今市女児殺害事件 勝又受刑者は再審を目指す
2005年12月1日、栃木県今市市(現:日光市)の小学1年生の女児が下校途中に行方不明となり、その後山林で遺体が発見されました。遺体にはナイフと推定される刃物による切り傷があり、失血死したものと考えられています
これが今市女児殺害事件です
被告として起訴された勝又拓哉被告について、2020年3月最高裁は上告を棄却し無期懲役とした判決が確定しています
日刊ゲンダイが勝又受刑者との千葉刑務所での面会の様子を記事にしていますので(初出は2022年7月掲載です)、一部を引用します
なお、記事は勝又受刑者は冤罪である、との見地から書かれたものだとお断りしておきます。記事からの引用後、冤罪説への疑問を書きます
「今市事件」服役中の勝又拓哉受刑者「『有希ちゃんを殺してごめんなさい』って50回言わされた」
(前略)
県警は、有希ちゃんが失踪した翌日の未明、勝又受刑者の車が宇都宮市内を行き来していたNシステムの記録などから疑いの目を向けていた。彼はこの別件での勾留中、今市事件の容疑を追及されて自白し、再逮捕された。
その後、彼は裁判で無実を訴えたが、20年に無期懲役刑が確定。この間、冤罪を疑う声が湧き上がったのは、客観的証拠が乏しく、有罪の根拠が事実上、自白のみだったためだ。
なぜ、自白したのか。改めて聞いてみると、彼は「刑事の取り調べがえぐかったからね」と言った。私はこの答えを聞き、彼が1審・宇都宮地裁の裁判員裁判で無期懲役判決を受けた時のことを思い出していた。
裁判員たちが彼の自白を信用した一番の要因は、録音録画された検事の取り調べで涙ながらに自白する映像だった。この1審判決の3日後、彼は宇都宮拘置支所の面会室で悔しそうに言った。
「僕は、録音録画されていなかった刑事の取り調べで『有希ちゃんを殺してごめんなさい』って50回言わされて、『検事に無実って言うなよ』って言われて、検事に無実だと言えなかったんだよね」
彼はこうも言った。
「刑事から『家族が責任とらされるぞ』とも言われたんだよね。それで、一緒に逮捕された母を早く外に出してあげたいと思ったんだよね」
S子さんは当時、重い病気を患っていた。母を心配する思いも自白した原因だったというのだ。
この時も面会に同行してくれていたS子さんは、彼に「誕生日なのに『おめでとう』と言えないね」としんみりと言っていた。この日は34歳の誕生日だった。
(中略)
■再審請求に高いハードル
冤罪を疑う声も支援者も多い彼は今後、再審を請求する意向だ。ただ、再審の実現には、「無罪とすべきことを明白にする新証拠」が必要だ。ハードルは高く、まだ再審請求のめどは立っていない。
もっとも、焦りはないようだ。
「時間はかかっても弁護士にはしっかりとした再審請求をして欲しいからね。証拠を一つも無駄にして欲しくないからね」
現在、刑務所での仕事は自動車の部品作りだそうだが、「うちの工場は一番売り上げがいいらしいんだよね」と楽しそうに言った。高卒認定試験にも挑戦中で、選択した8科目のうち、すでに数学と国語の試験では合格しているという。
(以下、略)
千葉刑務所は初めて刑務所に収監される若い受刑者で、長期刑の判決を受けた者を収監する施設です
省略した部分も含め、先に述べたように冤罪説を基調とした内容になっており、つまりは勝又受刑者にとって不都合な事実には触れられていません
この事件の捜査では、被害者の遺体に付着していたDNAが捜査関係者のものであったと判明しており、警察が遺体に素手で触れるなど杜撰な扱いをしていたとして批判を浴びています。そして犯行に使われたと推定されるナイフは未発見であり、被害者の衣服やランドセルも未発見です
山狩も含め、当時の捜査が入念に行われていたのかどうか、疑問が残ります
犯人のプロフィールと一致
ただし、勝又受刑者はナイフの収集癖があり、自宅から多数のナイフが発見されています(凶器として使用されたナイフに合致するものはなし)
また、パソコンからは多数の児童ポルノが発見されており、小児性愛者と推測されます。もちろん、小児性愛者だから殺人犯だと短絡的に決めつけるわけにはいきませんが、小児性愛者でない者が小学1年生の女児を殺害し、遺体を裸のまま放置するとは考えられません。学校帰りの小学生が大金を持っていたりはしないのですから
猫の毛
勝又受刑者の飼っていた猫と同じ種類の猫の毛が被害者の遺体に付着しており、これも有力な証拠と考えられます
きれいな目をしたお兄ちゃん
殺害された女児は友達に、「きれいな目をしたお兄ちゃんと会う」と言い残しています。勝又受刑者の特徴がこの「きれいな目」です。逮捕時の写真を見れば、顔の造作はともかく目が非常に特徴的であると誰もが認めるでしょう
車に猫を載せて女児を油断させ、連れ去ったのではないかと推測されるわけです
再審請求については本人の権利ですから、外野がとやかく言うものではありません。が、冤罪との説は大いに疑問です
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