「三島由紀夫はフロイトが嫌い」との記事
精神分析は自分のライフワークで、いまでも精神分析関連の著作をよく読みます
現代ビジネスのサイトに「三島由紀夫はフロイトが嫌いだった」と指摘した記事がありましたので、取り上げます
ただ、記事を繰り返し読んでみても何を言いたいのか掴みどころがなく、単なる居酒屋談義のようにも映ります。が、そうと斬り捨てたのでは記事に登場する方々、松浦寿輝は東大教授で評論家、記事本文では沼野義充と誤記されていますが正しくは充義で東大教授(スラブ文学研究)、田中純は東京大学教授(表象文化論)に失礼なので、自分なりに補足してみます
あの『ロリータ』の著者と三島由紀夫は、「フロイトぎらい」だった…そこから見えること
(前略)
私たちがそうした知識にふれるうえでいまもっとも便利な書物が、『徹底討議 二〇世紀の思想・文学・芸術』(松浦寿輝、沼野義充、田中純)、です。タイトルのとおり、圧倒的な実績を誇る3人の研究者が、20世紀のさまざまな思想や文化のあり方について徹底的に討議した様子をまとめたもので、つまみ食い的に読むだけで、多くの知識が得られます。
たとえば、19世紀から20世紀初頭といえば、フロイトが「無意識」について書いていた時代として知られます。その影響は後代にも及び、さまざまな反応を引き出します。たとえば、『ロリータ』の作者・ナボコフや三島由紀夫からは、精神分析やフロイトについてこんな反応をしています。
同書から抜粋します(一部、読みやすさのため編集しています)。
〈沼野 時代をちょっと先に進めると、フロイトの射程は後世のいろいろな文学に及んでいて、当然ナボコフの『ロリータ』などにも行きつくわけですが、ナボコフ当人はじつはフロイトが大嫌いだった。
松浦 ああ、そうですか。
沼野 フロイトが嫌いだという作家は他にも多いと思いますよ。なぜかと、おそらく分析されちゃうのが嫌だからなんです。文学研究におけるフロイト的な方法というのは、すごく低俗な形では、これはペニスの象徴だとか、この穴はなんだとか、そういうことをいくらでも言えるわけです。だから、やりすぎると、作品がズタズタになっちゃう。切れ味のいいメスみたいなもので、切り刻むのはいいけれども、切り刻んだ結果、何がわかったかというと、切り刻まれた作品の残骸しかない。もちろん切れ味のいいメスは必要なんですけれども……。
『ロリータ』のような作品は、性的欲望という観点からフロイト的分析は簡単にできそうですが、そんな単純なところに還元される作品を書いているつもりはナボコフにはなかったでしょう。ナボコフは、フロイトのことを「粗野で中世的なウィーンの呪い師(witch doctor)」だなんて罵倒しているくらいです。ナボコフはおそらくたやすく精神分析の餌食になってしまう危険は自覚していたのでしょうね。だからこそ切り刻まれたくないと思って、カムフラージュというか韜晦するようなことを言い続けたとも考えられます。
松浦 日本の作家でいうと、フロイトを嫌ったのは三島由紀夫ですね。「無意識というものは絶対におれにはないのだ」などと極端なことを、まあ冗談でしょうが安部公房との対談で言っている。知的な作家の場合、昏い無意識の奥処からこんこんと湧いてくるような謎めいた力などない、すべてを自分自身で意識的に統御しているんだ、と。そういう自信があったのでしょう〉
「自分では統御しにくいもの」に、人はどのように向き合う傾向があるのか。本書のごく一部の記述だけでも、大いに考えさせてくれるものがあります。
(引用、ここまで)
初期の精神分析による文芸批評
まず、フロイト自身、己の精神分析技法を用いてヴィルヘルム・イェンゼンによる小説「グラディーヴァ」の読解と分析を行った論文を発表しており、フロイト直系の弟子たち(マリー・ボナパルト、アーネスト・ジョーンズら)も文学作品の分析を行っています
ただ、この時代の精神分析理論を用いいた文芸批評がどこまで精緻なもので、論理的な妥当性があったかどうかは保留しておきます
