浜松一家殺害事件 山田被告は3人の人格を持つ

浜松市の民家で2022年3月、70代の祖父母ら3人を殺害したとして殺人罪に問われた、孫の山田悠太郎被告(25)の裁判員裁判が続いています
11月13日の公判では、山田被告が自分の中に「亮くん」と「ボウイ」という2つの別人格があって、そのうち「ボウイ」が祖父母ら3人を殺害したと述べています
山田被告は「ボウイ」と会話は可能だそうですが、「ボウイ」は山田被告の体を乗っ取ることができるとも語っています
こうした山田被告の主張は公判で唐突に出てきたのではなく、犯行後に警察で取り調べを受け始めた段階で、「自分の中に別の人格がいる」との供述をしていたとも報じられています。また、山田被告は解離性同一性障害との診断を受けている、との報道もありますが、それが事件前なのか事件後なのか、はっきりしません


2022年浜松市の住宅で3人が殺害された事件の裁判で、被告の男は犯行を行ったとした別人格について、「自分のことを神だと思っている」と証言しました。
元警察官の被告(25)は、2022年3月自宅で同居する祖父(当時79)ら親族3人の頭をハンマーなどで殴り、殺害した罪に問われています。
これまでの裁判で被告は殺害を否認していて、被告は自分が持つとする「ボウイ」という名前の別人格が、犯行に及んだと主張。
被告の責任能力の有無が大きな争点となっています。
14日は検察側から被告人質問が行われ、被告は別人格の「ボウイ」について、「威圧的で人をコントロールしようとする特性があった」と説明。
「自分のことを神だと思っていると思う」と証言しました。
また裁判では、被告が「ボウイ」として検察官の取り調べを受けた際の調書が読み上げられ、「ボウイ」は自身について「被告の願望で、被告の歪んだ部分から生み出された」と説明。
犯行については、「悪魔である祖父母と父・兄を殺害し、悪魔払いの儀式を考えていた」としていて、「自分が殺したという事実で被告がショックを受けていて、考えが間違っていたと思ったが後悔はない」などと、供述していたことが明かされました。
裁判は来週、争点の1つである「山田被告が犯人かどうか」という「犯人性」について、中間論告と弁論が行われ、その後は山田被告の精神鑑定を行った医師2人が出廷するなど、「責任能力」を中心とした審理が続く予定です。
(静岡朝日テレビの記事から引用)


記事には今後の公判に鑑定を行った医師2人が出廷する、と書かれています。これは検察側が刑事責任を問えると判断する根拠となった鑑定と、責任能力を否定する弁護側の主張の根拠となった鑑定の2つがあることを示唆しています
おそらく検察側の実施した鑑定に納得できない弁護人が再度の精神鑑定を裁判所に申し立て、認められた結果なのでしょう
鑑定を実施する医師の見識、根拠とする理論などから、真逆の鑑定結果が出るのは珍しくありません。後は法廷に立った鑑定医に検察、弁護人が質問をし、どちらの鑑定がより妥当なのか裁判官と裁判員が判断することになります
解離性同一性障害と刑事責任
さて、前回この事件をブログで取り上げて以降、解離性同一性障害と刑事責任に関する論文をいくつか探し出して読んでみました。
1つの論文には、明確な事件名が記載されていないものの解離性同一性障害(多重人格)の場合、本人が犯行をなしたことを自覚できていないため犯行を自らの意志では抑止できず、刑事責任を問うのは難しいと書かれていました。が、これは古い考えのように思えます
当ブログで取り上げた最近の事件では、別人格による犯行であっても本人の人格が犯行の一部あるいは全部を認知しており、別人格とされるものも本人の作り出したものにすぎず、刑事責任を認める判断が定着しているように受け取れます
他人の人格が降って湧いたわけでもなく、あくまで本人が現実からの逃避を図るため別の人格を生み出す、というのが主流の学説です
ですから本件の場合でも、「亮くん」や「ボウイ」もは山田被告が生み出したものであって、山田被告の人格と完全に別物、という扱いにはできません
したがって刑事裁判では心神喪失状態であり無罪、といった扱いにせず、解離性同一性障害であることを考慮し、求刑から2年前後割り引いた判決を下すことになろうか、と予想します
「いまだに多重人格による殺人なのだから刑事責任は問えないはず」とニュースサイトにコメントを書き込んでいる方がいますので、その古い考えは改めた方がよいと思います

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