中学生が女性教師中傷動画アップで逮捕 高知

中学生や高校生がスマートフォンで悪ふざけ動画を撮り、インターネット上にアップして炎上する事件は珍しくないのですが、今度は中学生が女性教師を中傷する動画を公開していた容疑で逮捕される事件がありました
逮捕されたのは高知市内に住む中学3年生の男子です。逮捕に至ったからには女性教師が警察に被害届を出していたのでしょう
一部には「逮捕ではなく、学校内での指導で解決できなかったのか」とする意見もあります。しかし、インターネットという公の場に中傷動画を晒す行為は明らかに犯罪ですから、警察に委ねるという判断は妥当です。また、これを学校内での問題だと矮小化し、内々で解決を図ろうとする動きこそ、事態を隠蔽しかねない危うさが付きまとうものと危惧します


20代の女性教諭を中傷する動画がSNSに投稿され、名誉毀損の疑いで逮捕者がでました。逮捕されたのは、女性教諭が勤める中学校の、3年生の男子生徒。同じ学校に通う1年生の男子生徒も共謀したとみられます。
逮捕されたのは、高知市の中学校に通う、15歳の中学3年生の男子生徒です。高知東警察署の調べによりますと、男子生徒は、10月9日の午後7時半ごろ、同じ学校に通う12歳の1年生の男子生徒と共謀し、この中学校に勤務する20代の女性教諭を中傷する動画を撮影してSNSに投稿し、女性教諭の名誉を害した、名誉棄損の疑いが持たれています。
15歳の男子生徒が女性教諭を中傷し、それを12歳の男子生徒が撮影したと見られていて、動画は一時、誰もが閲覧できる状態にあったということです。警察は「捜査に支障をきたす」として、2人の認否を明らかにしていません。警察が、詳しい動機などを調べています。
今回の事件について、SNSの誹謗中傷に詳しい、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一(やまぐち・しんいち)准教授は、こう受け止めています。
■国際大学GLOCOM 山口真一 准教授
「私は聞いたことがない、かなり珍しい事例だと思います。動画の内容を存じ上げていないので、詳しくお話しすることが困難なんですけども、少なくとも『こういった疑いがある』ということで『逮捕』されていることを考えますと、『相当ひどい内容』だったのかなと予想はしております」
「『少年法』もありますけど、それで『何をやってもいい』というわけではありませんので、当然、生徒が著しく“人としての道”を逸脱したような行為をしていれば、教師側・教師以外の人たちも『被害届を出す』という行動をとる、…ということは十分に考えられます。学生・生徒であろうとなかろうと、人を中傷するような内容の文章・動画・画像などのコンテンツをインターネットやSNSにアップするのは、良くないです」
(以下、略。テレビ高知の記事から引用)


テレビ高知の記事は以下、ネットリテラシーの問題について、山口真一准教授とのやり取りが続いています。つまり、テレビ高知としてはこの事件をネットリテラシーの問題であり、誹謗・中傷など動画をアップしたりSNSに投稿してはいけないと中学生に十分教育すべし、との見識なのでしょう
それも1つの見解ですが、自分は中学生と女性教師の関係をもっと重視する必要があると考えます
精神分析「フロイトの否認」
フロイトは『否認』(Die Verneinung)という概念を提唱しているのですが、そこでは患者の無意識に隠蔽されていた欲望が、「否認されることによって」という条件のもとで、無意識の領域から意識に突き抜けて表出すると指摘しています。たとえば、「夢の中のその人物は誰なのでしょうとお尋ねですね。それは母ではありませんよ」と患者が精神分析家に告げたとします。患者は夢の中で自分を抑圧してくる人物、もしくは抑圧されている観念自体が、彼の「母」と密接に関係していることを、「母ではない」との否認表現のうちに告白している…と解釈できるのです
中学生の怒りの正体
本件の中学生と教師の間にどのようなトラブルがあったのか、報道されていないので不明なままです
ただ、中学生が誹謗中傷する動画をアップするほど教師に怒りを抱いていた、と判明しているだけなので、以下は自分の憶測でしかありません
「フロイトの否認」というパラドキシカルな考えを用いれば、中学生が女性教師に何らかの欲望を抱いており、それが受け入れられなかったゆえ攻撃的な振る舞いに走ったとの仮説が立てられます。ただし、中学生の欲望といってもそれが直ちに性的な欲望とは限りません
教師に受け入れてもらいたいとか、認めてもらいたいとの欲求だった可能性もあります
もちろん、中学生が言葉で教師に自身の欲求を説明できるはずもなく、単に「わかってもらいたい」と一方的に思い募り、それゆえ反抗的な態度を示したり中二病的な振る舞いをしていたとも考えられます
結果としてますます両者の間は拗れてしまい、感情的な対立が生じ、中学生は教師への憎悪を募らせるに至った…とも推測されます
しかし、だからといって教師が教壇を降りて彼個人への親愛の情を示す必要はなく、あくまで教師と生徒という関係の中で折り合いをつけるのが本来だったと思われます
ただ、本件のような誹謗中傷内容の動画を投稿し、一般人の目に触れさせるという暴力に走ったからには相応の社会的制裁を受けるのが筋であり、逮捕して家裁に事件送致する対処は間違っていない、というのが自分の考えです
以上は仮説に基づいて書いたのですが、中学生は自身の内心でどのような力動が働いていたのか、理解していないままでしょう。なので、警察の取り調べにおいても学校で何があったのか、断片的なエピソードを語るだけにとどまり、内心の変化を言語化して説明はできないと想像します
引用したテレビ高知の記事のように、ネットリテラシーの問題として啓蒙するのは確かに大事な対応ですが、やはり事件の意味からしては中学生の思春期の拗らせ行動、と解釈して検討するのがベターだと考え、書きました

(関連記事)
茨城県警警部 陰謀論にはまり大学教授を中傷
茨城県警警部 大学教授を中傷し罰金刑
殺害予告メール送信 芦屋の中学3年生逮捕
アグネス殺害予告で中学生特定 家宅捜索
渋谷母娘刺傷事件 少年院送致決定
渋谷母娘刺傷事件 不登校に家庭内葛藤
渋谷母娘刺傷事件 女子中学生を逮捕
同級生宅へ次々と放火した高校生逮捕
戸田市中学校襲撃 少年院送致決定
戸田市中学校襲撃 私立受験失敗でひきこもりか
戸田市中学校襲撃 過去の事件と共通点?
戸田市中学校襲撃 専門家の見解
戸田市中学校襲撃 17歳高校生を逮捕
愛知中3刺殺事件を考える 少年院送致決定
愛知中3刺殺事件を考える 「サインを見逃すな」論の無謀
愛知中3刺殺事件を考える はっきりしない動機