「紀州のドン・ファン」 判決に関する小ネタ
「紀州のドン・ファン」と呼ばれた野崎幸助さん殺害事件で、1審の和歌山地裁は須藤早貴被告に無罪判決を言い渡しました
判決内容については前回書きましたので、それ以外の言わば小ネタに属する事柄について書きます
「須藤被告に売ったのは覚醒剤ではなく氷砂糖」
公判に証人として出廷した1人の密売人は須藤被告に覚醒剤を売ったと証言しましたが、もう1人は「売ったのは覚醒剤ではなく氷砂糖だった」と証言しました
唐突に氷砂糖が出てきて不審に思われた人もいると思います
覚醒剤(メタフェタミン)は無色透明の結晶として取引されるのが一般的です。製造元から出荷される段階で無色透明な結晶(グラニュー糖だったり、塩だったり、味の素など)を混ぜ、かさ増しをしているとされます。つまり覚醒剤1キロのうち、純粋にメタフェタミンとされる成分は半分くらいしかないケースもあり得るわけです
昔の映画で、覚醒剤取引の場面では袋の中の結晶を小指につけてペロリと舐め、「なんだこりゃ。混ぜものだらけじゃねーか」と叫んだヤクザが撃ち殺される…というのがお約束になっていました。つまり少量をなめて、砂糖の味や塩の味がすれば混ぜものがあると判るわけです
本件の覚醒剤取引では、須藤被告は密売人にとって馴染みのない客で、覚醒剤については素人だと判ったはずです。なので、氷砂糖を砕いた結晶を混ぜた覚醒剤を売りつけたか、最初からメタフェタミン抜きの氷砂糖を売りつけた可能性が考えられます
「覚醒剤の致死量」
覚醒剤が出荷段階で混ぜものが加えられ、かさ増しされて取引されるように、密売人もさらに混ぜものを加えかさ増しして販売します。つまり、末端の密売人から1グラムの覚醒剤を買ったとしても、そのうちメタフェタミンの成分は10分の1程度だったりします
薬物の売買に信用などというものはなく、「騙される奴が悪い」という商売ですから、相手が素人で覚醒剤の味も判らないならかさ増しした粗悪品を平気で売りつけます
なので、覚醒剤の致死量というのはかなり曖昧さが伴います。血液中のメタフェタミン濃度と死亡した者の体重から計算し、何グラムのメタフェタミンを摂取したのか算出する計算式があるのでしょう。が、あくまでも推定値です。混ぜものだらけの粗悪品なら、相当量を飲まないと死亡しません
さらに高齢者だとか持病のある者など、個人の健康状態にも左右されるため、一律に何グラム摂取したら死亡する、と簡単には決めつけられないのです
ちなみに須藤被告の公判で弁護人は、「(致死量とされるだけの分量を摂取させるには)カプセル30個分の覚醒剤を野崎氏に飲ませる必要があり、非現実的だ」との趣旨の弁論をしています
ただし、これは覚醒剤だと悟らせないためにカプセルに入れて服用させる前提での話です。精力剤だとか強精剤だと偽って飲ませるなら、3グラム程度は料理レシピの大さじ1杯(約5グラム)以下ですから、ビールと一緒の飲ませるのは十分可能です。あるいは覚醒剤=セックスが強くなる薬、だと野崎氏が誤認していたならそのまま覚醒剤として3グラムを飲ませることも可能でしょう
以上、報道されたものを読んで感じた事柄を書きました
覚醒剤のみならず、日本でも大麻や合成麻薬など出回るようになり、特に若い人たちは大した抵抗もなく薬物に手を出す傾向があります
以前は中学校や高校で薬物の乱用防止のため啓発授業など実施していたと記憶しているのですが、最近はどうなのでしょうか?
かつて非行少年=シンナー吸引という時代でしたが、今では闇バイトとかおやじ狩りとか援助交際だとか、大きく様相が異なってきました。これも時代の移り変わりか、と年寄りくさい台詞を口にしてしまいそうです
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