新宿ストーカー殺人 09年の「耳かき」店殺人そっくり?
何か世間の関心を惹く事件があると、「〇〇事件と同じだ」など言い出す人がいます。未成年者による殺人事件の場合、「神戸連続児童殺傷事件と同じだ」とか「酒鬼薔薇聖斗そっくりだ」などと
ただ、事件の外見や形態が似ているからとしても、犯人の性格や資質、生い立ちまでが同じというケースはありません。この「◯◯事件と同じ」と決めつける方法は、かえって事件の相違点に目をつぶってしまい、事件の意味を履き違える結果になりかねません。なので、当ブログでも極力、「◯◯事件と同じ」など決めつけるのは避けるようにしています
ところがデイリー新潮の記事では、新宿タワーマンションでのストーカー殺人について、2009年に起きた「耳かき店員殺害事件」とそっくりだと書いており、「なんだかなー」と思ってしまいます
デイリー新潮の記事の前半部分を以下、引用します。「耳かき店員殺害事件」と同じだと主張している部分は割愛します
〈新宿・タワマン“メッタ刺し”殺人事件〉 「不気味なほど似ている…」取材記者の間で話題にのぼる「裁判員裁判初の死刑求刑事件」との“類似点”
事件が起きたのは5月8日の午前3時過ぎ。西新宿のタワーマンション前で和久井学容疑者(51)が帰宅した平沢俊乃さん(25)を果物ナイフで襲い、刺殺したのだ。
「刺し傷は平沢さんの首や腹を中心に数十カ所に及び、所持していた2本の果物ナイフのうち1本は刃が折れていました。和久井容疑者は逮捕後の取り調べで『体を傷だらけにしてやろうと思った』と話し、犯行前夜から数時間、待ち伏せしていたことも判明。現場に向かったのは『(平沢さんが経営する)ガールズバーを応援するために出した1000万円以上のお金を返してもらうため』だったと供述しています」(全国紙社会部記者)
2人の出会いは約4年前。当時、平沢さんは上野界隈でガールズバーを経営しており、同店に客として和久井容疑者が訪れたのがキッカケだった。
「2人は共通の“推し(アイドル)”の話などで盛り上がり、和久井容疑者は以降“常連客”となりますが、2021年12月、平沢さんが『店の客にしつこく言い寄られたり、待ち伏せされたりする』と110番通報。この時、警察は和久井容疑者を口頭で注意しますが、実はその直前、容疑者は愛車とバイクを売却して多額のお金を捻出していました」(同)
2度の通報と逮捕
和久井容疑者は21年11月と12月、「16年間大事にしてきたバイク」と「20年9か月乗った車(ホンダNSX)」を手放したことを自身のSNSで報告。警察への供述でも「(平沢さんに渡した)1000万円以上のお金は車やバイクを売るなどして工面したものだった」と話しているという。
「借金なども含めれば、和久井容疑者は平沢さんに2000万円前後を提供したとされます。容疑者の父親によれば、“結婚する気があるなら、お金を持ってきて”と平沢さんから言われたことが理由で、車やバイクの売却は結婚に備えてのものだったとか。ところが、お金を工面した途端に平沢さんに110番通報され、22年4月に2回目の通報を受けた翌5月、和久井容疑者はストーカー規制法違反で逮捕されます」(同)
(以下、略。デイリー新潮の記事から引用)
「耳かき店員殺害事件」については、当ブログでも取り上げていますので、下記の関連記事を参照していただければ幸いです
そちらの事件報道でも、刃物を所持して女性宅に押しかけ、当時21歳の女性と78歳の祖母の2人を惨殺した林受刑者に記者がなぜか奇妙な同情を寄せ、孤独な四十男の哀れな末路風といった記事が散見されました
記者が林受刑者にすっかり肩入れしてしまい、同情溢れる記事になっており違和感を覚えたものです。裁判員裁判導入後、初めて死刑が求刑された事件だったのですが、裁判員たちも林受刑者に同情したためか、犯行の凄惨さは置き去りにして無期懲役の判決となりました
記者が林受刑者にすっかり肩入れしてしまい、同情溢れる記事になっており違和感を覚えたものです。裁判員裁判導入後、初めて死刑が求刑された事件だったのですが、裁判員たちも林受刑者に同情したためか、犯行の凄惨さは置き去りにして無期懲役の判決となりました
犯行の残忍さ、執拗さ、計画性などなど考慮すれば、2人を殺害していることを含め死刑判決が妥当な事件だったと今でも思います
差異の体系
構造主義の考え方としては、世の中はあの人とこの人の違い、あの物とその物の違い、考え方それぞれの違いといった、差異によって形成されていると考えます。つまりさまざまな差異の体系として世の中がある、と考えます
なので、あの事件とこの事件は同じだと決めつけ、数少ない共通点を数え上げるやり方は非情に狭小なモノの捉え方と言わざるを得ません
本件ストーカー殺人を2009年の事件と「同じ」と断定するなら、その事件の背景同じで容疑者の思考、判断も同じで、動機も同じだと先例踏襲で決めつけることになってしまい、これは思考停止状態です
人はまったく未知の出来事、未経験の事態に遭遇すると困惑してしまうため、先例の「あれと同じ」と考えることで安心し、そこに安住しようとします。これでは進歩も発見もなく、思考の飛躍も起こりません
むしろ、過去の事件との違いにこそ着目し、なぜ違いが生じたかを考え、新たな仮説を構築することこそ、思考の飛躍をもたらします
週刊新潮の記者はあの事件とこの事件は同じだ、似ていると判断し、それ以上事件の本質、意味を考えようとはしていないのでしょう
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