教師によるいじめ 自殺した係長遺族が賠償を勝ち取る

2019年、世間の耳目を集めたのが神戸市立東須磨小学校での教員間によるいじめ事件です。激辛カレーを目にぬりつけ、その様子を笑いながら携帯電話で撮影する…などの行為が繰り返されたものです
当時の女性校長は更迭され、教育委員会で事務をする職務をあてがわれ、主犯格とされた男性教諭2人が懲戒免職処分、女帝とあだ名された黒幕の女性教諭はなぜか懲戒免職にならず停職3か月、そのパシリとされた男性教諭は減給3か月になっています。この2人の教諭も教育委員会付きとして異動となり、教壇には立っていません
が、刑事処分としてはそれぞれ不起訴となっています
そしてこの東須磨小学校事件を担当した神戸市教育委員会の係長が投身自殺をしており、彼1人に過剰な業務が押し付けられたのではないか、との疑念が残りました
報道はされていませんが、おそらく校長・教員らの処分を巡って校長OBなど、教育関係者からさまざまな圧力があったものと推測されます
事件の背後にあった「神戸方式」と称される人事慣行について、当ブログでも前に言及したところですが、この「神戸方式」が自殺に至るほどの軋轢を生み出した元凶と考えられます


2020年に神戸市教育委員会事務局の男性職員が自殺したのは、前年に発覚した市立東須磨小学校の教員間暴行・暴言問題への対応による長時間労働や精神的負荷で生じた精神疾患などが原因だったとして、兵庫県内に住む男性の妻ら遺族3人が市に約1億3800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が16日、神戸地裁(島岡大雄裁判長)で言い渡された。「産業医への診察を受けさせるなどの義務を怠った」などとして市の安全配慮義務違反を認め、約1億2千万円の支払いを命じた。
原告側代理人弁護士が明らかにした判決などによると、男性は19年4月に初めて同事務局に異動し、教育委員との窓口として連絡調整を担当していた。教員間暴行・暴言が社会問題化した同10月の時間外勤務は月92時間を超え、20年1月に精神疾患を発症し、同年2月に自殺したとされる。
判決理由では、問題を巡る第三者委員会への資料提供の漏れが起きた際、不信感を抱いた教育委員が男性らに苦情のメールを送っていたことなどが述べられ、「窓口である職員が責任を感じるのは無理からぬことで、強い精神的負荷があった」と説明した。
また、公務災害認定に関する調査では、教育委員と同事務局上層部の間で「板挟みだった」と別の職員から回答があったとした。
市側の「考え得る限りの対応を尽くしていた」などの訴えは「職員の負荷の強さや睡眠薬を飲んでいる旨の申告を踏まえた対応として十分といえない」などと退けた。
男性の妻は「市の責任を認めていただき、夫の無念を晴らすことができたと思う。二度とこのようなことが起こらないように、職員の健康管理の徹底を願う」とコメントした。
市教委は「職員が亡くなったことは大変無念。裁判については、当方の主張が認められなかったことは誠に残念で、判決文を精査し適切に対応したい」としている。
(神戸新聞の記事から引用)


前提として、市の行政組織から説明します
市長をトップとする市の行政組織とはまったく別に教育委員会が存在しており、いわば独立した形です。市長が教育行政や教員人事に介入できないようするため、戦後の行政改革で教育委員会を設置し独立性を高めたのです
よって、本件の損害賠償請求訴訟でも神戸市を相手取っていますが、問題を起こしたのは神戸市教育委員会です。神戸市側としては教育委員会内での不適切な労務管理など、まったくタッチしていなかったわけですし、介入もできない仕組みになっていました
つまりは当時の教育委員会事務局長らが不適切な労務管理をしていたのであり、彼らの責任です。しかし、予算上は神戸市が損害賠償金を支払う格好になります
そこで「神戸方式」の問題が浮上します
「神戸方式」とは神戸市立の公立学校の校長が部下となる教員を選別する仕組みで、校長に実質的な人事権を与えるものです。お気に入りの教員を部下として自分の勤務校に集め、気に入らない部下は他校へ飛ばす仕組みです
これによって東須磨小学校では更迭された女性校長の前任者で、「ヒトラー」と呼ばれた男性校長が上記のいじめ事件を起こした教員を配下として招き入れ、インフォーマルグループを形成させたのです
一部のメディアの報道で「神戸方式」が批判されたため、「神戸方式」を維持したい校長や校長OBが教育委員会に圧力をかけてきたのでしょう
結果として、担当係長が板挟みとなり、心労が極限に達する状態に追い込まれ自殺に至ったと考えられます
神戸市教育委員会が事件後もなお、「神戸方式」を維持しているのかどうか確認できていないので不明です。が、人事の公平・公正を歪めるものであり、廃止するのが妥当でしょう

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