大口病院不審死 控訴審も久保木被告に無期懲役

高齢者の入院する病院で点滴薬に消毒用の薬剤を混入させ、3人の入院患者を殺害したとして起訴された看護師久保木愛弓被告は1審で無期懲役判決を受けています。検察側、弁護側ともこの判決を不服として控訴していました
弁護側は1審で、久保木被告が犯行時にうつ病を発症し、統合失調症の前兆症状の可能性があったとする起訴後の精神鑑定を基に、心神耗弱状態にあったと主張し、減刑を求めていました
他方で、久保木被告は捜査段階で入院患者20人ほどに消毒薬を点滴し殺害した、と供述していましたが、後に否認に転じています。高齢の入院患者が多く、亡くなるケースもしばしばで十分な病理解剖などしておらず、火葬されているため検察が立件できたのは3人の殺害のみです
起訴されていない殺人について裁判官は裁くことができません。なので、久保木被告はあくまで3人の殺害についてのみ、罪を問われた形です


横浜市の旧大口病院で3人の入院患者が中毒死した事件。殺人などの罪に問われていた病院の元看護師の控訴審で、東京高裁は無期懲役とした一審判決を支持し、検察側と弁護側双方の控訴を棄却しました。
この裁判は2016年9月、横浜市神奈川区の旧大口病院で、入院患者だった男女3人の点滴袋などに消毒液を混入して殺害したとして、病院の元看護師、久保木愛弓被告が殺人の罪に問われたほか、同じ時期に未使用の点滴袋5個に消毒液を混入したとして、殺人予備の罪にも問われていたものです。
一審の横浜地裁は、久保木被告の完全責任能力を認定した一方で、「更生の可能性が認められる」として検察側が死刑を求刑したのに対し、無期懲役の判決を言い渡していました。
記者:「久保木被告は上下黒のスーツ姿で落ち着いた様子で裁判長の言葉に耳を傾けていました」
東京高裁の三浦透裁判長は、「被告人の罪責は誠に重大であり本件は死刑の選択が十分に考えられる事案である」と指摘。
一方で、「他人の生命を奪うこと自体を積極的に望んで行った犯行などとは、やや異なる側面があったということができ、被告人に再犯の恐れが高いとまでいうことはできない」などとし、「更生を歩ませるのが相当であるとした原判決の量刑判断が不合理であるということはできない」として、無期懲役とした一審判決を支持し、検察側と弁護側双方の控訴を棄却しました。
判決を受け、殺害された西川惣蔵さんの遺族は、「判決では犯人の更生可能性や罪と向き合わせるという言葉が何度もありましたが、それは一体誰のためになるのか、何のための更生なのか、遺族の気持ちは考えられていないのではないかと感じました。 仕事や体調に悩みを抱えることは誰にでもあることで、そのことが死刑を回避する理由になるとは考えられません。 今回の判決によって、裁判の場で反省の言葉を述べさえすれば、死刑を免れることができるかのように受け取られてしまうのではないかと感じました」とコメントを出しました。
また、興津朝江さんの82歳の弟は「姉さんを返せるものなら返して欲しいです。 もうすぐ退院だったのに殺すことはないと思います」とコメントを出しました。
(テレビ神奈川の記事から引用)


本来なら20人もの入院患者を殺害した重大事件であり、無期懲役判決というのは何とも受け入れがたいところです
ただ、冒頭で述べたように起訴されていない殺人の罪を問うわけにはいきません
それでも「無期懲役刑で更生をさせるのが相当である」との1審判決は辻褄合わせというか、久保木被告を死刑にしないための方便、という気がしてなりません。そもそも久保木被告が真摯に反省しているのかさえ不明です
当ブログでも取り上げた1審判決は久保木被告が自閉スペクトラム症(さまざまな発達障害の症状の総称)である点をことさら強調し、であるから死刑にはできないとこじつける内容でした。3人を殺害してもなお死刑を回避するため、裁判官が苦心して作文している感ありあり、です
今回の東京高裁の判決もその1審判決を支持するもので、無期懲役とした1審の判断を妥当としています
ここまで久保木被告に死刑判決を言い渡せない理由、事情、背景というものを自分はさっぱり理解できません。久保木被告がさまざまな発達障害の症状を抱え、看護師として勤務するのが大変だったという事実は認めるものの、だからといって入院患者を殺害する理由にはなりません
この裁判は結局、「3人殺害しても死刑にはしない」という悪しき判例を残しただけなのでは?
3人の入院患者が久保木被告に悪さをしたわけでもなく、恨まれることをしたのでもありません。にも関わらず、点滴に消毒薬を混入され、苦しみながら死んでいったのです。そして起訴されなかった17人の殺害、の重みも考えずにはいられません
果たして久保木被告は反省し、更生できるのかも不明なままです。裁判官が更生を期待するのは勝手ですが

(関連記事)
大口病院不審死 無期懲役判決への疑問と批判
大口病院不審死 3人殺害しても無期懲役判決
大口病院不審死 死刑求刑
大口病院不審死 久保木被告の精神鑑定結果(その2)
大口病院不審死 久保木被告の精神鑑定結果
大口病院不審死 久保木被告は心神耗弱だったのか?
大口病院不審死 公判で久保木被告が犯行認める
大口病院不審死 20人殺害と語る久保木愛弓の裁判は
大口病院不審死 初公判は10月の予定
大口病院不審死 久保木被告起訴も公判はまだ
大口病院不審死 3人殺害で久保木容疑者起訴へ
大口病院不審死 元看護師が48人殺害か
横浜病院点滴殺人 内部犯行の可能性
古河介護施設殺人 別件の殺人で赤間容疑者再逮捕
古河介護施設殺人 赤間容疑者は盗みの常習犯
古河介護施設殺人 赤間容疑者逮捕
岐阜の老人施設で5人死傷 連続殺人として立件へ
岐阜の老人施設で5人死傷 元職員を逮捕
岐阜の老人施設で5人死傷 連続殺人の可能性も
「黒い看護師」殺人の吉田純子 死刑執行
看護師4人による保険金殺人事件を考える2 同性愛
看護師4人による保険金殺人事件を考える
老人ホーム睡眠薬殺人 准看護師に懲役24年判決
老人ホーム3人転落死 今井被告に死刑判決
老人ホーム3人転落死 管理会社の見苦しい釈明