男女中学生の強盗致死事件 強盗致死は成立しない?
大阪の中学生による強盗致死事件について、フリーキャスターの辛坊治郎がテレビ番組内で「死刑か無期懲役しかない。14歳だから死刑はないけど」と発言しています
別段、「厳罰にするべき」と煽る意図はなく、それくらい重大な犯罪だと言いたかったのでしょう。しかし、一部では「無期懲役にすべき」との意見が飛び交うなど、煽られてしまった人々が出たのも事実です
先日も書いたように、当初の報道では「大阪府警が強盗致死容疑で逮捕した」とあったものの、その後は「恐喝と暴行の疑いで取り調べている」とトーンダウしています
フリーキャスターの辛坊治郎氏(67)が7日、関西テレビの情報番組「旬感LIVEとれたてっ!」に出演。大阪で起こった女子中学生ら3人が、男子大学生を転落死させた強盗致死事件について言及した。
今年2月に男子大学生(当時22歳)と女子中学生(14歳)がSNSで知り合いとなった。この女子中学生とともに犯行を企てた13歳と15歳の男子中学生が、男子大学生を大阪・中央区のビルに呼び出し脅迫。その際、隣のビルの屋上に飛び移って、逃げようとしたが転落。全身を強く打って死亡した。警察は美人局とみて余罪も含めて捜査している。
お笑いコンビ「メッセンジャー」の黒田有は「逮捕される中学生がたくさんいましたけど、美人局って知識を得てるってことに対して、凶悪って言葉だけで済ませられるのか」とコメント。
辛坊氏は「そういう知識は持っていても、強盗というのが、どれくらい重い罪かという認識はないんですよ。逃げようとして死んでしまったことについての責任を問われることになります。強盗してなかったら、死なずに済んだでしょ」とあきれた。
続けて「強盗致死というのは、強盗殺人と一緒なんです。成人の場合は、基本的に死刑か無期懲役しかない罪。14歳ですから死刑は絶対にないですけど、それくらい重い罪なんだということを同時に認識しないと」と指摘した。
(東スポWebの記事から引用)
辛抱キャスターは重罪であるとの事実を指摘し、逮捕された中学生たちに罪を自覚するよう求めているだけで、「極刑にしろ」とか「無期懲役にしろ」と主張しているわけではありません
ただ、この事件の報道についてYahooニュースのコメント欄を見れば、「少年法を廃止して無期懲役にすべきだ」などの意見が多数寄せられています
弁護士ドットコムでは、「強盗致死罪」がそもそも成立しないと解説しています。ここからは刑法上のテクニカルな話なので、一般の方は関心がないのかもしれません。が、自分の関心事ですから一部を引用しておきます
●2つの争点「そもそも強盗なのか」「因果関係の有無」
──今回の事件は強盗致死罪が成立するのでしょうか。
大きく2つの点で、強盗致死罪が成立しない可能性があります。
1つ目は、そもそも強盗といえるだけの暴行、脅迫があったといえるかです。強盗には、被害者を反抗できないくらいにするレベルの暴行・脅迫が必要です。
たとえば、少年らが大学生にした行為が、仮に「俺の彼女に手を出しやがって。金をよこせ」と言葉だけで詰め寄ったくらいだったとすれば、強盗には到底ならないでしょう。
今回の事件は、そもそも強盗にならない可能性も否定できません。 2つ目は、強盗致死罪が成立するためには、強盗犯の行為と死亡との間に因果関係が必要です。
先ほど挙げた例のように、強盗犯の金品強取の手段である暴行によって被害者が死亡したというケースなら、強盗犯の行為と死亡との間に因果関係が認められます。
他方で、今回の事件は、現段階の報道の限りでは、少年らが金品を奪うために何をしたのかという点について、脅迫したということ以外の詳細が明らかになっていません。
たとえば、少年らがナイフを示して脅したなどの行為があり、大学生が今すぐ逃げないと殺されるなどと思って飛び移った際に転落したなどの事情があれば、少年らの行為と大学生の死亡との間の因果関係が肯定される余地がありますが、こうした事情すらなければ、強盗致死罪が成立しないことも考えられます。
参考になる判例として、被害者が、被告人の暴行から逃れようとした途中で高速道路に進入したため、車にひかれて死亡したという事案を紹介します(最高裁平成15年7月16日決定)。
最高裁は、高速への進入行為が「それ自体極めて危険な行為である」と指摘した上で、それでもなお「被害者は、被告人らから長時間激しくかつ執ような暴行を受け、極度の恐怖感を抱き、必死に逃走を図る過程で、とっさにそのような行動を選択したものと認められる」としました。
そのため、被害者の行動は「被告人らの暴行から逃れる方法として、著しく不自然、不相当であったとはいえない」と判断し、「被害者が高速道路に進入して死亡したのは、被告人らの暴行に起因するものと評価することができる」として因果関係を肯定しました。
今回の被害者が隣のビルへ飛び移った行為自体もかなり危険な行為と評価される可能性はありますが、その上でもなお、少年らとの前後のやりとりや、隣のビル以外の逃げ場所の有無などの事情によって、因果関係の有無が左右されることを示す一例といえます。
(弁護士ドットコムの記事から一部引用)
本件で被害者がビルから飛び降りたのも、暴行から逃れる目的ですから相当の因果関係が認められます。なので、「被害者が勝手に飛び降りた。自分たちは関係ない」との主張は裁判で通用しません
なお、逮捕された女子中学生はこれまでにも同じ手口で金を脅し取る犯行をしていた、と自供しています。ですから黙秘したり、否認しても無駄であり、犯人として処罰されるのを覚悟する必要があります。「オレはやってない。ここから出せ」と留置場で暴れても出してはくれません
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