韓国のノーベル文学賞候補 黄晳暎
今年のノーベル文学賞は誰が受賞するのかはともかく、候補者として名前が挙げられるくらいには知られている人物であるはずです
韓国では長く、詩人の高銀がノーベル文学賞候補として名前が取りざたされてきました。が、数々のセクシャルハラスメントを暴露され、受賞の可能性は皆無でしょう。代わって注目されているのが作家黄晳暎(81)です
1943年(昭和18年)に旧満州で生まれ、その後、韓国に移住しています
彼が注目を集めるようになったのは、世界的な文学賞であるブッカー賞の国際部門に作品がノミネートされたためです。残念ながら受賞には至りませんでしたが、世界に名を知られた作家として韓国メディアは大いに持ち上げています
1943年(昭和18年)に旧満州で生まれ、その後、韓国に移住しています
彼が注目を集めるようになったのは、世界的な文学賞であるブッカー賞の国際部門に作品がノミネートされたためです。残念ながら受賞には至りませんでしたが、世界に名を知られた作家として韓国メディアは大いに持ち上げています
「『黄晳暎(ファン・ソギョン)は近代の克服と受容を使命と考え、それについて語り死んだ人』、このように覚えてもらえればうれしいです」
小説家の黄晳暎(81)は長編小説『鉄道員三代』(原題、2020年)が2024年ブッカー賞国際部門最終候補に残ったことを契機に17日、ソウル麻浦区(マポグ)の総合出版会社「チャンビ」社屋で開かれた記者懇談会でこのように述べた。「今は変化の時期であり、方向を定めなければならない時だ。どちらに進むのか決めるには、その前に私たちがどこから来たのかを振り返らなくてはならない。そうした点で近代を語る小説に意味がある」としながらだ。
ブッカー賞はノーベル文学賞、フランスのゴンクール賞とあわせて世界3大文学賞に挙げられる。黄がブッカー賞最終候補になったのは今回が初めてだ。2019年小説『日が沈むころ』でブッカー賞国際部門1次候補(13人)には入ったが、最終候補(6人)には選ばれなかった。
黄はブッカー賞国際部門最終候補に残った所感を聞かれると「プレッシャーは感じるが、受賞できればうれしい」とし「中間で亡命して懲役を受け、10年余りの歳月を虚しく送った。(そのため)あと10年は活動しても構わないのではないかと思う」と話した。黄は1989年朝鮮文学芸術総同盟の招待で平壌(ピョンヤン)を訪問し、その後帰国できないまま海外を飛び回った。1993年帰国後、国家保安法違反で懲役暮らしを余儀なくされた。
『鉄道員三代』は2019年『マター2-10(Mater 2-10』というタイトルでECサイト「イエス24」が運営する出版等関連の情報メディア「チャンネルイエス」に連載された後、2020年に単行本でチャンビから出版された。小説はイ・ベクマン、イ・イルチョル、イ・ジサンにつながる鉄道労働者3代の叙事を通じて日帝強占期から現在まで続く労働者の人生をリアルに描いた。黄は1989年訪朝当時年老いた一人の人物との出会いからインスピレーションを得てこの小説を構想したと明らかにした。老人の父親は永登浦(ヨンドゥンポ)鉄道工作厰で働き、老人も日帝強占期には中国本土と韓半島(朝鮮半島)の間を機関車を走らせて行き来した。小説の背景になった永登浦は黄が幼年期を過ごしたところだ。
英文版のタイトルにもある『マター2-10』は日帝強占期の時に運行を開始して韓国戦争(朝鮮戦争)の時に爆破された山岳型機関車の名前だ。黄は「韓国戦争の時に平壌を行き来して軍需物資を運び、鉄原(チョルウォン)付近で爆破された。鉄道労働者3代を扱うのにぴったりの題名だと思った」と話した。
黄は自身の作品世界を定義する単語として「民話リアリズム」を挙げた。「民話は加減乗除(たし算、引き算、掛け算、割り算)で書かれた歴史の前段階で、民衆の日常が積み上げられて作られた物語」という説明を添えた。
(以下、略。中央日報の記事から引用)
ブッカー賞の国際部門には2020年に小川洋子、2022年には川上未映子、2024年に金井美恵子がそれぞれ候補としてエントリーされています。このように日本の女性作家が続けて候補に挙げられているのも興味深いのですが、本題から外れますので言及しません
話を戻して、ここ最近の「韓国文学が凄い」といった記事では1970年以降に生まれた作家が取り上げられ、新しい潮流として紹介されています。黄晳暎は戦前の生まれであり、日本でいえば大江健三郎辺りに近い世代です
ですから、最近の「韓国文学が凄い」で取り上げられる若い作家ではなく、黄晳暎ブッカー賞国際部門の候補に挙がったという事態が面白く、韓国国内での評価と国際的な評価のギャップが現れているように感じます
おそらくは韓国国内で「過去の人」扱いされ、その存在は埋もれた状態にあったのかもしれません。ただ、国際的な文学賞の候補に挙がるほど高い作家性を有していると、海外から評されていると知れば、韓国国内でも持ち上げる報道が増えるのでしょう
さて、今年ノーベル文学賞についてイギリスのブックメーカー(賭屋)「オッズペディア」は、村上春樹氏、残雪氏、ウリツカヤ氏、マーネイン氏とあわせて米国作家トマス・ピンチョン氏(86)の受賞の可能性を高くみている、と別の報道では伝えています
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