男女中学生の強盗致死事件 刑事罰を科すべきか
昨日取り上げた大阪の男女中学生3人が大学生から金を脅し取ろうとしてビルから転落死させた事件の続きです
今朝のNHKニュースでは逮捕容疑が強盗致死ではなく、暴行と恐喝の疑いとなっていました。ただ、逮捕状を取るためどの罪名(犯罪容疑)に該当するかという話なので、この段階で起訴すべき罪名が決定するわけではありません。最終的には検察が強盗致死事件とするのか、暴行及び恐喝事件とするのか決定します
さて昨日、この事件が報道されたのを受け、インターネットのニュースサイトは「厳罰にすべき」とか、「少年法を廃止せよ」との声が溢れました。また、メディアも有識者による厳罰論を掲載していたりします
14歳の女子中学生と15歳の男子中学生の2人が、強盗致死容疑で大阪府警に逮捕された。各社の報道によると、中学生は2月12日、22歳の大学生の男性から金品を奪おうと大阪市のビルに誘い出したところ、男性は逃げようとして転落死した。
現場には、少女と同じ中学校の当時13歳の少年もいて、こちらは児童相談所に通告されている。取り調べに対し、少女は容疑を認め、15歳の少年は容疑を一部否認しているという。
警察は、事件の直前、少女と大学生が行動をともにしていたことから、いわゆる「美人局(つつもたせ)」の可能性があると見て、経緯を調べている。
報道を受け、ネットニュースのコメント欄には、少年法への疑問をはじめ、さまざまな意見が寄せられ、大荒れとなっている。
《最近の未成年は私達が想像しているよりも大人びていると思います》
《犯罪の低年齢化、悪質性が酷くなっている。ネットなどで知識だけはつくけど、それに対する様々な事迄は考えてないと思われる》
《もう少年法は一桁年齢までで良いんじゃないかな?》
《悪知恵だけはあるんだろうね。悪法少年法を盾に実名すら出ないから何でも出来ると。いい加減法律変えなよ!》
少年法は「少年・少女の健全な育成を図る」のが目的なので、「罰するのではなく、教育し直す」ことが主眼に置かれている。そのため、家庭裁判所により「刑罰」ではなく「処分」が付されることになる。18歳未満であれば、実名が出ることもない。
少年法に詳しい山岸純弁護士は、本誌の取材に「『逆送』という手続きを活用し、正式な刑事裁判で罪を償わせるべき」と指摘する。
「政策によってころころ変わる行政法と異なり、民法や刑法といった国民生活に直結する法律は、1年、2年では変わりません。少年法も同じで、もし最近の少年事件の凶悪化を理由に厳罰化されるのであれば、10年単位の時間がかかります。
たしかに20歳未満でも、さまざまな情報に感化されてとんでもない事件を起こす者がいます。しかし、だからといって、簡単に成人と同じ刑罰を適用するわけにはいきません。
刑罰には、『犯罪に罰が科せられることを予告し、犯罪を思いとどまらせる』目的と、『罪を犯した者を反省させる』目的があるのですが、20歳未満の多くは、刑罰に詳しくないため 『罪の意識』が低いわけです。
罪の意識が低いまま刑罰を与えると、たんに 『なんか、つらいことを強制された』で終わってしまい、その目的が薄れてしまいます。なんだか納得できないような話ですが、法理論上はこのように考えられています。
では、どうすべきか。前述のとおり、法律を変えるには長い時間がかかるので、『逆送』という手続きをもっと活用すべきだと考えます。
20歳未満で罪を犯した者は、原則、家庭裁判所で審理されますが、それを例外的に検察官が通常の裁判所で刑事裁判する手続きを『逆送』といいます。要するに、『少年院などで教育し直すのではなく、罰を与えるべき』という考えによって、通常の刑罰を与えることができるわけです。
昨今の少年事件で、世間的にも凶悪で許容できない、被害が大きいといったものは、どんどん『逆送』の手続きをすることで、少年事件に対する国民の一般的な思いに近づけることは可能だと思っています」
ネット世論の影響力が強まるいま、未成年の犯罪に対する当局の判断も変わるかもしれない。
(FLASHの記事から引用)
本件が強盗致死にあたるのかどうか、専門家の間でも意見が割れるでしょう。大学生がビルから転落死する可能性を中学生たちは予見していなかったと考えられ、いわば想定外の事態だからです。金を出さなければ暴行を加えるぞ、と脅したのは間違いないと思われますが、ナイフなど刃物を出して脅す犯行形態だったのか、生命に危険が及ぶと認識させる急迫性があったかどうか、が問題です
今朝になってNHKが暴行及び恐喝の疑いで逮捕した、と報じてトーンダウンしており、強盗致死事件という扱いではなくなるのかもしれません
さて、引用した記事では少年院ではヌルいので刑事罰を科し服役させるべき、との意見です(強盗致死事件だから、との意味で)
2005年以降に検察官送致となり刑事事件として起訴され、無期懲役を判決を受けたのは少年たちの中で、犯行時15歳というケースはありません。日本の刑事裁判が判例を重視し、過去に例のない判決が出る可能性は極めて低いといえます
なので、本件の15歳の中学生が検察官送致となり、無期懲役判決が下される可能性は皆無でしょう。ただ、起訴されて有期刑の判決を受けた未成年者の中で最年少は何歳であるか、自分は確認できていません
2005年以降に確定した少年無期懲役囚 【前編】
2005年以降に確定した少年無期懲役囚 【後編】
ですから昨日も当ブログで書いたように、本件は検察官送致として起訴するのではなく、家庭裁判所による保護処分(少年院送致)で、相当長期間の矯正教育を実施すべきとの処遇勧告がつけられるものと自分は予想します
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