大阪カラオケパブ殺人 被害弁済は600万円のみ

大阪・天満でカラオケパブを経営していた稲田真優子さん(当時25)を殺害したとして懲役20年の刑が確定し、宮本浩志受刑者は現在服役しています。遺族は宮本受刑者に対し、2980万円の損害賠償を請求していました。しかし、宮本受刑者は刑の確定前に妻に対して財産分与を行い、住居であったマンションを売り払って現金化し、そのほとんどを妻に与えたようで、稲田さんの遺族に支払われたのは600万円に過ぎなかったと報じられています
この事件について当ブログではあれこれ書いてきたところですが、妻が離婚を請求するとともに財産分与を求め、宮本受刑者の資産のほとんどを持って行く展開は予想されたところです。離婚に伴う妻への財産分与は合法な手続きですから、稲田さんの遺族側は宮本受刑者の妻に対し、賠償を請求することはできません


(前略)
心を踏みにじられた雄介さんら家族。雄介さんは宮本受刑者に対して「損害賠償命令制度」でやり場のない怒りへの償いを求めます。この制度は刑事裁判の有罪判決後に、手続きに関与した裁判官のもとで審理が行われるものです。裁判所は宮本受刑者に約2980万円の賠償を命じました。
(中略)
加害者に命じられるも賠償は全額支払われず
加害者に対して「許せない」。そんな思いを抱く中、受刑者に命じられた賠償金も全額、支払われていないと言います。
(稲田雄介さん)「損害賠償は2980万円と大きな金額をもらえた判決だったが、実際に判決が出てから約2年弱経つのですが、実際に払われているのは600万円のみでした」
賠償命令制度は刑事裁判の有罪判決確定後でないと実施できない制度です。そのため、遺族自身が相手の資力や資産などを調べるにもすぐには動けない現状についても話が及びました。
(稲田雄介さん)「まずはすぐに動けない、殺人事件の場合ですと裁判まで1年以上期間を要しますし、事実認定を要するまでに1年半はかかってしまう。いくら相手を恨めしい、憎いと思っても事実認定をされたあとでなければ、責任や賠償を求めることができない。相手に時間を与えてしまうということです」
『損害賠償で何とか少しでも償いをしてもらいたい』そう思っていた稲田さんが相手の資力などを調べると、口座にはわずかな金額しか残っていなかったということです。
(稲田雄介さん)「相手は持ち家がありましたが、1年半という期間があくと、その間に家を手放し、配偶者への財産分与もなされていた状態でした。そして口座には931円しか残っていませんでした。その931円が償いなのかなと。分相応ではないのかなと、憎みたくない人間でも憎んでしまうんですよね、今の制度ではどうしても」
(以下、略。MBSニュースの記事から引用)


宮本受刑者の心情は不明ですが、おそらく稲田真優子さんへの復讐という気持ちを捨てきれず、遺族に対し賠償金を全額支払う気などさらさらなかったのでは?
稲田さんの遺族が真優子さんを大切に思っているのを理解した上で、その気持を踏みにじってやろうという悪意すら感じます
どこまでも恨みつらみで心を真っ黒にした殺人犯、という印象しかありません
ただ、殺人や強盗殺人の被害に遭った遺族が犯人からまともな賠償を受けられるケースはほとんどなく、被害者遺族側の泣き寝入りという実態があります。犯人側に賠償するだけの資産がないためです
たとえ犯人の親や兄弟に十分な資産があったとしても、犯人に替わって賠償する責任はないのですから、支払おうとはしません
ならば、「国が賠償を肩代わりすべきではないか」との意見もあるのですが、結局は国の金=国民の納めた税金ですから、犯罪者の不始末のため税金を使われるのは納得できないとの声が出ます
刑務作業の位置づけ
刑務所では受刑者を刑務作業に従事させ、作業賞与金が支払われる仕組みです。しかし、刑務作業はあくまでも刑罰であって労働ではないというのが監獄法(現在は法律改正がされ、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律)の規定です。なので、作業賞与金は労働の対価としての賃金ではなく、あくまで「ご褒美」という意味です。令和3年度で月平均4516円が支給されており、これでは賠償金に充てるのに不十分です
ならばもっと付加価値の高い刑務作業を実施し、受刑者により多くの賞与金を給付するべきなのでしょうか?
刑務作業には職業訓練という側面もあります。あるいは民業を圧迫してはならない、との考えもあります。刑務所が低賃金で作業を請け負ったなら、民間企業が割を食うから民業と競合するのは避けるべきだ、と
また、アメリカの刑務所のように、「奴隷労働をさせてはならない」との考えがあって、受刑者は仕事をせず筋トレをしたり喧嘩をしたりで無為に時間を過ごしています。日本の刑務所の「作業に従事させる」との考えは、奴隷労働を強制するものとしてアメリカでは受け入れられません。ですから日本の刑務作業は人権侵害として国際世論から批判を受ける危うさを孕んでいるのです。さらに刑務所による強制労働で作られた商品は、アメリカでは輸入禁止扱いになっています
このように、日本では良かれとされる刑務作業ですが、諸外国からすると人権を無視した奴隷動労と解釈され、忌み嫌われる面があると理解しておく必要があります(アメリカの一部の刑務所では、職業訓練は奴隷労働ではないとして実施されています)
このようにさまざまな問題がありますので、受刑者による損害賠償の実施について国民も政府も与野党も、もっと本腰を入れて議論しないと、いつまでたっても解決策が出来上がらないのが現状です

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