従業員に自殺強要 殺人罪で逮捕は異例?
東京都小平市の塗装会社「エムエー建装」の従業員だった50代の男性が東武東上線の電車に飛び込むよう強制された事件で、警視庁が殺人罪を適用して逮捕に踏み切ったのは異例、とする報道がありました
法令の解釈を歪めて殺人罪を適用すれば、「それって冤罪じゃないのか?」との声が出るご時世です。ただ、自ら手を汚すことなく人の命を奪うという悪質な犯罪を、「現行の法では殺人罪に問えないから」と弁解し、強要罪とか自殺の教唆といった軽い刑罰で処理するのは大間違いでしょう
東京都板橋区の東武線踏切で昨年12月、男性に自殺を強要し殺害したとして警視庁が8日に塗装会社社長ら4人を逮捕した事件は、元同僚の自殺に殺人罪を適用する異例のものだ。職場という閉じた環境下で何が起きたのか。捜査1課は、死亡した高野修さんに対する「服従」の強要を軸に約1年にわたり証拠を積み重ね、立件に踏み切った。
高野さんは1人で線路に立ち入り、列車にはねられた。外形上は第三者の関与はなく、当初は捜査関係者の間でも「(自殺を唆したり手助けしたりする)教唆か幇助罪で立件するのが現実的」との声もあった。
しかし、捜査過程で高野さんの自殺前の動きや、容疑者同士のやりとりに不審点が浮上。殺人罪の適用が可能か検討する際、着目したのが令和元年10月に福井県の名勝、東尋坊から男性が飛び降り自殺した事件だった。男性は自殺前に少年らから激しい暴行を受け、「はよ落ちろや」などと強要されていた。大津地裁は「極限状態まで追い詰められた」として被告7人に殺人罪を認定した。
捜査1課は容疑者らのスマートフォンを解析し、動画などから容疑者らによる高野さんへの苛烈な暴行を裏付けた。野崎俊太容疑者のスマホには容疑者の「(高野さんが)川は嫌だから、電車がいいと言っている」とする音声も残存。容疑者らが高野さんを服従させ、自殺せざるを得ない状況に追い込んだと判断した。
(産経新聞の記事から引用)
記事にある「東尋坊殺人」とは、2019年10月、滋賀県在住の少年らと当時41歳の男が共謀し、被害者男性に暴行を加えた上で車に監禁し福井県東尋坊へ向かい、崖から飛び降りるよう強要した事件です
41歳の男には懲役10年の判決が、主犯格とされた少年には懲役19年が、他の少年には懲役10年以上15年以下の不定期刑が言い渡されました
大津地裁の判決は、以下のように報じられています
41歳の男には懲役10年の判決が、主犯格とされた少年には懲役19年が、他の少年には懲役10年以上15年以下の不定期刑が言い渡されました
大津地裁の判決は、以下のように報じられています
福井県の東尋坊で2019年10月、滋賀県東近江市の男性(当時20歳)が殺害された事件で、殺人や監禁などの罪に問われた元少年(21)に、求刑通り懲役19年の実刑判決が大津地裁で言い渡された。共謀したとされる他の少年ら6人(いずれも実刑判決)のうち、一連の事件で意思決定をした中心人物だとして、最も重い量刑となった。
大西直樹裁判長は量刑理由について、元少年らが長期間、無抵抗の男性に対し、顔の輪郭がわからなくなるほど激しく暴行し、まるで物であるかのように監禁したことを挙げて「被害者の人格を否定し、尊厳を著しく踏みにじった」と非難。発覚を免れるため自殺に見せかけて殺害するという方法は「心を殺した上、肉体も殺す残酷なもの。わずか20歳で命を奪われた精神的苦痛は計り知れない」と指摘した。
また、元少年が動機について「男性のせいで暴力団関係者とトラブルになって腹が立った」と説明していた点には「全く落ち度のない男性に対する責任転嫁というほかない」と 一蹴いっしゅう 。一部否認していた、男性の足を車でひくなどの暴行についても「暴行を制したり非難したりせず、共犯の責任を負う」として関与を認めた。
弁護側は「反省している」などと情状酌量を求めていたが、大西裁判長は「自らの過ちの重大性に、まだ十分に向き合えていない」とし、説諭で「男性の『生きたい』という声に耳を傾けることなく、飛び降りさせたのは取り返しのつかない過ちだ。生まれ変わる覚悟で立ち直る努力をしてほしい」と語りかけた。
(読売新聞の記事から引用)
いまのところ「エムケー建装」が被害者に生命保険をかけていたとの報道はなく、保険金狙いの殺人ではなかったようです
とすれば、やはりいじめて楽しむという、陰湿な目的の犯行だったと考えられます
塗装会社の社長は、「殺すよう指示したことはない」とか弁解しそうですが、4人の間には「殺しても構わない」との合意が形成されていたものと考えられ、殺意を認定するのが困難とは思えません。警視庁が殺人罪で立件する段階で、東京地検からも「殺人罪で起訴可能」と了解を取り付けていたのでしょう
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