岸田首相襲撃 木村被告を取調べ検事が罵倒

岸田前首相が選挙応援演説のため和歌山市を訪問し、爆発物を投げ込まれる事件に遭遇したのが2023年4月です。その場で取り押さえられた犯人、木村隆二被告は起訴されていますが公判にはまだ至っていません
その木村被告は警察での取り調べでも黙秘を貫いたため、調べが難航し、さらに和歌山地検での取り調べでも黙秘しているのだそうです
担当検事が木村被告の態度に呆れ、揶揄したり罵倒するなどして口を開かせようとしたところ、その様子がビデオに記録されており、「不適切な取り調べ」として問題になったと朝日新聞が報じています


和歌山市の選挙演説会場で昨年4月、岸田文雄首相(当時)の近くに爆発物が投げ込まれた事件で、現行犯逮捕された木村隆二被告(25)を取り調べる際、検事が「家に引きこもって社会に貢献できない」などと侮辱する発言を繰り返していたことが関係者への取材で分かった。取り調べは録画され、内容を確認した最高検は「不適正」と認定した。
取り調べを担当したのは和歌山地検の男性検事(36)。関係者によると、木村被告が黙秘していると、検事は「木村さんはかわいそうな人」などと話し始めた。
捜査機関は「社会に感謝される」存在だが、「木村さんみたいに家に引きこもっていると感謝されることもほとんどないでしょう」と発言。「引きこもりのまま人生を終えても、少なくともマイナスは与えない。木村さんは外に出て社会にマイナスを生む」「全然、替えがきく。逮捕されても困らない」と告げた。
また、終始目をつむっている木村被告に対し、二択の質問をして「肯定なら目を開けて」と要求。木村被告が目を閉じていると、今度は「否定なら開けて」などと求める行為を2時間以上続けた。
取り調べは警察の捜査段階から録画され、黙秘をしてもほぼ連日、長い日で7時間以上続いた。
弁護人が同年5月に「黙秘権を侵害した」「事件と無関係の発言で被告の尊厳を傷つけた」と苦情を申し入れ、最高検の監察指導部が録画映像から事実を確認して「不適正だった」と認定。地検は検事を指導した。
木村被告は威力業務妨害の疑いで現行犯逮捕された。岸田氏にけがはなかったが、地検は爆弾の殺傷能力から殺人未遂に罪名を切り替え、五つの罪で同年9月に起訴した。来年2月に和歌山地裁で裁判員裁判が始まる。
(朝日新聞の記事から引用)


黙秘権を侵害した、と指摘を受けた担当検事は意外な感があったのでは?
これまでにも検事調べの際には被告を罵倒したり、揶揄したり、侮辱する言葉を浴びせて被告から供述を引き出す手法を繰り返していたのでしょう。先輩検事からも、「被告にナメられた駄目だぞ」と、こうした取り調べの手法を伝授され、真似してきたと推測されます
それを最高検察庁の監察指導部(そんな組織があるのを初めて知りました)から、「不適正」と言われて驚いたのかもしれません。あるいは「やってられねえ」とほざいたのか
警察、検察の取り調べが適切に行われているのか、録画して保存するよう義務付けられるようになっていますが、いまだにこうした取り調べが続いているのに驚かされます
すでにいくつもの事件で、検事の取り調べに問題があったと告発され、裁判になっているものもあります
それでもなお、現場の検事たちは被告に暴言を吐いたり脅すような手法を使っているのですから、問題の根の深さを感じます
黙秘もまた被告の態度表明なのですから、それを受け入れたうえでどう公判に持ち込むか、考えるべきでしょう。従来通りの「口を割らせる」ことに執着する取り調べが通用しなくなったのですから
検事の取り調べとは比較にもならないのですが、自分は少年鑑別所で事件について、あるいは自身の家庭について語ろうとしない少年・少女の資質鑑別をやっていました
家庭環境もほぼ少年らの自己申告であり、家庭環境を把握する資料など皆無です。せいぜい家庭裁判所調査官とのやりとりで、家庭環境の情報を得るくらいです(家庭裁判所は学校に照会をかけ、情報を得る手段がありますし、保護者を家裁に呼び出して聞き取りも行います)
本人が頑なに語ろうとしない場合、補助的な手段として箱庭や家族画といった投影法を用います。家族の有り様や人間関係の力動を箱庭や家族画に投影させ、そこから読み取ろうとするのです。自分が精神分析に傾倒したのも、こうした方法が有効だと実感したからです
ただ、こうした技法が警察や検察の取り調べで有効、というわけではありませんので、警察や検察も取り調べのための新たな技法を開発してはどうか、と提案したくなります
高圧的に自白を迫るだけでなく、相手から情報を聞き出す方法を警察官や検事が学び、身につける必要があります。アメリカのFBIなどで、こうした技術の研究が進められているとも耳にします

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