全米に1万箇所 ゲイ矯正施設に収容された少年
アメリカは性の開放が進んでいる国、とのイメージを抱く人もいると思います。が、アメリア全土を見れば保守的な考えが根強く、特に同性愛者には根強い偏見があります
中でも男性の同性愛者は、アメリカ人男性の抱く「マッチョな男」の対極にあると見なされ、学校や職場で侮蔑の対象になったりします
Newsweekの記事が、アメリカにはゲイの男性を矯正しようという民間の収容施設が1万箇所もあると書いていますので、取り上げます
日本ではしばしば引きこもりの男性や女性を有無を言わさず連れ出され、民間の矯正施設に押し込めるビジネスが事件になります。あれと同じように、親がゲイである息子を施設に依頼して収容し(監禁し)、同性愛から離脱させようと試みるのでしょう。それにしても、アメリカ各地に1万もの施設がある状況には驚かされます
「僕は真夜中に拉致されゲイ矯正施設に送られた」
15歳だったある日の真夜中、僕は2人の見知らぬ男たちに誘拐された。
恐ろしくて抵抗などできなかった。僕は飛行機に乗せられアメリカ大陸の反対側に連れて行かれ、10カ月後に脱出するまで監禁状態に置かれた。
あの日のことは忘れられない。2人の男の車は真っ黒に舗装された道を走った。行き先など分からない。窓からは煙のようにたなびく雲がかかったユタ州の山々が見えた。
たどり着いた先には、並んで立つ細長い2つの建物があった。「エレベーションズRTC」という表札が出ていて、焼けつく日差しの下でも暗い影をまとっていた。
僕は灰色の廊下を文字どおり引きずっていかれた。洋服は脱げて床に落ち、ヒリヒリと痛む肌に冷たい水が染みた。僕は裸で床に崩れ落ちた。内側から煮えたぎる怒りが噴き出してきた。3日間、僕はひたすら泣き続けた。
最悪だったのは、金を出してこんなことをさせていたのが僕の父親だったことだ。両親が離婚した後、僕は父に引き取られていた。とてもつらい日々だった。
あの頃ちょうど僕は、本当の自分を理解し、受け入れられるようになっていた。そして今後はゲイであることを公表して自分らしく生きたい、母と一緒に暮らしたいと父に話した矢先の出来事だった。
エレベーションズは営利目的で運営されている民間の矯正施設だ。問題を抱えたティーンエージャーの社会復帰を支援するとうたっているが、実際には金を払う人間の言うがままらしい。
担当のセラピストによれば、僕がここに送り込まれたのは父の期待に背いたからだった。
何カ月もの間、僕は施設の廊下を当てもなく歩き回った。監禁されていることにも施設の雰囲気にも息が詰まりそうだった。日記帳に僕は、旅する探検家が主人公の物語を書いた。物語の世界に入りたいと心底思った。
10カ月後に僕はようやく、母とラビ(ユダヤ教の聖職者)と弁護士のおかげで施設を出ることができた。
被害者の声を届けたい
同様の施設で、同じような目に遭った(遭っている)人は僕以外にもたくさんいる。「ストップ制度的児童虐待」という団体によれば、こうした施設に入れられている未成年者は全米で12万~20万人もいるという。
今年に入り、僕はエレベーションズと担当セラピスト、そして父に対し、僕が受けた虐待と苦痛への損害賠償を求める訴訟を起こした。
裁判所や議員たち、そして一般の人々に問題を知ってもらうことも目的の1つだ。またこれは、今も施設にいる多くの未成年者や、施設によって生涯にわたる傷を負わされた人々に代わり、僕が起こさなければならない行動だった。
こうした施設に入所させられた人々の間では、鬱や薬物依存になったり、虐待したりされたりする人間関係に陥ったり、果ては自殺するといった事例が非常に多いといわれる。全米に1万カ所以上あるといわれるこうした施設への規制強化を求めて、僕たちは力を合わせなければならない。
僕は18歳になり、この秋からはカリフォルニア州の大学に通う。1年前には考えられなかったことだ。声なき人々の代わりに声を上げ、社会に貢献する力を付けたいと思っている。僕は未来に向けて前進していく。
(Newsweekの記事から引用)
親の意向だとしても、本人が拒絶しているのに民間施設に監禁するのはアメリカでも違法なはずです。なので、こうした施設を運営するのはリスクを承知でビジネスをする連中か、あるいは宗教的な理由から同性愛を敵視する教会なのでしょう
アメリカのトランプ元大統領を支持する層の多くは「福音派」と呼ばれるプロテスタント教会の信者であり、「福音派」は同性愛に対し厳しい姿勢を維持しています。中には、「神の教えを正しく理解したなら、同性愛者などにはならない」=「同性愛者は神の教えに背く者」といった過激な主張を展開する保守的な教会もあったりします
当ブログでも以前に紹介したように、「カードキャプターさくら」や「セーラームーン」に見られる同性愛を示唆する表現はアメリカの放送コード違反となり、カットされます。こどもたちに同性愛をほのめかすようなアニメを見せてはいけない、と本気で考えているのです
ただ、このような過剰と言うべき(当のアメリカ人たちは同性愛を嫌悪するのは当然と考えているわけですが)反応は、同性愛恐怖によるものだと精神分析では考えます
「自分が同性愛者だったらどうしよう、困ったことになる」との思いが、同性愛をことさら敵視し、遠ざけようとする行動になって現れるのだ、と
ですから、同性愛者の矯正を目的とした施設でも、同性愛者に体罰を加え、徹底的に侮蔑し、同性愛を敵視する思想に同調するよう迫る…ものと想像します。暴力と脅し以外に同性愛から転向させる方法などありません
そんな地獄のような施設に10万人を超えるティーンエイジャーが現在も監禁されているという事実に、アメリカ社会の闇を見た気がします
言うまでもありませんが、同性愛が敵視されるアメリカ社会で10代の娘がBLマンガに夢中になっていると親が知れば、家族会議の上、BLマンガはすべて没収され廃棄処分でしょう。さらに親からクドクドと説教をされ、場合によっては上記のような矯正施設行きになるかもしれません
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