浜松一家殺害事件 異常な家庭環境・暴力

2022年3月、浜松市の美容室兼住宅で経営者の老夫婦と孫(被告の実兄)の3人を殺害したとして起訴されたのが山田悠太郎被告です。裁判員裁判は結審し、来年に判決が言い渡される予定です
家庭内で虐待を受けた過去がある、と報じられてはいましたが、その実態がどのようなものか詳しく取り上げた報道が見つからず、当ブログでも言及できないままでした
公判では検察側が読み上げた起訴状や、あるいは弁護人の弁論の中に山田被告が過去に受けた虐待について取り上げているはずです。しかし、報道はもっぱら山田被告の解離性同一性障害の方に目が行き、責任能力を問えるのかどうか…との論調ばかりでした
ようやく山田被告の生い立ち、虐待に触れた報道を見つけましたので言及します


明らかになった凄惨の生い立ち
被告人質問では、被告の凄惨な生い立ちが明らかにされた。
まず、長兄からは中学生の頃まで腹を殴られたり、太ももを膝で蹴られたりしたほか、時には廊下に立たされ長兄が投げた野球ボールを体で受け止めさせられることもあり、常に怯えていたという。
加えて、同時期には長兄と被告、それに被告と双子の次兄の3人で風呂に入り、1日の“反省会”が開かれていたそうだ。ここでは長兄から合格をもらえないと尿をかけられたり、飲まされたりすることもあり、夜には被告だけが長兄の部屋に呼ばれ性暴力も受けていた。
さらに父には小学1年生の時から中学を卒業する頃まで暴力を振るわれていただけでなく、目の前で母に暴行を加える姿を何度も見せられ、心を蝕まれた。
一方、小遣いをくれたり、博物館に連れて行ってくれたりと幼少期の被告をかわいがってくれたのが祖父母だ。
しかし、祖父母は金銭トラブルなどが原因で両親と折り合いが悪く、祖母からは「『金を渡す代わりに母親に暴力を振るってほしい』と長兄に頼んでいる」と聞かされていたと振り返った。
このように被告は異常ともいえる家庭環境の中で育ったが、外では明るく元気に振る舞うことで周囲から虐待を疑われないように努め、高校まで進学。
そして、卒業後は静岡県警に警察官として採用された。
PTS激しいDと解離性同一性症
被告がPTSDや解離性同一性症に悩まされるようになったのは警察学校に入校してからのこと。
授業で虐待に関する犯罪が取り上げられると、幼少期に受けた虐待の記憶がよみがえり頭痛が続いた。
頭痛や吐き気、不眠といった症状は下田警察署に配属されて以降も解消されることはなく、上司からは「ボーっとしている」「結構怒るね」などと言われたが、いずれの記憶もない。
体調が上向くことはなく、このため配属から1年が経つ前の2019年6月に警察官を辞めた。
その後、実家に戻るとさらに激しいフラッシュバックに襲われるようになり、この時から“亮くん”と”ボウイ”という自身に潜む2つの別の人格を認識。
“亮くん”は次兄が小学生だった頃の姿をしていて、被告が幼少期に虐待を受けた時の記憶を肩代わりしてくれた。
(以下、略。テレビ静岡の記事から引用)


家庭内で受けた暴力や性的虐待については、学校など外では知られないよう振る舞っていたというのは判りました
ただ、山田被告が解離性同一性障害の症状を自覚し始めたのが高校を卒業し、警察学校に入ってからというのは、ちょっと不思議な気がします
解離性同一性障害と疑われるケースでは、虐待を受けている中で別人格を作り出し、自分という意識から切り離した別人格が虐待を受けていると思い込むことでやり過ごそうとする…という心的力動が報告されています
山田被告の場合、小学生や中学生時に人格の解離を経験していてもおかしくないのに、なぜ高校卒業後だったのでしょうか?
家族と離れ、警察学校や配属された下田署での勤務の中で解離状態が頻繁に経験されるようになったとするなら、何が特別なトリガーが作用したのかな、と思ってしまいます
ともあれ、山田被告が長兄から虐待を受けていたり、祖父母と両親との歪な関係に苛まれていたのは事実で、それを原因とする解離性同一性障害を発症していたのは間違いないのでしょう
裁判官は精神科医や心理学者など複数の専門家に見解を求め、過去の判例も踏まえて判決の方向性を探っているのでしょう
結果の重大さを考えれば、検察の求刑通り無期懲役の判決になると予想します。が、裁判員は山田被告の被虐体験を理由に、有期刑への減刑を求めるのかもしれません

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