浜松一家殺害事件 初公判で解離性同一性障害主張

2022年3月、浜松市内の美容室兼住宅で70代夫婦と20代の孫の3人が殺害される事件があり、孫の山田悠太郎被告(犯行時22歳)が殺人容疑で逮捕されています。この事件は山田被告逮捕後、一部週刊誌が取り上げたものの、その後どうなったのか報道が途絶えてしまっていました
ようやく初公判を報じる記事が出ましたので取り上げます


おととし3月、浜松市の自宅で祖父母と兄の3人を殺害したとして殺人の罪に問われている25歳の被告の裁判員裁判が始まり、被告は「自分が人を殺した自覚はないし、殺した記憶もないです」と述べ起訴された内容を否認しました。
浜松市中央区佐鳴台の無職、山田悠太郎被告は(25)おととし3月、自宅で祖父の浦山毅さんと(当時79)祖母の浦山秀子さん(当時76)それに兄の山田健人さん(当時26)の3人をそれぞれハンマーで殴るなどして殺害したとして、殺人の罪に問われています。
31日、静岡地方裁判所浜松支部で始まった裁判員裁判で被告は「自分が人を殺した自覚はないし、殺した記憶もないです」と述べ起訴された内容を否認しました。
検察は冒頭陳述で「祖父母が以前、被告に暴力を振るうよう兄に依頼していた」などと述べ、被告が家庭内で虐待を受けていたことを明らかにし、恨みや怒りから殺意を抱いて殺害したと指摘しました。
これに対し弁護側は「犯行は別人によるものの可能性があることや、仮に犯行をしていたとしても、心神喪失などの可能性があり、刑事罰を受けないか刑を軽減するべきだ」として、全面的に争う姿勢を示しました。
判決は来年1月15日に言い渡される予定です。
(NHKの記事から引用)

起訴状などによりますと被告の男は2022年3月、自宅で祖父(当時79)、祖母(当時76)と兄(当時26)の3人をハンマーなどでそれぞれの頭部を殴り、殺害した罪に問われています。初公判で被告の男は「僕は自分が人を殺した自覚がないですし、殺した記憶もない」と起訴内容を否認しました。
法廷で明らかにされたのは、山田被告の「別人格」とされる存在です。被告は警察での取り調べの際に「自分にはボウイという別人格がいる」と供述しています。
弁護側は冒頭陳述で目撃者がいないことなどから、無罪を主張した上で仮に被告が殺害行為に及んでいたとしたら「別人格」による制御不能な状況だったと説明しました。
一方、検察は被告の動機についてかつて家族から受けていたDVなどが背景にある述べ、犯行は計画的だと指摘。「別人格」については不自然・不合理で、仮にそうであっても責任能力は認められるとしました。
(静岡放送の記事から引用)


山田被告は静岡県警の警察官として採用されたものの、警察学校卒業後に派出所にはいぞくされて間もなく退職しています
その後は実家にいたと推測されますが、事件当時はどのような生活状況であったのか、よく判りません。今後の公判で明らかにされるのでしょう
またしても、と言いたくなる「解離性同一性障害だから無罪」との主張です
ただ、山田被告が解離性同一性障害だとするなら、いつ頃から発症していたのか、精神科や心療内科への通院があったのか、家族はそれを承知していたのか、などなど確認しなければなりません
家族、知人らがまったく山田被告の解離性同一性障害に気づいておらず、異変や予兆といったものを認識しておらず、本人からの申し出もなかったとすれば、本当なのかと疑いたくなります
逮捕から公判まで随分と時間が経過していますので、1度か2度の精神鑑定が実施されており、その鑑定結果も裁判の争点になります
当ブログではいくつもの解離性同一性障害の刑事裁判を取り上げてきましたが、その範囲では解離性障害を理由に無罪判決となったケースはありません。自分の知らない刑事裁判で、あるいは無罪判決が確定したケースが存在するのかもしれませんが(後ほど、探してみます)
裁判所の判断としては、解離性同一性障害であると認められても刑事責任能力が問えるとするのが通常で、その症状の度合いに応じて減刑しています
なので、山田被告が無罪と主張するならば、相当重度の症状を抱えていたと立証する必要があります
現時点では憶測するしかないのですが、起訴前に検察が実施した精神鑑定では「刑事責任能力に問題はない」との鑑定結果が示され、弁護側がこれを不服として再度の精神鑑定を求めたのではないでしょうか。2度めの鑑定結果で「解離性同一性障害」との診断がつき、「犯行時には責任能力が減衰していたと推測される…」との鑑定結果を得たのかな、と
いずれにせよ、鑑定医が公判に呼ばれ証言するはずです。今後の展開に注目しましょう

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