新宿ストーカー殺人 男子教育不在が歪んだ自意識を生む?

新宿のタワーマンション前で女性を刺殺し逮捕された、和久井学容疑者(51)についてさまざまな報道がされています
が、そこからちょっと離れて、51歳男性の生き方、在り方というものについて考えます
「日刊SPA!」に記事を掲載している石黒隆之というライターが、男性教育不在がこの事件を生んだと指摘していますので、取り上げます


<新宿タワマン刺殺事件>51歳男が20代女性に…和久井容疑者の“客観性のなさ”を育んだ「日本特有の問題点」
新宿タワマン刺殺事件の和久井学容疑者、そして頂き少女りりちゃんこと渡辺真衣被告に騙されたおぢ達。中年弱者男性にまつわる事件がクローズアップされています。なぜ娘ほども年の離れた女性に熱を上げてしまうのでしょうか?
フリーライターの西谷格氏は、そうした男性を「自分を客観視できない残念な人」と切り捨て、こう続けています。
<いい歳をした大人が、親子ほど歳の離れた人間を恋愛感情込みで推す感情は、本来ちょっと恥ずかしいと捉えるべきではなかろうか。>(「新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由」ニューズウィーク日本版 2024年5月10日配信)
筆者も西谷氏と同意見です。ネット上では男性を中心に、ずる賢く金品をせびる女性への批判が多くあがっていますが、むしろそこで怪しいと感じるセンサーが働かない男性側のほうが深刻なのではないでしょうか。それこそが、西谷氏の言う客観性の欠如だからです。
問題の根源は「幼少期からの刷り込み」
しかしながら、これを中年男性だけの問題とすることにもためらいを感じます。なぜなら、男は物心ついたころから仕事で成功し、稼ぎ、いい女と付き合うことがゴールだと教えられてきているからです。
そこで、仕事も先が見えてきた、給料もこれ以上上がりそうもない。そんな自分にもいい女と付き合えそうなチャンスが転がり込んできたら、どうでしょう? その穴を埋めてなけなしのプライドを保とうと考えても全く不思議ではありません。
こうした罠にハマってしまう根源には、“モテ”があるのではないでしょうか。このモテなければという強迫観念が客観性を失わせ、年齢なりの余裕、良い意味での諦めを失わせてしまう。それが幼少期から刷り込まれていたとしたら病巣は根深いと言えるでしょう。
だから、これは中年の弱者男性に限らず、むしろ男性全般における問題なのですね。
(中略)
日本に「男性向けの教科書」がない理由
筆者は『ハピかわ』を読んで、これは紳士の心得そのものではないかと思いました。アメリカでロングセラーの『HOW TO BE A GENTLEMAN』という本があります。2022年には改訂版の日本語訳『ドアはあけたらおさえましょう』(ジョン・ブリッジズ 訳酒井章文 サンマーク出版)が発売されました。コンセプトは全く『ハピかわ』と同じです。
<大事なのは、まわりの人が気兼ねなくいられるようにすること、嘘偽りなく、心からすてきな人物でいることだ。>(p.4)
<紳士の目標とは、自分のためではなく、友人や知人、そして世界全体のために、その場を暮らしやすくすることなのだ。>(p.267)
こうして言葉遣い、テーブルマナー、メールの返信の仕方、会釈の大切さなどを、あらゆるシチュエーションを想定して説いている本です。
なぜ日本にはこのような男性向けの教科書がないのか。あったにしても、なぜモテ要素が入ってきてしまうのか。
そこに闇を感じるのですね。
(以下、略)


中間で引用を省略した部分では、女子小学生向けムック『自分をもっと好きになる【ハピかわ】かわいいのルール』(池田書店)が、いま20~40代の男性に売れていると言及し、その理由についてつらつらと書いています
つまり女の子にとって、おしゃれのセンスもあり、友達とも良好な関係を持つ「キラキラしている女の子」であることが重要であり、そうなるためのノウハウを伝授する本に大人の男性が群がり、ノウハウを吸収しようとしているのだ、と石黒氏は説明します
日本にはこうした理想とする男の子になるための教育が欠如しており、その結果、和久井容疑者のように自分を客観視できない大人ができあがると…と石黒氏は問題提起しているわけです
ただ、これはあまりに乱暴な論旨です
男性向け教科書は不在?
かつては青年向け雑誌の黄金期があり、「週刊プレイボーイ」や「Hot-Dog PRESS」、「POPEYE」など青年雑誌で「いかに女性にモテるか」、「デート術」、「仕事がスマートにこますノウハウ」など、毎号のように掲載していたものです。もちろん、和久井容疑者はそうした青年誌など見向きもせず、バイク雑誌など読みふけっていたのでしょう
和久井容疑者にとって客観視できる自画像というのは、「バイク好きのオレ」であり、「バイクを乗り回しているオレ」なのでしょう。そんな自分に満足し、それ以外の自分の姿など思い描けなかったのでは?
結局、18~20歳のバイク小僧がそのまま大人になった人物、なのかもしれません
そんな和久井容疑者が男性向け教科書を手にするはずがないのであり、男性向け教科書不在が主たる問題ではないのは明らかです
かつてマンガなら「課長島耕作」のシリーズが「サラリーマンのバイブル」と呼ばれ、立身出世を夢見るサラリーマンのあるべき姿のようにもてはやされています。あるいは自己啓発本が書店の一角を占めており、年間ベストセラーに登場した本も少なくありません。なので、男性向け教科書が日本になかった、とする石黒氏の指摘は誤りです
自分を客観視できるのか
また、上記の記事では和久井容疑者が自分を客観視できていない、と指摘しそれ以上の考察はありません
自分自身、長く生きてきて自分を客観視する機会など滅多にありませんし、客観視できているとの自覚も自負もありません。「これくらいなら許されるだろう」と家族に甘え、職場に甘え、好き勝手をしてきた人間だったかもしれない、と今になって思います
また、事件を考えるなら「客観視できている」・「できていない」というレベルで判断するのではなく、自己洞察がどこまで深いレベルでできているのか、あるいは現実検討能力が備わっているのか、などより細かな判断を加える必要があると考えます
自分の経験ばかり語るのはあれですが、少年鑑別所で資質鑑別結果通知書を作成する上で、「この少年は自分を客観視できていない」と書いたら上司からどやされ、書き直しを命じられるのは確実です
何が欠けていて、どうしてそうなったのかを明らかにする(文章化する)のが仕事ですから、「客観視できない理由・原因」を指摘しないと話になりません
なので、石黒氏のこの記事は書き直しを命じられ、「おまえ、何年この仕事やってるんだ」と言われるほどひどい内容です
インターネット上に、石黒氏の仕事に物申す記事がありましたので貼っておきます

石黒隆之という(自称)音楽評論家
https://udukiyuto-official.hatenablog.com/entry/2020/04/23/084802

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