浜松一家殺害事件 無期懲役求刑
浜松市の民家で2022年3月、70代の祖父母と実兄の3人を殺害したとして殺人罪に問われている山田悠太郎被告(25)の裁判員裁判で、検察側は「被害結果は極めて重大」と述べ、無期懲役を求刑しています
3人殺害ですから死刑を求刑してもおかしくはない事件です。しかし、死刑ではなく無期懲役とした判断には、山田被告の解離性同一性障害を斟酌し、罪一等を減じるべしとの考えがあったと推測されます
●男性被告(初公判):
「人を殺した自覚がないし、記憶もありません」
2022年3月、自宅で同居する祖父ら3人の頭部をハンマーなどで複数回殴り、殺害した罪に問われている男性被告(25)。10月の初公判で起訴内容を否認しています。
この裁判で争点となったのは、被告が患う精神障害。それは…。
裁判で明らかになった、被告の別人格。過去に家庭内で受けた虐待の身代わりとなった「亮くん」と弁護側が犯人だと主張する「ボウイ」という、2人の別人格が被告の中に存在するといいます。検察側も被告の別人格の存在は認めていて、裁判の主な争点は「責任能力」に。
検察側の被告人質問では…。
●被告(被告人質問):
検察「ボウイには人をコントロールしようとする特性がありましたか?」
被告「ありました。威圧的で命令的になる部分があって逆らえません」
検察「ボウイを自分が生み出したということは?
被告「僕自身の意志で生み出したという認識はありません。
4日、地裁浜松支部で開かれた裁判には、亡くなった被告の兄(当時26)の妻が証言台に立ちました。
◆被害者の妻:
「あの日から私と息子の時間は止まったままです。1日も忘れることはありません。被告人は別人格がいると言って許されて普通の生活をしていく。命の価値はなんなのか、3人もの命を身勝手に奪ったのだから、それに見合った罪を受け、償うべきです」
検察側は論告で、3人に連続して犯行に及んでいることから、「被告の主張する人格の入れ替わりはなかった」などと指摘。凶器を準備したことや血の付いた犯行着衣を洗い、証拠隠滅を図ったことも踏まえ、「完全責任能力を有している」として、無期懲役を求刑しました。
一方で、弁護側は「別人格のボウイによる犯行で、行動をコントロールできない状態だった」として無罪を主張。無罪となれば、被告を入院させて治療すると訴えました。
「責任能力」が争点となった、注目の裁判。判決は1月15日に言い渡されます。
(静岡朝日テレビの記事から引用)
地元テレビ局の報道ですが、記者はこうした事件の扱いに不慣れなのでしょう
解離性同一性障害は人格障害(パーソナリティ障害)に分類されるものであり、精神障害ではありません。記者は精神障害と人格障害の区別がつかないようです
当ブログでいくつか、解離性同一性障害の事件を紹介してきました。その症状には個人差がありますので、解離性同一性障害と認められてもほとんど減刑されない判決もあれば、一定程度の減刑をしている判決もあります
ただ、世間一般的にはいまだに「解離性同一性障害(多重人格)なら無罪」とのデマが拡散しており、そう思い込んでいる人たちがいるのが実際です。そのためなのか、殺人事件でも「自分は多重人格で、別人格による犯行だから無罪だ」と主張する被告人がいたりします
言うまでもなくそんな詐病はバレますし、裁判官は簡単に騙されるお人好しではありません。おそらくは被告の「多重人格だから無罪」との言い分を聞いて、「あーハイハイ。またそれかよ」と思っているはずです
本件の山田被告については前述のとおり、解離性同一性障害との診断に検察も異議を唱えてはおらず、それを織り込んだ上で無期懲役を求刑しており、判決も無期懲役を言い渡すものと予想します
精神医学的には、憎悪の対象であった祖父母を殺害した後、人格解離の症状はどうなるのか、気になります。別人格と称するものが消失し、人格の統合が図られるのか?あるいはより症状が悪化するのものか
(関連記事)
浜松一家殺害事件 異常な家庭環境・暴力
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/507693482.html
浜松一家殺害事件 解離性同一性障害の扱いは
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/506050609.html
浜松一家殺害事件 解離性同一性障害としての言い分
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/507693482.html
浜松一家殺害事件 解離性同一性障害の扱いは
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/506050609.html
浜松一家殺害事件 解離性同一性障害としての言い分
浜松一家殺害事件 中間論告
浜松一家殺害事件 山田被告は3人の人格を持つ
浜松一家殺害事件 初公判で解離性同一性障害主張
浜松一家殺害事件 容疑者は元警察官
渋谷短大生バラバラ殺人(平成18年) 発達障害をどう裁くか
神戸5人殺傷事件を考える 心神喪失で無罪判決
神戸5人殺傷事件を考える 「ゾンビを殺した」
神戸5人殺傷事件を考える 初公判で心神喪失主張
神戸5人殺傷事件を考える 初公判は10月13日
神戸5人殺傷事件を考える 2度連続の精神鑑定
ススキノ首なし遺体 瑠奈被告を2度めの精神鑑定
西成准看護師殺人事件を考える 無期懲役判決
西成准看護師殺害事件を考える 解離性同一性障害
大阪多重人格殺人で懲役16年の判決1 6つの人格
大阪多重人格殺人で懲役16年の判決2 人格障害認めるも有罪
ビリー・ミリガンと多重人格の話(2)
ビリー・ミリガンと多重人格の話(1)