教員試験合格者のうち7割が採用辞退
仕事の選択はその先の人生を左右しかねない問題です。なので、少しでも良い就職口を求め、就職活動が加熱するのは当然なのでしょう
他方で大学生の公務員離れ、教員離れが顕著となり、「教員採用試験を突破しても、合格者のうち7割が採用を辞退する」という高知県の事例もあります
大学で教職課程を取り、教員採用試験まで受けるものの、いざ合格すると教員より他の仕事に目が行ってしまうわけです。教員という職業に若い人たちが魅力がない、仕事がきつい、変な親に絡まれたら大変といったイメージを抱いてしまうゆえですが、教員の待遇改善を怠ってきた地方自治体や政府にも責任があります
その代表ともいえるのが「定額働かせ放題」と揶揄されている給与のシステムです。公務員の基本給に超過勤務手当相当分(基本給の4%)として教職調整額を上乗せするものの、月に何十時間残業しようとも超過勤務手当はないというシステムですから、若い人が敬遠するのは理解できます
政府の教育審議会においてもこの教員給与の問題が取り上げられたのですが、結論は「定額働かせ放題」の現体制を維持するというものでした
つまりは文部科学省は「定額働かせ報道」を改める気がない、という結論です
しかし、衆議院議員選挙で政府与党が大敗した結果、どうやら「定額働かせ報道」を改める方向へ動き出したようです
高知県の教員採用辞退者続出の報道と、教員給与見直しについて取り上げた報道の2本を貼ります
高知新聞が10月29日に報じた教員採用をめぐる記事が、教育関係者で話題となっている。採用試験に合格した人のうち、7割が辞退したという内容だった。こうした傾向は高知だけではないようだ。指摘されて久しい教員の過酷な労働環境。「なり手不足」は深刻さを増している。
記事によると、高知県教育委員会は、2025年度の小学校教員の採用について、合格通知を出した280人のうち、7割を超える204人が辞退したと発表した。採用予定人数は130人だったといい、13人の追加合格を出した。さらに12月に2次募集をする方向だ。
これだけの規模で人数不足が起きたことに、高知県教委も大騒ぎとなっているかと思いきや、担当者は「7割の辞退率はある程度見込んで(採用を)行いました」と冷静に話す。7割という辞退率は、ここ3年間は横ばいなのだという。
高知県の25年度の教員採用試験は、1次試験の日程が全国で3番目に早い6月1日に実施された。
「より多くの人に受験してもらえるよう、高知県の教員採用試験は本州にも会場を設けている。“滑り止め”として受験してくる人もいる」と担当者が語る。
高知県の昨年の公立小学校の教員採用は定員に満たなかったため、追加合格の発表を3回出した。それでも定員に満たず、12月に2次募集をしてようやく確保できたという。
担当者は「辞退率が7割というのは痛い。今年も2次募集を行うことになる」としつつも、「辞退率が高い背景には、教員の労働環境など複数の問題がある。高知県としてICT(情報通信技術)の導入などを進めており、労働環境改善に乗り出しています」と話す。
(以下、略。AERAの記事から引用)
国民民主党・玉木雄一郎代表が4日、自身のX(旧ツイッター)を更新。公立学校教員の処遇改善を巡り、残業時間に応じた手当を支払う仕組みを導入する案が政府内で浮上し、関係省庁が検討を始めたことに言及した。
この仕組みを採用すれば、残業代の代わりに一定額を給与に上乗せ支給する現行の「教職調整額」制度は廃止する。教員の長時間労働の解消が課題となる中、勤務時間を反映した賃金体系へ変え、管理職に過重労働を抑える動機が働くようにする狙い。
現在の教員給与特別措置法(給特法)は、公立校教員に残業代を支払わず、代わりに教職調整額を支給すると定めている。文部科学省は待遇を見直して教員不足の改善につなげようと、教職調整額を現在の月給4%相当から3倍超の13%に増額する案をまとめ、2025年度当初予算の概算要求で関連費用を計上した。
(Sponichi Annexの記事から引用)
記事には書かれていませんが、教員志望者が現象すれば必然的に教員の質の低下が起こります。現在でも教員の退職や産休、育休に対応するため非常勤の教師採用が行われています。しかし、非常勤の教師採用に応募するのはそのほとんどが正規の教員採用試験を受けたものの採用に至らなかった人たちであり、つまりは正規採用できなかった理由・事情のある人です
その結果、非常勤採用の教師が児童・生徒を相手にわいせつ事件を起こすといったケースも相次いでいます
質の高い教員を採用するためにも、採用時の競争がある程度は高くないとダメなのでしょう。そのためにも、教員志望の学生を増やす必要があり、給与面での改善は必須です
さて、文部科学省は長年に渡って「定額で働かせ放題」の体制を「変えられない」と説明してきました。現実には「変えられない」のではなく「変えたくない」のであり、体制を変えないためにあれこれ口実を並べていただけです。今回のように政府が方向転換し、変えると決めれば文部科学省も渋々ながらも政府の方針に従わざるを得ず、教員給与特別措置法の改正案を出すしかありません。なので、本当に「変えられない理由」など存在しなかったわけです
(関連記事)
名古屋市教育委員会 裏金人事に河村市長キレる
名古屋市教育委員会 裏金で人事を買う?
名古屋市教育委員会 幹部が裏金受け取る
名古屋市教育委員会 職員団体から金品授受
女性教諭が自殺 宮城県教育委員会の無責任
女性教諭を自殺に追い込み懲戒 停職3か月
大分教員採用不正事件で元県幹部に賠償命令
高知県小学校教頭 既婚講師に交際迫り懲戒免職
高知県小学校教頭 既婚女性教師に不倫迫る
国民民主党「103万円の壁を178万円に」