むしろ、一般読者からは作家の内面(本人でも意識していなかった無意識世界)を暴露するものとして、下衆な勘ぐり、スキャンダラスなものと迎えられていた節もあるからです
ナボコフがフロイトを嫌ったのは、精神分析がこのように自分の内心にずかずかと入り込み、ああだこうだと勝手に決めつける無遠慮な手段、と思ったからでしょう。作家として自身の内心は誰にも踏み込まれたくない場、だと考えていたのかもしれません
ただ、この時代の精神分析理論を用いいた文芸批評がどこまで精緻なもので、論理的な妥当性があったかどうかは保留しておきます
むしろ、一般読者からは作家の内面(本人でも意識していなかった無意識世界)を暴露するものとして、下衆な勘ぐり、スキャンダラスなものと迎えられていた節もあるからです
ナボコフがフロイトを嫌ったのは、精神分析がこのように自分の内心にずかずかと入り込み、ああだこうだと勝手に決めつける無遠慮な手段、と思ったからでしょう。作家として自身の内心は誰にも踏み込まれたくない場、だと考えていたのかもしれません
三島由紀夫と精神分析
三島由紀夫は昭和22年に東京大学法学部を卒業しています。なので、大学時代の三島が精神分析について系統的に学んだ可能性は皆無です日本での精神分析学の普及は、昭和8年に古澤平作がオーストリアのウィーン精神分析研究所への留学から帰国後、小此木啓吾や土居健郎といった戦後に活躍する分析家を育てたところから始まります
ただ、大学で学術分野の1つとして精神分析が取り上げられるようになったのは戦後からです。戦前は、世を惑わすユダヤ人の怪しげな邪説扱いされ、古澤平作の家には特別高等警察の刑事が貼り付き、見張っていたのだとか。社会主義思想のように警戒されていたのでしょう
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/201609article_24.html
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ただ、大学で学術分野の1つとして精神分析が取り上げられるようになったのは戦後からです。戦前は、世を惑わすユダヤ人の怪しげな邪説扱いされ、古澤平作の家には特別高等警察の刑事が貼り付き、見張っていたのだとか。社会主義思想のように警戒されていたのでしょう
なので、三島が聞き齧った精神分析に関する情報は、戦後に得たものと推測されます
なぜ精神分析を嫌ったのか
上記の記事では直接的な原因には触れられていません。単に「俺には無意識などというものはない」と考え方の相違が原因だったとは考えられないのであり、もっと別の所にあったと推測されます
おそらく三島は精神分析により、自分が同性愛者だと露見するのを警戒し、恐れたから、というのが自分の仮説です
三島と同性愛については、「仮面の告白」が同性愛文学と指摘されたり、まだ十代の少年だった美輪明宏に惚れ込んだり、三島の愛人だった福島次郎が著書「三島由紀夫ー剣と寒梅」であけすけに書いていたりします。ただ、三島自身は精神分析という方法によって、己の同性愛衝動を理路整然と説明されるのが嫌だったのでしょう。「俺には無意識などというものはない」と口にしながら、心の内から湧き起こる同性愛衝動に翻弄され続け苦悩していたのでは?
誰もが心の内に秘めておきたいことはあるはずで、他人から嘴を突っ込まれたくないと思っているものです。肉体を鍛え、剣道に励み、いわゆるマッチョらしさを強調していた三島ですが、同性愛であることを負担に感じ、屈折した心情のまま生きていたのかもしれません。現代では同性愛に対する偏見も緩和されてはいますが、戦前生まれの三島にとって同性愛は変態と同義だったはずです
石原慎太郎は東京都知事時代、同性愛者を平然と変態呼ばわりしていました
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