児童相談所一時保護児童を連れ去った両親に有罪判決
読売新聞社に勤務する男性とその妻が、児童相談所に一時保護されていたこどもを連れ去ったとして未成年者略取などの罪で起訴されていた事件の判決が神戸地裁であり、この夫婦にそれぞれ執行猶予付き有罪判決が言い渡されています
一時保護されていた娘が幼稚園の卒園式に出席する機会を狙い、連れ去ったもので、こどもに付き添っていた児童相談所職員に打撲の怪我を負わせており、その部分についても公務執行妨害の罪に問われています
児童相談所に一時保護された長女を奪い返したとして、未成年者略取などの罪に問われた30代の父親と母親に対する公判が6月14日にありました。公判では、検察側は「悪質性が高く一時保護の実行性が阻害される」とし、父親に懲役2年、母親に懲役1年6月を求刑し結審した。弁護側は執行猶予を求めました。
被告人質問で父親は、長女に帰ってきてほしいという気持ちを優先した、奪い返す行為は合法だと信じ込んでしまったと述べています。
両親が実の娘を家に連れて帰ったことが、なぜ犯罪になるのか、少し違和感を覚えたかと思います。
未成年者略取という言葉はあまり聞き馴染みがないでしょうが、子供やその保護者などの意思に反して暴行や脅迫を用いて子供を支配下に置く行為をいいます。
児童相談所が行う一時保護では、いったんは児童相談所が保護者的な立ち位置になるため、児童相談所の意思に反して子供を連れ去るような行為は、たとえそれが実の両親が行ったものであったとしても、保護者などの意思に反して子供を自身の支配下に置く行為になるため、未成年者略取罪に該当することになるのです。
今回の事件では、両親に子供への虐待の疑いがあり、子供を守るためにいったん両親から児童相談所が子供を一時保護していた中での連れ去り行為であるので、特に悪質なものであると考えられます。
(日刊ゲンダイの記事から引用)
兵庫県内の児童相談所が一時保護していた妻の連れ子を連れ去ったとして、未成年者略取や公務執行妨害などの罪に問われた読売新聞社員の男とその妻に対する判決公判が18日、神戸地裁で開かれた。松田道別裁判官は「悪質な犯行」として、男に懲役2年、執行猶予3年(求刑懲役2年)、妻に懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)の有罪判決を言い渡した。
判決によると、夫婦は今年3月、兵庫県西宮市内の幼稚園で卒園式に出席していた当時6歳だった一時保護中の子供をタクシーに乗せて連れ去り、制止しようとした児相職員に暴行を加え、打撲などのけがをさせた。
松田裁判官は「一時保護制度の根幹を揺るがしかねない悪質な犯行」と指弾した。さらに、計画的で園児や保護者らがいる中で行われた大胆な犯行と指摘。男が主導し、児相職員に対し暴行を加えてまで子供を連れ去るなど、その責任は妻よりも重いと断罪した。
一方、夫婦とも反省の態度を示しているなどとして、執行猶予付き判決が相当と判断した。
読売新聞大阪本社法務・広報部は「本社社員が有罪判決を受けたことは誠に遺憾。判決を重く受け止め、厳正に対処する」とコメントした。
(産経新聞の記事から引用)
こどもが一時保護となった経緯が書かれていませんので、そこはよく判りません。おそらく家庭内で両親から虐待を受けているのではないか、との通報が寄せられ、児童相談所がしかるべく手続きをして一時保護としたのでしょう
児童相談所の一時保護については、親権者が不服申立てをすることができます
児童相談所の決定に対する不服申立てについて
この夫婦のように児童相談所との話し合いに喧嘩腰で臨み、一時保護を拒絶し、家庭での虐待も否認する保護者の場合、法律上の手続きを踏んで不服申立てをしたりせず、こどもを実力行使で奪い返そうとするのでしょう(親として当然の権利、だと主張しそうです)
こうした実力行使は児童保護制度を真っ向から否定するものですから、本件判決のように有罪と認定されます
児童相談所の職員が骨折などの負傷があれば、執行猶予なしの実刑判決で服役するところだったと思われます
「こどもを取り戻したかった」と主張しても通用しませんし、美談にもなりません
世の中には「児童相談所相手なら何を言っても良い。こちらが強く出れば児童相談所は引っ込むはず」と思っている人がいるのが事実で、親が非協力的なケースが多いのでしょう
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