男女中学生の強盗致死事件 少年院送致不服で抗告

大阪で中学生の男女が男子大学生を誘い出し、美人局のパターンで恫喝し金を取ろとしたものの、大学生が逃げようとしてビルから転落死した事件の続報です
この犯行に加担していた女子中学生は大阪家裁で少年院送致決定を受けたのですが、決定を不服として抗告の申し立てをしていました。大阪高裁は抗告を棄却したと報じられています


今年2月、男子大学生が美人局(つつもたせ)の手口で脅され、ビルから転落死した事件。大阪家庭裁判所は犯行に加わった14歳少女について少年院送致を決定し、少女側は不服として大阪高裁に抗告していましたが、高裁は6月25日付けで抗告を棄却しました。
大阪府に住む14歳の少女は、当時13歳の少年(大阪府警が児童相談所に通告)とともに今年2月、美人局の手口で男子大学生(当時22)を大阪市内のビルに誘い込み、現金を出すよう脅した末に転落死させたとして、監禁致死の非行内容で大阪家裁に送致されました。
大阪家裁は今年4月、少女らが大学生をビル内で追い込んだ行為と、大学生が脱出しようとして転落死したことの因果関係を認め、少女には監禁致死罪が成立すると判断。
「少年(当時13)の犯行計画に同調し、被害者をビルに誘い出すなど重要な役割を果たしている。美人局を手口とした恐喝の常習性も認められる」と指弾し、少女を少年院に送る保護処分を決めました。
少女側は、この家裁の決定を不服として大阪高裁に抗告していましたが、高裁は6月25日付けで抗告を棄却しました。
この事件では少女のほかに、15歳の少年も大阪家裁に送致されましが、家裁は「監禁の故意があったとは認められない」として、監禁致死罪は成立しないと判断。刑事裁判の無罪にあたる「不処分」を決定しています。
(MBSニュースの記事から引用)


簡単な記事ですし、抗告の趣旨が判然としないので少年院送致の何が不服なのか不明です
少年院や少年鑑別所に勤務していた際の自分の経験を元に、一般論として抗告申し立てについて書きます
少年院送致決定を受けた少年が抗告する理由としては、少年院送致決定という処分が重すぎる=自分は少年院に入れられるほど悪いことはしていない、と受け止め不服を申し立てるケースが多かったというのが自分の実感です
犯罪事実の認定を理由に、自分がやっていない犯行で犯人にされたと不服を申し立てるケースは滅多にありません。成人の刑事裁判では事実認定で争うケースが多いのですが(殺意を持って殺したのか、暴行を加えた結果死なせてしまったのかで量刑が違ってきます)、そこが少年事件とは大きく異なります
実務的な説明すると、家庭裁判所の決定に対しては、少年は一定期間内に抗告を申し立てることができます。これは本人の権利ですから、少年鑑別所の法務教官が「抗告しても無駄だから止めておけ」とか、「抗告するな」などと教唆することはありません。弁護士がついていなくても、本人が抗告を申し立てると言えば、紙とペンを与えます。本人なりに抗告する理由などを書面にすれば、その内容が稚拙なものであろうと申立書は受理されます
書面は家庭裁判所経由で高裁に送られ、高裁の裁判官がこれを審議した上で結論を下します。抗告を棄却した場合、その決定書が本人宛てに送付されます
抗告申し立ては保護処分の執行を差し止めるものではありませんので、少年の身柄は少年院に送られます。抗告すれば少年院に行かずに済む、と考えている少年がいたりするのですが、そこは少年鑑別所できちんと説明します。なお、家庭裁判所は少年院送致の決定を下すのですが、どこの施設に送致するかは少年鑑別所が決めます。この女子中学生は大阪府交野市にある交野女子学院に収容されているのでしょう

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