フワちゃんと発達障害

タレントのフワちゃんが芸人やす子のSNSに「おまえは偉くないので、 死んでくださーい 予選敗退でーす」と書き込んだとして、炎上騒動になっています。以前にも書いたように、フワちゃんの奔放な発言や突拍子もない行動は発達障害(その中でも注意欠陥多動障害)と見られるのであり、彼女に説教をかませば行動が改まる…という次元の話ではありません
おそらく小学校の頃から注意欠陥多動障害特有の衝動性が目立っていたと思われ、その部分を是正するための訓練を根気よく継続していればある程度は改善されたはずです。そのかわり、テレビで見せる彼女のトリッキーな面白さは消えてしまったはずです
社会適応を考えるのであれば、やはりこどもの頃から適切な訓練を受け、衝動性をコントロールする方法を身に着けた方がベターでしょう
注意欠陥多動障害の治療にはリタリン、あるいはコンサータという中枢神経刺激剤が効果的だとされています。が、投薬については専門外なので、これ以上は書きません。ただ、治療の可能性がある先天性の障害だと理解してください
以下、デイリー新潮がフワちゃんの問題を発達障害臨床の専門家である昭和大学病院の岩波明医師に投げかけ、見解を引き出していますので引用します


やす子に「犯罪級」の暴言で大炎上 フワちゃんの数々の問題行動についてADHD専門外来医師の見解を聞いてみた
(前略)
《小学校のとき、抜けた歯を誰よりも高く投げたくて体育倉庫の上までよじ登ったり、ホッカイロの中身が砂鉄だって聞いて、それを確かめたくて全校集会の最中にホッカイロを切り刻んで磁石で実験してみたりして。そんなもんだから、お母さんが学校によく呼び出されてた》
《学生時代の私は相変わらず変だったけど、友達も多かったし運動もできたから、悩みごとも無く楽しく過ごしてたんだ。でも年を重ねていくにつれて、なんだか自分の“浮いてる”部分が如実に出てきて、周りもみるみる大人になって、いよいよいつまでも楽観的ではいられなくなってきた》
《大学は3限からでも遅刻しちゃうし、何回やってもバイトはクビ。夢を叶えるために入った芸能事務所もお偉いさんに中指立てて解雇! 》
インタビュー記事から、ADHDの特徴の一つである衝動性が子供の頃からあったことが分かる。
「他の精神疾患と同様に、『なぜADHDの患者さんは忘れ物や遅刻、衝動的な言動が多いのか』という原因については、はっきりと分かっていません。ただ、ADHDには治療薬があり、その効き方から考えて、脳の神経伝達物質の機能障害であろうと推測されています。ただし推測止まりで、それ以上のメカニズムについては解明されていないのです。ADHDの患者さんに関する臨床例が積み重なったことで、忘れ物や遅刻が多いという共通点が明らかになったわけです」(同・岩波氏)
ADHDの武器
意外に思う人もいるかもしれないが、ADHDの患者が良好な人間関係を構築する人は少なくない。フワちゃんがインタビューで《友達も多かった》と振り返ったことと合致する。
「ADHDの方は、いわゆる“ファーストタッチ”が上手です。初対面の人でも、すっと入っていける。だから営業職を得意にする人も多いのです。しかし、悪意がないとはいえ、率直すぎる発言が多いという特徴もあります。これが好感を持たれる場合もありますが、裏目に出ることも珍しくありません。例えば、私の患者さんで、重要な会議で上司がプレゼンを行ったのですが、その際に明らかな間違いがあった。すると部下だった患者さんは、『そこは違います』と滔々と弁じてしまいました」(同・岩波氏)
もちろん悪意は微塵もない。単に間違いを指摘しただけだ。とはいえ、上司の面目は丸潰れになった。その後、上司は査定の際、彼に対して常に低い評価を与え、悩んだ部下は岩波氏の診察を受け、自身がADHDだと理解したという。
「ADHDの患者さんは『空気を読めない』という指摘を目にすることもありますが、これは正確ではありません。空気を読めないのはASDの患者さんです。ADHDの患者さんは空気が読めるのですが、『読まない』のです。空気を読むより前に、頭に浮かんだことを衝動的に口にしてしまう。会社員なら大変なトラブルに発展することもありますが、お笑い芸人には武器になり得ます。フワちゃんの奔放な発言は話題を呼び、賛否両論の議論を巻き起こしています。こう考えると、ADHDの患者さんは芸能界向きと言えるかもしれません」(同・岩波氏)
(以下、略)


当ブログでも岩波医師の見解をしばしば引用させてもらっています
以前にも書いたように、発達障害を抱える人物が芸人としてタレントとして仕事をし、収入を得るのも1つの生き方ですから、頭ごなしに否定するのは間違いだと考えます。もちろん人気商売ですから、ウケるかウケないかは世間一般が決めるべきであり、「障害を抱えているのだから失礼な言動があっても大目に見ろ」などと言うつもりはありません
自分には彼女の芸、パフォーマンスのどこが面白いのか、さっぱり判らないのですが、今回の炎上騒動は賞味期限切れが近いがゆえ、という気もします。いわゆる一発屋のタレントのごとく、持て囃されはしても飽きられ、支持されなくなるのはよくあるケースです
そして上記の記事でも岩波医師が延べているように、治療によって注意欠陥多動障害の特徴を除外したらフワちゃんがフワちゃんでなくなるのであり、つまらない存在になるだけです
それはタレントとしての存在価値を損なう結果でしかなく、フワちゃん自身望まないでしょう
もちろん、現下の炎上状態のまま芸能活動を継続させるのも難しいわけで、つまりは「テレビでは使いにくいタレント」となり、いずれはテレビから消えるのでしょう
いずれにせよ、芸能界で長期間に渡って活動するのは難しく、賞味期限が来てしまったと言うほかなさそうです

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