埼玉栄高校 無免許運転事故はどうなったか

本年も今日が最後となりました。拙いブログにお立ち寄りいただきありがとうございます
今年の事件の振り返りをしていて、その顛末がいまだ不明のままになっている事件の1つが、11月16日の夜に起きた埼玉栄高校の生徒による無免許運転での死亡事故です
無免許運転をしていたのが高校生という事情もあり、亡くなった被害者の名前も運転していた生徒の名前も伏せられています。警察による捜査がどこまで進んだのかも報道されていません
なので、一般論として事件処理の流れを書いたおきます

警察による事情聴取・逮捕
事件の直後はいくつもの報道がありましたが、その後は目立った報道もないままです
事故後、運転していた生徒は憔悴し話ができない状態と伝える記事があったところから、事故後は寮を出て一端、自宅に戻ったのかなとも推測されます
ただ、警察は事情聴取のため出頭を求めます。これは任意での事情聴取であり、直ちに逮捕には踏み切らないでしょう。交通事故の場合、身柄を取る(逮捕し勾留する)かどうかは微妙なところです。ひき逃げ事故の場合、現場から逃げているのですから「逃亡のおそれがある」と判断し、逮捕するのが一般的な対応です。本件は無免許運転による死亡事故なので、警察は身柄を取りたいと判断し検察庁の判断を求めるのでは
出頭の要請に本人が応じれば、警察署で事情聴取をします。容疑が固まれば逮捕状を請求して逮捕に至ります
ここで警察が身柄の確保にこだわるのは、被疑者が自殺するのを懸念しているからです。自責の念に駆られて自殺してしまうと、「警察は何をやっているんだ」と批判を浴びてしまいます
送検から家庭裁判所送致
警察は捜査資料とともに容疑者の身柄を検察庁に送検します。運転していた高校生だけでなく、車に同乗していた2人の生徒についても無免許運転幇助の容疑で立件するはずです
さて、警察の捜査段階で逮捕し身柄を拘束した場合、通常は警察の留置場に勾留するのですが、諸般の事情を考慮し留置場ではなく少年鑑別所や拘置所を勾留場所として指定する場合があります。裁判所の出す勾留状が執行の根拠となります(日本の刑事司法手続きが令状主義と言われる所以です)
また、警察の捜査段階で逮捕せず任意の事情聴取であっても、送検を受けた検事の判断で稀に身柄を取る場合があり、これも勾留状によって執行され指定された勾留場所(少年鑑別所か拘置所)に身柄を置きます
検事が送検を受けた少年事件は原則として全件、家庭裁判所に送致されます。ここでも、身柄を取る必要があると判断すれば家庭裁判所による観護措置決定で、少年鑑別所に収容されます。在宅処分で事件処理すると家裁判事が決定すれば、家に帰され、後日少年審判を受けることになります
少年審判
少年審判制度の特徴の1つが、家庭裁判所調査官の存在です。判事の指示によって調査官が少年の家庭状況を調べ、保護者を呼び出して聞き取りをします。学校に照会をかけたり、有職少年の場合は職場にも照会をかけます
少年鑑別所は一般の方にとって拘禁施設とのイメージが強いわけですが、その主たる業務は少年の資質鑑別です。性格検査や知能検査、その他の心理検査を実施し、事件に関する聞き取り、鑑別結果通知書を作成して家庭裁判所に送付します
家庭裁判所調査官の意見書と少年鑑別所の鑑別結果通知書を許に少年審判が行われ、最終的な処分が決まります
本件の場合は無免許運転に加えて死亡事故となっていますので、おそらくは少年院送致になるのでしょう。同乗していた他の2人は今のところ無免許運転の幇助ですが、それぞれが過去に無免許運転を繰り返していたと判明すれば、少年院送致もあり得ると予想します

刑事事件としては以上のような流れになるわけですが、問題は民事での損害賠償問題です。誰がどれだけの賠償を負担するのか、紛糾しそうです。学校側がずさんな自動車の管理をしていたのは明らかですが、夜中に生徒が寮を抜け出して車を運転する事態は想定外であり、無免許運転を繰り返していた生徒の責任は大きいはずです。また、死亡した生徒も車の窓から身を乗り出す危険行為をしていたのですから、この生徒自身の過失も小さくはありません。過失を相殺すると、死亡した生徒への賠償額は随分と少額になると思われます。が、それで保護者が納得するとは限りません
自分の息子が寮を抜け出し、遊び呆けていたのも学校側の指導不足だとゴネて、裁判で争う展開になる場合もあるでしょう

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