飯能市一家殺害 斎藤被告に再度の精神鑑定実施

2022年12月、埼玉県飯能市に住むビショップ・ウィリアム夫妻とその長女の3人を殺害した容疑で逮捕、起訴された斎藤淳被告は10カ月にも及ぶ精神鑑定の結果、刑事責任能力を問えるとして起訴されました(刑事責任能力の有無はあくまで検察官が判断するもので、鑑定医は社会生活に適応できていたか、法律や公衆道徳、一般的な社会規範を理解できていたかを判断します)
しかし、弁護人はこの起訴前の鑑定結果に同意せず、新たな精神鑑定を求め、裁判所がこれを認めたため2度目の精神鑑定が実施されています
事件から2年以上経過して、まだ公判の目処が立たない状態です


飯能市の住宅街で親子3人が殺害された事件は、25日で発生から2年となる。さいたま地検は昨年12月、無職斎藤淳被告(42)を殺人罪などでさいたま地裁に起訴したが、精神鑑定などが続き、公判は始まっていない。なぜ3人の尊い命が奪われたのか。現場近くの住民らは事件の全容解明を待ち望んでいる。
起訴状などでは、斎藤被告は2022年12月25日朝、同市美杉台の住宅の敷地で、米国籍の住人ビショップ・ウィリアム・ロス・ジュニアさん(当時69歳)と妻の森田泉さん(同68歳)、帰省していた長女の森田・ソフィアナ・恵さん(同32歳)の頭や首をおので複数回切りつけて殺害したうえ、住宅に灯油をまいて放火したなどとしている。
現場近くに住んでいた斎藤被告は、夫婦宅の車を複数回傷つけたとして、事件前の22年1~2月にも器物損壊容疑で3回逮捕されていた。
同年12月25日の逮捕後から、斎藤被告は調べに全ての容疑を「知らない」「自分じゃない」と否認したり、供述を拒否したりしている。地検は刑事責任能力の有無を調べるため、昨年2月以降、鑑定留置を2度実施。計10か月にわたる精神鑑定の結果、刑事責任を問えると判断し、起訴した。
弁護側は公判で、責任能力の有無や程度を争う公算が大きい。関係者によると、弁護側は「検察側の鑑定が信用できない」として、今年初めに改めて精神鑑定を請求。今も弁護側の推薦した専門家による鑑定が続いている。斎藤被告が事件前からつづっていたとみられるノートなども提出されたという。
証拠の整理にも時間がかかっている。事件当時の様子が映っている現場周辺の防犯カメラ記録や、血痕が付いた衣類、凶器などが有力な証拠だ。斎藤被告とみられる人物が夫婦宅の車を傷つけている様子を捉えた映像もある。
事件の公判は裁判員裁判となる。複数の証拠が、裁判員に強い精神的負担をかける「刺激証拠」とみられ、閲覧を必要最小限にとどめるなどの案が検討されているという。
(読売新聞の記事から引用)


精神鑑定をやり直しているのですが、前回10カ月のかかったのは斎藤被告が医師の問診にも応じず、鑑定に非協力的だったためと推測されます。なので、今回の精神鑑定もすんなり進むのかは疑問です
本人が精神鑑定を拒絶し、あらゆる問診にも反応せず、心理テストも拒んでしまったなら精密な鑑定など不可能です。せいぜい、看護師やその他の人との接触、会話などから心情を推測するにとどまります
前回も書いたように、斎藤被告は自宅に固定電話もなく、スマートフォンも所持しておらず、パソコンもない生活をしていました。ただし、今回の記事では、斎藤被告自身が綴ったノートがあったと明かされていますので、これを解読し、事件前の精神状態を推し量ることになるのでしょう
ただ、斎藤被告は一人暮らしをし、食事も摂り、生活そのものができていたのですから、精神的に荒廃した状態にあったとは考えられません。つまりは完全な心神喪失状態にはなかったと見なされます
何らかの被害妄想を抱き、ビショップ・ウィリアムさん夫婦を敵視し、攻撃(斎藤被告の中では自衛行為という想定か?)したものと考えられるため、その被害妄想がどのようなものかを突き止める必要があります。斎藤被告のノートにその被害妄想の一端が記されていれば、手がかりになるのでしょう。過去に斎藤被告はビショップさんの車を傷つける器物損壊を数回、繰り返しています。これも自分を監視している(と、斎藤被告が勝手に思い込んでいた)ビショップさんがどのような反応を示すか、様子を探るためにやっていたのかもしれません
前回、当ブログでは斎藤被告の中で、ビショップさんは自分を監視するためCIAから派遣されたエージェントであり、アメリカ政府があれやこれやと自分の人生を邪魔している…といった類の妄想を抱いていたのではないか、との仮説を書きました。陰謀論とか被害妄想のように、「誰かのせい」にするのは簡単であり、明瞭です。斎藤被告の中にもそのようなストーリーができあがっていた可能性があるのでは?

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