新潟妻子殺害 無期懲役求刑

2021年、新潟市の自宅で妻と1歳の長女の首をロープで絞めて殺害した罪などに問われている、元看護師の渡辺健被告(31)に対し、新潟地検は「高い計画性があり、強固な殺意に基づく冷酷残忍な犯行だ」などと述べて無期懲役を求刑しています
この事件の裁判では渡辺被告が数度に渡って妻子を殺害しようと計画した、と検察側が立証してきましたので、てっきり死刑を求刑するものと思っていました。求刑が死刑で判決は無期懲役、との予想です
しかし、高い計画性のある犯行と主張した割には無期懲役の求刑にとどまっており、ちょっと意外な気がします
ヤフーニュースのサイトで、新潟テレビ21が珍しいほど長文の記事(検察の論告求刑内容をそっくり転記したのかと思えるほど)を掲載していますので、一部を引用します


12日の論告、検察は初めに「被告は不倫相手との関係を継続する中で、関係に危機が生じたとき、関係性が高まったとき、あるいはそれらが入り混じった状況のときに2人の殺害を試みていた。」と改めて指摘。
①2021年2月に不倫関係終了の危機に際し、妻・春香さんに睡眠薬を飲ませ意識混濁に陥らせ、②翌3月には関係の再燃に伴い本件殺人未遂事件、③④8・9月には不倫相手との同居生活の終了や関係終了の期限を宣告されたことに伴い、春香さんに劇薬を摂取させ、⑤11月には不倫相手との連日の密会や不満を言われたことで本件殺害事件を起こすに至っていて、
「本件は、被告が不倫関係を継続するため、その障害となる2人を排除しようとして合計5回にわたって殺害を試みるなどした事案」と説明した。
前述の通り、公判では殺人未遂と殺人予備の成立について争っている。
検察は、2021年3月、渡辺被告が妻・春香さんに睡眠薬を飲ませ、交通事故を起こさせた殺人未遂について「運転中、睡眠薬の薬理効果が発生していたことは明らか。その状態は、場合によっては対向車両と正面衝突するなど大事故につながる危険性が高く、2人を死亡させる危険性が十分に高かった。」と指摘。
渡辺被告は本件の1か月前にも春香さんに睡眠薬を飲ませていたことから、睡眠薬摂取時の春香さんの危険な様子を間近で見ていて、さらに本件前日にもインターネットで「運転中に心肺停止」のページを閲覧するなど、「春香さんが睡眠薬の効果によって事故を起こし死亡する危険を、渡辺被告が具体的に想定していたことは明らか」として、渡辺被告には春香さんの運転を制止させる義務があった、と主張した。
これに加え、事件前から『妻殺害 水死に偽装する方法』『建築中 施主 死亡』『溺水 低酸素脳症』など多数の殺害関連の検索をしていたことなどから、「強く執拗な殺意がある」として殺人未遂が成立すると主張した。
2021年9月に勤務先の病院から塩化カリウム10本を盗んだ殺人予備については、検察は「当時、年内期限とされた不倫相手との関係を維持するため、春香さんを排除する動機が高まっていた。」「塩化カリウムを盗んだ翌日に、春香さんに意識消失などの副作用のある劇薬を摂取させた。」などと指摘。
本件の前に『塩化カリウム 致死量』『司法解剖 カリウム』『塩化カリウム製剤 死ぬ』などの検索履歴、前後を通じて『妻がいなくなった 行方不明』『取り調べ 録音』『看護師 実刑 免許』や多種多様な殺害関連の検索・閲覧履歴が残っていたことなどから、「殺意を抱いていたことが強く推認される」として、殺人予備罪が成立すると主張した。
(中略)
「取り調べでも『娘を殺したのは妻』などと話し、責任逃れの態度も甚だしい。法廷でも都合の悪いところだけ『分からない』『記憶がはっきりしない』など、決め打っているとしか思えない言葉の繰り返し。責任に向き合おうとする態度は皆無で、反省の言葉も口先だけ。」と犯行後の行動も極めて無反省だと指摘。
検察は同種事案と比較し、有期刑が選択されたものに比べ「より重大悪質」として無期懲役を求刑した。


検察官は渡辺被告の取り調べにあたっていて何かよほど気に障る部分があったのか、と思うほど激しく被告を批判する言葉が並んでいます。担当検事がもし女性だったなら、「こんな不倫男、許せない」と感情が先走るのかな、と(論告求刑を行った検事が男性なのか、女性なのかは不明です)
こうした論告求刑に対し、弁護人の最終弁論は次のように報じられています


弁護側は、2021年3月の春香さんの交通事故について、「子育ての疲れに加え、当日には渡辺被告のお金の流用が発覚するなど、肉体的にも精神的にも疲労が蓄積していた。運転中にスマホでLINEの返信もしていたことから、事故の時もスマホの操作でふらついていたとも考えられ、睡眠薬の効果で事故に至ったとは断定できない。」などと主張。
また、「110番通報の話しぶりからも、睡眠薬の効果はほとんど出ていなかったと思われ、事故の前も一定程度車のコントロールができていた。被告は春香さんの運転を止めるべきだったかもしれないが、それが春香さんを殺害しようとしたことと同価値と評価されるほどではない。」としたうえで、
「渡辺被告は、春香さんに睡眠薬の効果が生じているのを認識しながら、あえて車の運転を止めなかった、ということではない」として殺意を否定し、殺人未遂は成立しないと主張した。
(中略)
「結果が重大であるのは言うまでもなく、その責任を取らなければならないことも言うまでもない。ただ、本件ではとりわけ殺害方法が残虐・執拗であるとまでは評価できず、あえて死ぬまでの苦しみが増すような方法をとったわけでもない。」
「2人を殺害した動機に同情するものはないが、保険金など利欲目的での殺人とは異なり、純ちゃんの殺害もその場でとっさに恐怖を感じたことによる突発的なものだった。犯行後の自殺の偽装工作についても、用意周到とは対極のずさんな行為でだった。」
「今の段階でも被告の反省は不十分に映るかもしれない。しかし、逮捕された当時に比べれば、少しずつ反省を深めていっている。これからその反省をさらに深め、贖罪の気持ちを持ち続けさせることが必要。そのうえで科すべきは死刑・無期懲役でなくてはならないのか。」と述べ、有期刑の選択を求めた。


弁護人は妻への殺人未遂も殺人予備(塩化カリウムを勤務先の病院から盗み出し、妻の殺害を計画した)も否定し、塩化カリウムは精神的な安定を得るためのお守りのようなものだった、と苦しい釈明を並べています。苦労してひねり出した釈明なのでしょうが、あまりに突飛で筋が通らない主張です
また、「そのうえで科すべきは死刑・無期懲役でなくてはならないのか」との言い分には、不謹慎ながらコーヒーを吹いてしまいました。パソコンのモニター画面がべたべたです。これだけの犯行をしてのけた被告に、死刑や無期懲役以外はあり得ないでしょう。懲役20年くらいで勘弁してくれ、とでも?
先の公判には渡辺被告の不倫相手である女性看護師が出廷し、「いまでも渡辺被告と結婚したいと思っている(最大の障害であった前妻が死んだので)」と堂々と発言しており、思わずのけぞってしまいました。1歳の娘を絞め殺すような男と結婚したいと言ってのけるとか、夜叉なのか修羅なのか、と。何かと驚かされる裁判です
判決は無期懲役となるはずで、不倫相手の女性は渡辺被告が仮釈放を得るまで35年から40年は待つ必要がありそうです。あるいは服役中に入籍手続きをし、刑務所へ面会に通い続けるのかもしれません

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