日本版「性犯罪者データベース」改正案まとまる

教員や保育士と言った児童と接する職場に性犯罪の前科を持つ者が紛れ込まないよう、性犯罪歴をチェックできる仕組みの導入が検討されていました。警察や検察庁は犯罪者のデータベースを独自に運用しているのですが、それをそのまま民間の用途に公開するわけにもいかず、新た仕組みを作って運用しようというのが「こども性暴力防止法案」です
昨年も国会に法案を提出する寸前まで行ったのですが、あれこれと問題点が指摘されたため法案を再度検討する扱いとなっていました


政府は19日、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を照会できるシステムの導入を柱とした「こども性暴力防止法案」を閣議決定した。学校や保育所、国の認定を受けた民間事業者などに、犯歴の確認のほか、性暴力を防ぐための研修など日常的な安全確保措置を義務付ける。今通常国会での成立を目指している。
性犯罪歴の確認は、英国の制度を参考に「日本版DBS」とも呼ばれる。採用時に性犯罪歴を照会し、確認された場合は、子どもに直接関わる業務につかせないなどの措置を講じなければならない。現職の教員や職員の犯歴についても照会を義務付ける。
照会できる期間は刑の執行終了後、拘禁刑(懲役刑・禁錮刑を2025年に一本化)なら20年間、罰金刑以下なら10年間とした。拘禁刑で執行猶予の場合は、裁判確定日から10年となる。不同意わいせつ罪などの刑法犯に加え、痴漢など自治体が定める条例違反も照会できる。
照会システムはこども家庭庁が構築する。事業者が申請し、求職者ら本人は戸籍情報を提出する。こども家庭庁は法相に照会し、犯歴がない場合はその旨が事業者に通知される。
犯歴がある場合は、本人に事前に告知され、2週間以内に内定辞退などをすれば、事業者に結果は通知されない。辞退しない場合は、犯歴があることを示す「犯罪事実確認書」が事業者に交付される。情報漏えいをした事業者には罰則を設ける。
安全確保措置は、性犯罪の約9割を占める初犯を防ぐことが狙い。教員や職員らの研修、危険を早期に把握するための子どもとの面談などに加え、被害が疑われる場合の調査を課す。
塾や学童クラブなど子どもを対象とするサービスを提供する民間事業者は、子どもを守る体制が確保されていると国が判断した場合に認定を受けられる。認定事業者は国が公表し、保護者らに選ばれやすくなると想定されている。
(毎日新聞の記事から引用)


罰金刑の場合(痴漢など)、性犯罪者データベースで確認できるのは10年間、というのはちょっと短すぎる気もします。が、これまでに性犯罪歴をチェックする機能がなかっただけに、今回の性犯罪歴確認の手段ができたのは一歩も二歩も前進だと思います
自分が法務省の矯正施設に勤務していた際、新規採用予定者については「警察照会」という手続きがあり、採用予定者が居住する地域の所轄署に「照会」をかけて前科・前歴がないことを確認していました。これは法務省側からの照会に警察が応じるよう、警察庁との間で交わした合意が根拠となっています
なので、教員採用にあたっても都道府県の人事担当者と警察との間で前科・前歴を照会する取り決めが存在するはず、と思っていました。が、性犯罪の前科がある人物がノーチェックでそのまま採用となっている事実を知り、大いに驚いたものです
さて、今回の性犯罪照会は現職の教員や保育士も対象になると記事にはあります。つまり性犯罪歴を隠して採用され勤務を続けている人物もあぶり出されるわけで、その際の対応が問題になります。いきなり解雇するのでしょうか?
履歴書に前科を書かなかったのは経歴詐称に該当するため、本人が責任を問われるのは当然ですし、解雇理由にもなります
ただ、教師として8年、9年勤務している中堅どころの性犯罪歴を、わざわざ調べるのでしょうか?教育委員会には教員の処分にきわめて消極的な、同業者としてのもたれ合い体質がります。なので新採用時には犯歴照会をするとしても、既に職についている教師に関しては照会せず、制度が空疎化する懸念も残ります

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