日本アニメ「ルックバック」 上海国際映画祭で激賞
夏休みに向け、今年も多くの劇場版アニメーションが公開されます
その中で注目したいのが藤本タツキの漫画を原作として制作された「ルックバック」です
日本での公開に先立ち上海国際映画祭で上映され、観客から激賞されたと報じられています。巨大ロボや忍者も呪術師も登場しないアニメーション作品ですが、中国の観客の心を鷲掴みにしたようです。これが日本の漫画の、アニメーションの底力なのだろうと思い、取り上げます
6月14日から開かれた第26回上海国際映画祭で製作国日本に先行して上映された劇場アニメ「ルックバック」に、中国の観客から続々と5つ星(満点)レビューが投稿されている。(本記事はネタバレを含みます)
「ルックバック」は、藤本タツキ氏の漫画が原作。小学4年生の主人公・藤野は、学年新聞で4コマ漫画を連載しており、同級生や家族から絶賛されていたが、ある日不登校の同級生・京本の4コマ漫画が連載されると、周囲の称賛は京本に向けられ、藤野は漫画を描くことを諦めてしまう。すると、教師から卒業証書を届けるよう頼まれた藤野は、初対面の京本に「ずっとファンだった」と告げられ、一緒に漫画を描くことに。
しかし時が流れ、高校卒業後に進路が分かれると、すべてを打ち砕く事件が起きる。
この事件をきっかけに枝分かれした2人の人生を描く。
中国のドラマ・映画の情報サイト・豆瓣電影(douban)には、同作品を鑑賞した複数の中国のネットユーザーがレビューコメントを投稿。
「藤野…あなた(が主人公)の映画はやっぱり素晴らしい!」
「驚くほど良かったです。見ている一瞬一瞬が幸福でした」
「短いながらも、改編のリズムが素晴らしかったです。称賛される藤野が雨中で興奮して手足が同時に動くシーンが大好きでした」
「上海国際映画祭に感謝します!『ルックバック』を見ることができるなんて思ってもみませんでした。漫画は3つ星ですが、アニメは5つ星です。絵コンテと音楽が本当に美しすぎました」
などと、好評価が相次いだ。
また、
「映画館内はすすり泣きの声で満たされていました」
「作画が美しすぎて、とても特別な鑑賞体験でした。音楽が流れるたびに目が潤みました」
「原作を読んでいてよかったです。でなければ、ティッシュ一箱を使い切っていたでしょう」
「4コマ漫画のエッセンスを見事に活用した劇場アニメ。劇場内はすすり泣きの声でいっぱいで、京都アニメーションの事件を思い出した私は、涙をこらえるのに必死でした(涙を抑えるあまり、頭皮がしびれるほどでした)」
「原作に劣らない表現力で、全編を涙ぐみながら見終えました。現場の雰囲気も素晴らしく、上映終了後の拍手も印象的でした。このような素晴らしい作品が生まれたことに感謝し、生きていて本当によかったと思います」
などと、映画の演出や物語に涙を流したとのコメントも多く寄せられていた。
(レコードチャイナの記事から引用)
劇場アニメ「ルックバック」本予告
原作漫画は143ページの読み切り中編です。原作の評価も非常に高く、中でもプロの漫画家が称賛と嫉妬を表明している(こんな作品を自分が描きたかった…)のも特徴の1つです。メディア「Real Sound」掲載の記事では以下のように評されています
『ルックバック』が与える“衝撃”の核に迫る 藤本タツキという傑出した“個人”の等身大の姿
この漫画作品は、発表当時に『少年ジャンプ+』上で全編無料公開され、その鮮烈な内容が評判を呼んだ。SNSでは同業者の驚嘆の声、嫉妬の念を隠さない称賛も目立ち、「トレンド」表示されるなど注目が集まった。それほどに漫画『ルックバック』は人々の心をつかみ、作者・藤本タツキの類まれな才能を広く印象づけたのである。その状況はまさに、作中の主人公である女子小学生の藤野が、同学年の京本が描いた絵を目の当たりにした衝撃にも似ていたのかもしれない。
その『ルックバック』が、同じタイトル、ほぼ同じストーリーで、アニメーション映画化され、公開が始まった。劇場には観客がつめかけ評価も上々、海外のアニメファンからもラブコールが続いている状況だ。ここでは、そんなアニメーション映画『ルックバック』と、原作漫画『ルックバック』の内容を通して、観る者に何が衝撃を与えるのか、その核には何があるのかを考えていきたい。
作品の大まかな内容は、漫画界の重鎮・藤子不二雄の自伝的な漫画『まんが道』(作・藤子不二雄A)が描いた、漫画家コンビのサクセスストーリーの現代版を思わせるものだ。『まんが道』の物語は、漫画を描くのが好きな小学生の主人公・満賀道雄(まが・みちお)が、凄まじい才能を持つと感じる才野茂(さいの・しげる)と運命の出会いをすることで動き出す。
それと同様に『ルックバック』も、お互いがその才能に驚嘆し認め合い、ともに協力して漫画作品を描くようになる藤野・京本が成長していく姿が描かれていく。とはいえ、クライマックスでは打って変わり、藤本タツキらしい衝撃的な展開と、現実から飛躍した創造力に溢れる描写が用意されているのも、この作品の特徴ではある。
社交的で何でもこなせる器用な藤野にとって、一見、漫画は特技の一つでしかないようである。しかし、冒頭の場面で夜中必死に作業をしている描写から分かるように、彼女はじつは漫画に熱心に打ち込んでいる小学生なのだ。それだけに、同学年に段違いの画力を持つ京本という存在がいることを知り、藤野は強い対抗心を燃やすようになる。対して京本は、学校に行かずに引きこもって絵をひたすら描く生活をしていて、創造力を用いて魅力的なネタを漫画に落とし込んでいる藤本の才能に憧れを持っていた。
嫉妬心や劣等感を京本におぼえていた藤野だったが、初めて対面した京本が自分を認め賞賛してくれたことに、密かに驚き喜ぶ。普段は周囲を意識してクールに振る舞う藤野が、天にも昇る心地で田んぼが広がる通学路を、一人ぎこちなくスキップする場面には、心揺さぶられるものがある。映画版ではこのシーンを、右手右足を一緒に出すような格好で何度も飛び跳ねさせることで、原作漫画に描かれた感情を見事に映像化している。
(以下、略)
漫画に魅せられ漫画家を目指した少年少女たちが、今一度自身の体験をなぞるような感覚をこの作品から憶えるのかもしれません
そうした青春の夢や情熱、嫉妬のにがさなど、丁寧に描ききった作品なのでしょう
昨今、漫画を原作としたテレビドラマでは、原作クラッシャーと呼ばれる脚本家やディレクターが原作の良さをズタボロにし、無惨なドラマに仕上げる風潮が目につきます。テレビ業界の驕りがそうさせているのでしょう(「ほら、こうした方が原作より面白いでしょ?」という思い上がりです)
その結果、ドラマの視聴者は減り、かつてのように視聴率30%を超えるような作品は誕生しなくなりました。「漫画よりテレビの方が偉い」というテレビ業界の変なプライドが駄作を量産している、と言うよりもはや駄作しか生み出せなくなっているのかもしれません。それだけ脚本家や演出家、ディレクターの質が低下しているのでしょう
なので、くれぐれも「ルックバック」のテレビドラマ化など止めてもらいたいものです。主人公を無理やり男子と女子に改変し、男子にはジャニーズの俳優を起用して…と原作の良さをことごとく粉砕するようなドラマにするのでしょうから
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