中国メディア 日本の劇場版アニメを称賛も中身は?

これまでにも中国メディアによる日本のアニメーション作品の賛美や批判など、当ブログでは数多く取り上げてきました
毎度、同じことをコメントしているのですが、中国メディアによる論評というのはどれも底が浅く、表面だけ見て判ったフリをして書いているものが多いと感じます。優れたアニメーション作品を生み出すためには、優れた論評が不可欠です。中国のアニメーション作品から面白いものが生まれないのも、優れた論評というものがなく、方向性が定まらないためでしょう
レコードチャイナ掲載の記事では、日本の劇場版アニメーションを称賛する内容なのですが、これもまた表面しか見ていない論評です


2025年1月26日、中国メディアの好狗導航は、日本のアニメ映画の魅力とその影響について分析した記事を掲載した。
記事はまず、「日本のアニメは、独自の芸術表現として、世界中の重要なポップカルチャーの一部となっている。アニメ産業が発展を続ける中で、アニメの映画化は次第にトレンドとなり、アニメファンや映画ファンに新しい観賞体験を提供してきた。本記事では、日本のアニメ映画の魅力を探り、そのアニメ産業、映画市場、観客層への深い影響について分析する」とした。
その上で、「アニメ映画の最大の魅力は、原作アニメを忠実に再現することで、観客が映画館の大スクリーンで子どもの頃の思い出を再体験できる点にある。アニメファンにとって、これは貴重で特別な体験である。また、アニメ映画は制作にかける予算や技術がより充実しているため、先進的な特殊効果や音響効果を多用し、観客に新しい視覚的、聴覚的な刺激を提供することもできる」と述べた。
続いて、「アニメ映画は大幅な尺や容量を確保できるため、原作の物語を拡張したり、追加したりすることができる。これにより、アニメの世界観やキャラクター同士の関係性をより詳しく描き、観客の原作への期待に応えることが可能だ。さらにアニメ映画は、元々アニメに親しみのない観客を引きつけることができる。これらの観客は映画を通じてアニメの魅力に触れ、文化的な視野を広げることができる」と論じた。
また、「アニメ映画の成功は、原作アニメの売り上げや人気を上昇させ、相乗効果によって良い循環を生み出す。アニメ業界にとって、映画化が新たな収益源となっている。さらに、アニメ映画は多くのファン層を持つため、大勢の観客を映画館に足を運ばせ、映画市場に活力をもたらすこともできる」と説明した。
記事は、「アニメの価値観や思想を通じて、観客の考え方や社会的な認識に影響を与えることができるアニメ映画は、すでに日本文化を海外への発信するための重要な手段となっており、これらの映画を通じて、世界中の観客が日本のアニメの芸術的魅力や、日本文化の独自性を楽しむことができている」と言及した。
その上で、「近年、数多くの優れたアニメ映画が登場しており、その中には興行収入と観客から評価の両方で成功を収めた作品も多く見られる。例えば、『君の名は。』(16年)は、その美しい映像と感動的なストーリーで、世界中の観客の心をつかんだ。『天気の子』(19年)は、前作の興行的な成功を引き継ぎ、日本のアニメ映画作品が持つ大きな可能性を再び証明した。また、劇場版『鬼滅の刃』無限列車編(20年)は、日本映画史上の記録を打ち立てるという奇跡を起こした」と紹介した。
そして、「日本のアニメ映画は、もはや無視できない文化現象となり、アニメファンに新たな観賞体験を提供するだけでなく、アニメ産業や映画市場、そして観客層にポジティブな影響を与えている。アニメ産業の成長が続く中で、今後ますます多くの素晴らしいアニメ映画が登場し、視覚と聴覚の饗宴や文化的な楽しみを提供し続けるだろう」と結んだ。
(レコードチャイナの記事から引用)


なぜこのようなつまらない論評を堂々と記事にできるのか、自分にはさっぱり理解できません。誰もが知っていること、判っていることをただ並べただけの凡庸な内容です
以下、思うところを書きます
「アニメ映画は大幅な尺や容量を確保できるため、原作の物語を拡張したり、追加したりできる」
基本、テレビ放送向けアニメの尺の数倍もある劇場版アニメを制作するには、視聴者を引き付けるような大事件(地球滅亡の危機とか)などを前提に、登場人物たちがあれこれ活躍するストーリーが構成されます。しかし、これについては原作の改変だ、との批判が寄せられる場合もあります。視聴者は何より原作(マンガであれ、テレビ版アニメであれ)の世界観を大切にしますので、これを改変すると作品離れが起こります
尺が長いからあれもこれも、と盛り込むのはかえって危険です
当ブログで度々言及してきた藤本タツキ原作のマンガを劇場版アニメーションにした「ルックバック」は、1時間に満たない尺の中で、2人の少女のマンガにかける情熱を描きました。地球の危機を救うストーリでもなく、海賊王を目指すストーリーでもありません
極めてシンプルに原作マンガの線を活かし、その作品世界を動画で表現するという実に基本的な作風です。凝ったCGもなく、戦闘シーンもなく、マンガに取り組む少女の背中をひたすら描いて見せたのです。こうした奇をてらわない作品で多くの視聴者を納得させる技こそが、日本アニメーションの真骨頂だと思います
テレビ放送向けでヒットしたアニメーション作品の「NARUTO」や「ONE PIECE」、「SLAM DUNK」ではいくつも劇場版アニメーションが作られたものの、ヒットした作品は極めてわずかです。テレビ放送のストーリー展開から外れた劇場版ならではオリジナルストーリーがまったくウケなかったためです。ちなみに原作マンガの作者自ら、これらのオリジナルストーリーを担当していたりもするのですが、ファンから見向きもされなかったというのが実際です
ですからすべての劇場版アニメーション作品が成功しているわけでもなく、日本でも毎年多くの劇場版作品が作られる中で、ヒットするのは数本しかないのが現実であり、視聴者の目はそれだけ厳しいと理解する必要があります。世界で一番アニメーションにうるさい視聴者、日本のアニメファンがいてこそ、名作も生まれるのだ、と

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