正教育が妥当だとする判断です
この決定に横浜地検はさぞ苦り切っているのでしょう
相模原市南区のマンションで昨年2月、両親を殺害したなどとして殺人などの罪に問われた長男(16)の裁判員裁判の判決が20日、横浜地裁であり、吉井隆平裁判長は「保護処分が相当」と判断、審理を横浜家裁に移送する決定をした。
検察側は懲役10~15年を求刑していた。
吉井裁判長は「両親による長年の不適切な養育環境がなければ、事件は起こらなかった」と指摘。「(長男は)事件を反省しており、専門的に個別の教育が必要と考えられる」と述べた。
長男側は父親殺害を認める一方、母親殺害については「『殺してくれ』と依頼された」などと主張。嘱託殺人罪に該当すると訴えたが、吉井裁判長は、母親がベランダに出て助けを求めようとしていたことを挙げ、嘱託はなかったと判断した。
最後に吉井裁判長は長男に「あなたの一生を懸けて、責任と向き合い続けてほしい」と語り掛けた。
決定によると、長男は高校1年だった昨年2月10日、相模原市の自宅マンションで、父親=当時(52)=と母親=同(50)=の首を刃物で複数回突き刺して殺害した。
長男側は長年両親からの身体的、精神的虐待で自暴自棄になっていたとし、「大変な虐待を受けた被害者でもある」などと強調。検察側は、長男は父親殺害後、母親の帰宅を待ち構え、「強固な殺意」に基づいて母親を突き刺したなどと訴えていた。
横浜地検の塩沢健一次席検事は「本件については回答しない」とした。
(時事通信の記事から引用)
家庭裁判所から検察官送致となり起訴された事件が、地方裁判所から家庭裁判所へと戻されるというのは稀有な例です。法制度上は確かにあり得る判断なのですが、実例は滅多にないはずです
前回、この事件で検察側の求刑に言及した際、検察は殺害された少年の父親がどれだけ異常な人物であったか考慮していない、と指摘しました
メディアも父親の異常行動にはほとんど触れることなく、「16歳の少年が両親を殺害した」という部分だけを取り上げてきました
しかし、今回の横浜地裁の決定は父親による精神的虐待をきちんと認め、その虐待によって少年が歪められたと判断していますので、まずは裁判官の見識に敬意を表します。事件の意味をまっすぐ受け止めた決定に、被告少年も多少は救われた気になったのでは?
もちろん親を殺した責任というものが被告少年には重くのしかかるのでしょうが、それはどこかの検事が声高に批判し非難すべきものではなく、被告少年の中で問い返し、考え、自覚すべきものです
世の中には「16歳で両親を殺すという殺人鬼。第2の酒鬼薔薇聖斗だ。懲役刑でなく死刑にすべき」といった過激な意見があるのも承知してはいますが、それでも刑事罰だけがすべてではないと書いておきます。判決の報道に接し、自分もちょっと気が晴れたように感じました
(関連記事)
相模原両親殺害 17歳を少年院送致決定
相模原両親殺害 懲役10年以上15年以下の不定期刑求刑
相模原両親殺害 虐待やネグレクトの結果か?
相模原両親殺害 16歳長男を起訴
実母殺害遺棄 過剰な干渉に追い詰められ犯行
平塚両親殺害 嘉朗容疑者のSNSは嘘だらけ
平塚両親殺害 ナルシストの息子を逮捕
大津タワーマンション殺傷 高齢夫婦被害
両親殺害の60男に懲役30年判決 福岡
ひきこもり殺人 親子の修羅場
千葉流山母姉殺人 息子に懲役30年判決
山形の両親殺害柴田被告 懲役29年不服で上告
鳥栖市両親殺害 懲役24年判決
鳥栖市両親殺害 初公判で母への殺意否認
鳥栖市両親殺害 19歳長男を逮捕