佐世保高1女子殺害事件を考える18 なぜ防げなかったか
2014年7月、佐世保北高校の1年生だった女子生徒が、同じクラスの女子生徒を自宅に誘い入れ、用意していたハンマーで殴打。さらに紐で首を絞めて殺害した後、遺体の一部を切断したとして逮捕されました
医療少年院に送致された女性は約10年ほど収容され、少年法の定める上限の26歳に達したため、出院しています
26歳になっていますので匿名の少女Aではなく、徳勝もなみ、と本名で記述します
この事件については当ブログで継続的に取り上げ、今回が18回目の言及です
「なぜこのような事件が起きてしまったのか、防げなかったのか」という疑問への答えを自分なりに考え、記述します
早期から発現していた問題行動を見過ごした
徳勝もなみは高校1年生になっていきなり殺人に走ったわけではなく、小学生の時に他の生徒の給食に洗剤を混入させる事件を4回起こしています。これだけで十分に異常であり、「何かおかしいのではないか」と思う事案です
しかし、徳勝もなみの母親が被害を受けた児童宅を回り、土下座して謝罪したことで不問にされ、佐世保市教育委員会も「特段、問題があるとは思わなかった」と指導対象にはしていません。おそらく児童相談所に通報しても、これを緊急に対応すべき事案とは受け止めなかったと思われます(過去、佐世保市内の小学生が女子児童の首をカッターナイフで切りつけ、殺害する事件が学校内で起きているのですが、それでも徳勝もなみの異常行動を問題だと思わない学校、教育委員会に愕然とします)
ですから、「なぜこのようなじけんが起きしてしまったのか。防げなかったのか」との問いに対しては、最初に異常な行動が見られた時点でしっかり対応せず、見過ごしてしまっているところに最大の問題があると言わざるを得ません
徳勝もなみは長崎県立佐世保北中学校を受験し、合格しています。ここは公立の中高一貫教育校で、作家村上龍の出身校でもあります
猫の殺害・解体
次に、徳勝もなみについて、「猫を殺し、解体している」との噂が立ちます。単なる噂ではなく、実際に猫を捕まえては自宅ガレージ内で殺害し、解体していたのです
小動物の虐待・殺害・解体という行動が、後に殺人事件へと至るのを、私達は神戸連続児童殺傷事件で経験しています。しかし、徳勝もなみの異常行動はまたしても見過ごされてしまいます。実際に徳勝家の周辺、ガレージ内で猫の死体が発見されていたのですが
その後、彼女は人間の体を解体してみたい、との欲望をたぎらせるようになります
母親の死・父親の再婚
徳勝もなみが中学3年になった時、母親は膵臓がんで死去しています。ちなみに母親は東大出身で、父親は早稲田大出身で弁護士です
母親が亡くなった直後から父親は婚活パーティに参加するなどし、再婚に向けて動きます
その結果、母親の死を受け入れきれないでいる娘との間に感情的な対立が激しくなり、徳勝もなみは就寝中に父親を金属バットで殴打する事態に至ります。が、これも警察に被害届を出して事件化するような対処はされず、家庭内で処理されます
すなわち、徳勝もなみは父方の祖母と養子縁組をし、父親の戸籍から抜けています。事実上、親子の縁を切った形です
この当時、父親の同僚である弁護士が彼女と話をしており、「父の再婚に賛成だ。私も新しいお母さんができて嬉しい」と本人の口から聞いたと述べています。ただ、本人が口にしたからそれが本音だと決めつけるのは、あまりに短絡的な考えでしょう
ざっと振り返っても、徳勝もなみの異常行動はいくつもあり、その時点で「この子はおかしい」と気づくべきでした
しかし、周囲の大人たちが異常行動・問題行動を見て見ぬフリを続けた結果、殺人にまで至ってしまったのです
「なぜ防げなかったか」と問う以前に、なぜ異常だと思わなかったのかと問わなければなりません
ちなみに、事件の直前に徳勝もなみを診断した精神科医は、「この子はすぐにでも人を殺すかもしれない」とその殺人衝動を問題視し、児童相談所に通報したのですが、児童相談所はこの通報を無視します(後日、児童相談所長らが懲戒処分を受けています)
このように事件を防ぐべく行動する立場にある大人たちが、安直に異常行動・事件の前兆を見過ごしたり無視した結果、事件が起きてしまったわけです
つまりは「事件を防ごうという気持ちがなかった」と言い換えてもよいのでしょう
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