浜松一家殺害事件 有罪判決の中身は

2022年3月、静岡県浜松市の店舗建住宅で実兄ち祖父母の3人を殺害し起訴されていた山田悠太郎被告に、昨日懲役30年とする有罪判決が言い渡されています
当ブログで昨日取り上げた時点では、判決内容に関する詳細な報道がありませんでしたので結果のみ、伝える形でした
本日になっていくつかのメディアがより詳しい報道をしていますので、取り上げます


<浜松総局 野田栞里記者>
裁判中の男は紙とペンでしきりに何か書いていたり、何度も座り直したりと落ち着かない様子で、2時間半の判決の言い渡しが終了しました。
この裁判は、かつて「多重人格」とも言われた「解離性同一性症」と診断され、「別人格」の存在が認められた被告にどこまで責任を問えるのかに注目が集まっていました。
男は一貫して否認し続け、子どもの頃、父や兄から受けた虐待のフラッシュバックから生まれた別人格「ボウイ」が3人を殺害したと「ボウイ」から聞いたと話してきました。
<水野キャスター>
そのうえで検察側と弁護側はこれまでどんな主張をしていたのでしょうか。
<野田記者>
検察は、別人格がいたとしても被告であることに違いはないと無期懲役を求刑。一方、弁護側は主人格と別人格を区別。犯行は『被告』でなくコントロールの効かない『別人格』によるものだとして、無罪を主張しました。
<水野キャスター>
判決は懲役30年となりました。裁判所はどういう判断をしたのでしょうか。
<野田記者>
判決文を読み解いてみると、裁判所は、男の責任能力の有無を判断するにあたり「症状としての各パーソナリティ状態を抱合する一個人」としました。つまり、司法は「別人格」の捉え方については検察側を採用したかっこうです。裁判所は、3人を殺害したのは『ボウイに解離した状態の被告自身』と判断しました。
担当した裁判員は報道陣に対し「多重人格というのが映画や小説の話だと思っていた」と、その判断の難しさを話していました。
(静岡放送の記事から引用)


他のメディアの報道では、「犯行は山田被告によるものと判断した上で、当時は『ボウイ』の状態だったと認めた。だが、凶器を事前に準備する計画性や犯行後に着衣を洗うなどの証拠隠滅から『行動は連続性が保たれていて合理的だった』と指摘。解離性同一性症の解離による行動への影響は限定的で、完全責任能力はあるとした。動機は、祖父母と兄から受けた虐待への怒りや恨みと説明。虐待の影響で解離性同一性症を発症したとして『責任非難の程度は軽減される』とした」と書かれています
まず、判決では弁護側の主張する「被告以外の第三者による犯行の可能性」を否定しています
さらに、完全に別人格による犯行ならば、凶器の準備や計画、犯行後に血の付着した衣類を洗うなどの行動はそれぞれの別人格の意識化で行われるはずでバラバラなものになるはずです。しかし、山田被告の行動は一貫したもので連続性・整合性が保たれており、人格の入れ替わりによる非連続性がうかがえないと指摘したのでしょう。その上で、『ボウイ』に解離した山田被告自身の人格による犯行だとの解釈を示し、完全責任能力があると認めた内容…と考えられます
また、山田被告が解離性同一性障害である点を踏まえて、自らの行動を制御するのが困難だったとことも認め、無期懲役の求刑に対し懲役30年とする量刑判断を示しています
まずもって、これまでの判例に沿った判断であり、妥当なところと受け止めます

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