中国アニメ「山海経 霊獣図鑑」

ここ最近、当ブログで紹介する中国アニメの傾向として、中国の文化や歴史にちなんだものが目につきます。これも中国政府の司令によると考えられ、中国の歴史や文化を題材にアニメーション作品を生み出し、他国に売り込む狙いがあるものと考えられます。それは習近平国家主席による「偉大な漢民族の復活」という政治テーマに沿うものなのでしょう
しかし、これまでに紹介した「兵馬俑」にしろ、「長安三万里」にしろ、中国文化に馴染んでいる日本人なら受容し鑑賞できる作品ですが(面白いと感じるかは人それぞれです)、中国文化に馴染みのない欧米人にとってはチンプンカンプンと思われます
題材はともかく、物語としていかに構築し、視聴者の関心を惹くストーリーに仕立てるかが問題です
少し古くなってしまいましたが、2023年4月、中国映画を紹介するイベントで公開された劇場版アニメ「山海経 霊獣図鑑」を取り上げます
「山海経」は中国各地の伝説、怪異譚や風物、動物や植物について記した地理書です。日本で例えるなら「風土記」でしょうか
日本にも平城京時代に伝来しており、平安時代には写本も作られ貴族階級の間で読まれていたようです


中国アニメーション「山海経 霊獣図鑑」が中華映画を届ける「電影祭」にて4月7日に公開。ポスタービジュアル、場面写真が到着した。
ホアン・ジェンミンが監督を務めた本作は、動植物や妖怪、神々の記述が多く含まれ、古代中国各地の神話が伝えられている中国最古の地理書「山海経」をモチーフにした作品。海に浮かぶ崑崙という島を舞台に、神医の白澤が謎の疫病・黒霊の治療法を探すため、壮大な冒険に出るさまが描かれる。
このたびYouTubeで予告編も公開に。黒霊の治療法を求め奮闘するも、さらなる被害を町にもたらしてしまった白澤が、崑崙医館を追放されてしまう様子などが収められた。またポスタービジュアルには山海経に登場する麒麟、九尾の狐、燭龍(しょくりゅう)などの霊獣がデザインされている。
「山海経 霊獣図鑑」は東京・グランドシネマサンシャイン、神奈川・ムービル、大阪・シネマート心斎橋、北海道・サツゲキで1週間限定公開。
(映画ナタリーの記事から引用)

中国最古の地理書「山海経」をモチーフにしたアニメ映画

「どのように視聴者に物語を見せるのか」という視点は重要です。が、中国アニメにはそうした視点が欠けており、山海経の中に世界で物語が展開します。これが日本のアニメであれば、中学生か高校生の男女が「山海経」の世界へ飲み込まれ(いわば異世界転生です)、そこで冒険を繰り広げるというストーリー構成にするでしょう
神医の白澤の活躍を描くだけでは、物語世界の幅が広がらず奥行きも乏しいと日本のアニメーターなら考えるはずです。物語を支えるキャラクターとして中年のおっさん医師だけでは弱く、脇を固める個性的なキャラクターや美少女も欠かせませんし、ボーイ・ミーツ・ガールの要素も盛り込もうとするでしょう
結果として、「山海経」だけの世界で物語が展開するのではなく、そこを突き破るストーリー構成になるのでは?
それでは「中国古典の価値と存在意義を損なうからダメ」と検閲する中国政府の官吏は言うのかもしれません。ですから退屈な、つまらない作品になるわけです
「山海経 霊獣図鑑」は限定公開のみで、日本のアニメファンの目に触れる機会は1週間か2週間程度に留まったのでしょう。日本のアニメ作品に登場する九尾狐や麒麟など、元祖は山海経にあるのですから、もう少し面白い作品に仕立ててもらいたかったところです

(関連記事)
「日本アニメの没落」と書く韓国メディア
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/508091695.html
アニメ「ブルーピリオド」感想
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/507912202.html
中国アニメの謎作品「深海レストラン」
中国アニメ「長安三万里」はウケるのか?
日本アニメの発展を解説する中国メディア
韓国劇場版アニメ「愛のハチュピン」 興行好調
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/505517655.html
いま一度、映画「ルックバック」を語る
日本アニメ「ルックバック」 上海国際映画祭で激賞
中国の漫画・アニメ業界の「ヒーロー待望論」
中国アニメは質・量とも向上、という記事
中国アイドルアニメ 劇場版『Re:STARS』日本公開もコケる
中国アニメ「兵馬俑の城」は劣化版ディズニー
中国メディア「日本アニメは人気だが…」
中国紙「中国アニメが世界で評価され始めた」
中国アニメ 獅子舞少年の物語を劇場版で公開
アニメ「葬送のフリーレン」を称賛する中国
中国を席巻する日本の劇場版アニメ
中国アニメは日本を超えたのか?
「中国アニメがディズニーを駆逐する」という記事
中国アニメはなぜ日本でウケないのか?
中国アニメと日本アニメ 絶対に越えられない壁
中国アニメファンの「中国アニメがダメな理由」
日本アニメ売上2兆92百億円 韓国アニメは8百億円
「韓国は世界4大コンテンツ強国」と韓国政府
中国で「SLAM DUNK」がウケた理由 自己像探求
「日本の文化が米国を征服」と書く韓国メディア