袴田事件 警察・検察の検証結果は弁解と反論

日本の刑事裁判ではおよそ9割が有罪判決になる、とされます。つまり刑事裁判で無罪になる被告は1割であり、弁護人がほぼ裁判で負けるわけです。単に勝ち負けの問題ではなく、負けが決まっている裁判の弁護を引き受けるのはばかばかしい、と考える弁護士が増える懸念があります
「刑事事件を引き受けずとも、民事で稼げるからいいや」となれば、将来、刑事事件を担当する弁護士の数が減少し、刑事事件で十分な弁護を受けられないケースが生じるのかもしれません
余談はここまでにして、再審で無罪が確定した袴田事件について取り上げます
静岡県警と最高検察庁がそれぞれ、袴田事件の捜査や起訴、再審についての対応について検証した結果を発表しています
しかし、静岡県警は当時の捜査関係者の中で誰が証拠の捏造を行ったのか特定できず、自白を強要した点については反省を表明するにとどめています。最高検察庁も証拠保全の不適切さを認めるものの、再審手続きの長期化については適正に対処したと主張し、むしろ再審で無罪判決を言い渡した裁判所の判断に疑問を呈する内容になっています


最高検と静岡県警が26日、再審無罪が確定した袴田巌さん(88)の捜査や公判対応の検証結果を公表した。最高検は初動捜査や証拠保全について問題を認める一方、再審手続きの長期化に関しては大半の検察側の対応を「問題はない」と主張。判決が認定した証拠捏造(ねつぞう)も事実上否定するなど、検証の名の下に裁判所への不満を強くにじませた。
反論のオンパレード
「無罪の結論を否定するものではない」
最高検の報告書は冒頭にそう記したが、その後の主張は、捜査機関の証拠捏造を認定して無罪を言い渡した9月の静岡地裁判決への反論のオンパレードだった。
再審判決は発生から1年以上後に現場近くのみそタンクから見つかり、確定判決で犯行着衣とされた衣類を捏造と認定。根拠の1つとして、発見から次回公判まで約3カ月あったのに、発見後2週間足らずで検察側が証拠請求したのは「不自然」とした。
最高検は、実際は3カ月後ではなく、3週間後に次の公判が迫っており、「明らかな事実誤認がある」と指摘した。
さらに、判決で捏造が実行されたとした時期には県警が別のパジャマを犯行着衣とする前提で取り調べしていたことから、「明らかに矛盾している」と主張した。
捏造を明確に示す証拠も、捏造を明確に否定する証拠もなかったとした県警の報告書に比べ、判決への批判が際立った。
被害者への謝罪なし
再審手続きの長期化についても検察側の責任を繰り返し否定している。
最高裁で結論が出るまでに約27年がかかった第1次請求審では、審理の頻度が少なく、「積極的に審理を促進する方策が十分でなかった」と指摘。一義的な責任が裁判所にあったとの認識を示唆した。
一方で、警察側の初動捜査や証拠保全については一部で問題を認めた。
犯行着衣とされた衣類について、初動捜査の時点で「みその中も捜索すべきだった」と認定。捜索が遅かったことで、混乱を招いたとした。
事件では未成年2人を含む4人が殺害され、警察・検察の捜査は真犯人を明らかにできていない。報告書に被害者への謝罪はなかった。
(産経新聞の記事から引用)


これだけ問題視されているにも関わらず、再審の進め方について明確が規定を設けようとしないのは、裁判所にとっても検察にとっても再審は余計な仕事との受け止め方がされているからでしょう
自分たちの先輩、上司のやった裁判の結果をひっくり返すことに躊躇いを感じ、消極的になっているからです
また、静岡県警の検証でも証拠捏造について踏み込んではおらず、誰が証拠を捏造を指示し、誰が実行したのか特定しないままです(当時の捜査員の多くは高齢であるか、すでに亡くなっており、事情を聞き取ることもできません)
捜査に関わった警察官が誰と誰であるかは判っていても、証拠の捏造をした人物と名指しするのを躊躇った結果でしょう
また、警察OBの中には、いまでも袴田元死刑囚が犯人だ、と信じている者が少なくないと想像します
結局、捜査して立件し、起訴となれば9割は有罪判決が出るのが当たり前になってしまい、冤罪の可能性について警察も検察もまったく考えなくなってしまった結果、なのかもしれません。つまり再審・無罪という事態を警察も検察も受け入れられないでいるように映ります
ただ、このまま再審の規定を整備しないまま放置するのは、明らかに職務怠慢です。できるだけ速やかに再審の基準を見直し、手続きを整備すべきでしょう

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