劇場版アニメ「ルックバック」を語る押山監督の熱量

藤本タツキ原作のマンガ「ルックバック」が劇場版アニメーションとして公開され、日本国内での興行収入が20億円を超えています
アニメーションで監督を務めた押山清高が作品についての熱い思い入れと、彼自身が週に1000枚もの原画を描いたとのエピソードを披露しています
まるで「ルックバック」に登場する2人の少女の、マンガ家を目指そうというひたむきな意志が乗り移ったかのように、アニメーション制作に没頭した姿が彷彿とされます


押山監督は同日に実施された「Pen CREATOR AWARDS 2024」の授賞式にも登壇。「絵をひたすら書き続けることは20年前から変わっていないですが、『Pen CREATOR AWARDS』のような賞を受賞することで、映像を作るクリエイターに対して理解が深まっていることが非常にありがたく思っています」と感謝を述べた。
トークセッションでは上映後の反響について、押山監督が「運がよかったと感じています。これまでもアニメーターとして映画やテレビシリーズに関わってきましたが、作品の出来だけではなく、タイミングや運も大切だと感じています」と振り返る。担当編集の林氏は「劇場版として上映時間が1時間を切る58分のフィルムというのはあまり前例がない中でしたが、内容のクオリティが非常に高ければ、十分に劇場での体験を楽しんでいただけることを実感できた作品でした」と感想を語った。
1作品あたり20~30人のアニメーターが参加するのが一般的なところ、わずか8人のアニメーターで制作が行われた「ルックバック」。押山監督は「僕自身、監督を務めながらアニメーターとしても多くの部分を担当していたため、仕事が溜まりがちでした」と思い返しながらも「短い映画であってもお客さんの満足度を高めたいという思いで、絵を濃密に仕上げ、原作を再現するために普段以上に時間をかけて描き上げました」と明かした。
また今後の目標について、押山監督は「『ルックバック』が素晴らしい作品だったからか、最近は自分でもマンガを描きたいと思うようになりました」と新たな挑戦への意欲を見せる。最後にアニメーターの魅力について聞かれると「モノを作るプロセス自体がすごく大事だと思っていて、作品は人を幸福にするものだと思っています。たとえヒットしなくても、作品を作っている時間そのものが幸せで、完成すればさらに幸せを感じられます。そのうえアニメーターは、目の前のアニメーションの作業に没頭し続けられる、特別な仕事だと思います」と答えた。
イベント後の囲み取材では、蓮見が映画「ルックバック」の魅力について問われ、「マンガ家という作り手に関する話が描かれている中で、僕を含めたモノづくりをしている人からみても、1つも嘘がないことですかね。嘘がないからこそ、華やかさと地味な部分が中立に描かれながら物語が進んでいくところが僕はすごいなと思っています」とコメント。また映画の尺が58分という短さだったことについて「本当に熱量を持ったクオリティの高い作品であれば、短くても観る人を満足させることはできるだろうなと感じました。でも、やっぱりどこか怖いじゃないですか。『短いからこそ面白くなきゃいけない』って、どこかでみんな感じている思っています。そういう意味でもすごい作品だと改めて感じました」と述べた。
(コミックナタリーの記事から引用)


低予算アニメの宿命なのか、たった8人のアニメーターで「ルックバック」が作られたという事実に驚かされます。スタオジブリなら30人から40人のアニメーターを投入するでしょう
「日本のアニメーション制作は現場の長時間、低賃金労働によって成立している」との批判はあるものの、こうしたクリエイターの情熱が原動力だと改めて認識させられます
今回は「ルックバック」が興行収入20億円を超えたので、作り手には相応の報酬が支払われたのではないか、と思いますしそうあってほしいものです
さて、当ブログではたびたびアニメーションに関して中国や韓国の記事を取り上げています。そこでは、「日本アニメの成功を分析し、その成功のノウハウを真似すればよい」といった中国や韓国のアニメーション関係者の発言が登場します
しかし、成功のノウハウを学べばよいと言いつつ、10年たっても20年たっても日本のアニメーション作品と肩を並べる作品を生み出せないままです
魅力的なキャラクター作り、よく練られたシナリオに、努力し成長する主人公で視聴者の共感を獲得し…とノウハウは文章化できます。しかし、中国や韓国のアニメーターに決定的に欠けているのは、押山監督のような情熱でしょう
作品のクオリティを上げるため、監督自ら週に1000枚もの原画を描くとか、宮崎駿や押山監督のように狂気すら感じさせるクリエイターの情熱があって、日本のアニメーションが成立しているのだな、とつくづく感じます
椅子にふんぞり返って「ああしろ」とか「こうしろ」とか指示を下すだけでは良い作品は生まれないのであり、監督自ら率先して作画に打ち込む姿勢があってこそ、スタッフ一同が熱量を持って仕事に取り組めると考えます
もちろんそこには、押山監督のクリエイター魂に火をつけた、藤本タツキの原作マンガ「ルックバック」という優れた作品が存在したからであり、こうしたクリエイター魂の共振といった現象が日本のアニメーションの強味なのでしょう

「ルックバック」について又吉直樹が語る動画

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