岡山女児殺害事件を考える 勝田受刑者をまた精神鑑定

岡山県津山市で女児を殺害し既に無期懲役の判決を受けた勝田州彦受刑者が、未解決だった2007年の加古川市女児殺害事件の犯行を自供したため再逮捕されています
神戸地検は勝田受刑者の犯行時の精神状態を調べるため、鑑定留置を裁判所に請求し認められたと報じられています
勝田受刑者は津山事件でも犯行を自供したと思えばまた否認する、の繰り返しで、公判でも「やっていない」と主張する始末でした。本件の加古川事件でも自供はしたものの、その後は否認に転じる有り様で、一貫していません
神戸地検が精神鑑定すべきだと考えたのも理解できますが、勝田受刑者はこれまでにも精神鑑定を受けていたはずで、鑑定結果を2本も3本も並べるのはどうかと思ってしまいます
精神鑑定を担当する医師によって、その学識や根拠とする理論は異なっています。なので、勝田受刑者を3人の医師が鑑定すれば異なる3本の鑑定結果が提出されるのであり、それを並べて公判であれやこれやと議論するもの大変でしょう。もちろん、精神医学や犯罪心理学にとっては有意義な研究材料となりますが、裁判は研究の場ではなく刑罰を決める場ですから、精神鑑定を多数回繰り返すのが裁判に資するものとは思えません
連続幼女誘拐殺害事件で死刑が執行された宮崎勤死刑囚も、長い裁判の間に精神鑑定が繰り返され、3本もの鑑定結果が並ぶ事態となりました。1回の鑑定で70万円から90万円の費用がかかり、それは国費で負担します。物価上昇の昨今ですから、現在では1回の鑑定で100万円を超える費用がかかっているのかもしれません


兵庫県加古川市で平成19年10月、小学2年の女児=当時(7)=が殺害された事件で、神戸地検は11日、殺人容疑で逮捕された勝田州彦(くにひこ)容疑者(45)の刑事責任能力の有無を調べるため鑑定留置した。期間は来年3月14日まで。
勝田容疑者は、18年に同県たつの市の路上で小学4年の女児=当時(9)=が襲われた殺人未遂事件でも逮捕されている。任意聴取で両事件の関与を認めていたが、加古川市の事件での逮捕後、黙秘している。
両事件で起訴した場合に開かれる裁判員裁判では、刑事責任能力が争点となる可能性があり、地検は起訴前に事件当時の精神状態などを詳しく調べる必要があると判断したとみられる。地検によると、今月9日に神戸地裁に鑑定留置を請求し、10日認められた。
兵庫県警は、勝田容疑者が16年の岡山県津山市の小3女児刺殺事件で服役した今年5月以降、刑務所で本格的な任意聴取を始めた。たつの市と加古川市の事件への関与を具体的に供述したため、11月7日にたつの市の事件で逮捕。同27日に加古川市の事件で再逮捕していた。
(産経新聞の記事から引用)


まず、犯行のあった2007年当時の精神状態を調べる、というのがかなりの無理筋です。もちろん、2007年前後に勝田受刑者が逮捕されて取り調べを受けていた供述調書や、過去の精神鑑定結果、その他の記録を集め、2007年前後の生活状況など勝田受刑者がどれだけ記憶しているのか確認し、記憶違いや事実に反する妄想などの有無を確認する…といった手順を踏むわけですが
あるいは勝田受刑者の自傷癖、少女に暴行を加えて性的な快感に浸る性癖がいつから現れるようになったのか、繰り返すようになったのかも調べて動機の生成にも踏み込むものと考えられます
ただ、記憶というものは時間の経過とともに変質しますし、後付の理由(逮捕されるかもしれない、有罪判決を受けるかもしれない、という恐怖や懸念)によっても変化するわけで、2007年に遡って語られる勝田受刑者の話をそのまま鵜呑みにはできません。なので、鑑定結果をどうまとめ文章化するのか、鑑定医の技量次第でしょう
別の視点から考えるなら、神戸地検は本件である加古川市の女児殺害とたつの市の女児殺害未遂で勝田受刑者に死刑を求刑することも視野に置き、裁判員や裁判官を納得させるための材料として精神鑑定を実施している、とも推測できます
既に津山市の女児殺害で無期懲役判決を受けたのですが、本件の殺人と殺人未遂については自供せず、立件には至りませんでした。もし、3つの犯行を立件し、起訴していれば死刑判決が下されたでしょう。重大な犯行について自供しなかったのは、「真に反省していない」と解釈でき、それだけ勝田受刑者の悪質性が根深いものだと神戸地検は主張するのでは?
なので、神戸地検は本件では死刑を求刑し、裁判所の判断を問うつもりなのかな、と想像します

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