堺市女子大生殺害 求刑通り懲役20年判決
2022年8月、大阪府堺市で元交際相手の女性を包丁で刺し生命を奪った山本巧次郎被告は懲役20年を求刑されていました。大阪地裁堺支部は13日の判決公判で、求刑通り懲役20年の刑を言い渡しています
大阪・堺市で大学生の女性をマンションから飛び降りさせ、包丁で刺して殺害した罪に問われた山本巧次郎被告(24)に、大阪地方裁判所堺支部は懲役20年の判決を言い渡した。
山本被告は2022年、堺市のマンションで、元交際相手で大学生の大田夏瑚さん(当時20歳)を包丁で刺し、4階のベランダから飛び降りさせてけがをさせ、さらに胸を複数回刺して殺害した罪に問われている。
裁判で山本被告は起訴内容を認めたものの、弁護側は「精神疾患で、殺意も責任能力もなかった」と無罪を主張していた。 一方、検察側は責任能力は完全だと主張。懲役20年を求刑。
13日の判決で、大阪地裁堺支部は山本被告に対し、検察の求刑通りとなる「懲役20年」を言い渡した。
裁判所が依頼した医師による精神鑑定では、山本被告は「急に発症し、意識障害などをもたらすものの、比較的短期間に回復する」という「非定型精神病」を発症していたという結果が出ていた。
弁護側は「大田さんとの交際関係のもつれや教員採用試験の準備でストレスを抱え、非定型精神病を発症した」と主張した。裁判の中で証人として出廷した友人たちの証言をもとに「誰の口からも、山本被告が過去に暴力をふるったことはなかった」と指摘した上で、「そんな山本被告が犯行時は異常な行動をとった」などと主張。「精神疾患のために、悪いかどうか判断することも、犯行を思いとどまることもできなかった」として、事件当時は刑事責任能力がなく無罪だと主張していた。
(中略)
■遺族に謝罪 反省はするけど「覚えていない」
被告人質問では、犯行について記憶がないと主張している山本被告が大田さんや遺族に、以下のように謝罪の言葉を口にした。
弁護側:償いはどうしますか?
山本被告:毎日大田さんに謝罪したい。命日には黙とうを捧げたい
検察側:大田さんにはなんと伝えたい?
山本被告:ごめんなさいと伝えたいです。本当に取り返しのつかないことで、なんでこんなことをしたのか反省しかないです
検察側:被害者の両親には?
山本被告:大田さんはすごく家族思いで、仲が良かったので、想像しがたい気持ちになっていると思います
検察側:記憶がないということだったが、裁判の中であなたがしたことをどう思った?
山本被告:本当にめちゃくちゃ怖い思いを…大田さん、部屋の中でも…逃げても追われると、本当に怖い思いをさせてしまった
裁判員:反省はするけど覚えていない?
山本被告:…そうです
(以下、略。関西テレビの記事から引用)
大阪地裁堺支部の荒木未佳裁判長は、「犯行を終えるとただちに110番通報し、駆けつけた警察官に取り乱しながらも動機や犯行の経緯を適切かつ丁寧に説明し、意味不明ことやつじつまが合わないことはなかった。また捜査の段階から犯行の記憶がないと話していたが、不都合なことのみ記憶をなくしている」と指摘して上で、精神疾患があったと鑑定した医師の意見については「被告の説明を前提にしているが、犯行後の音声などと整合しないことが多く、信用できない」として、責任能力が完全だったと認定しています
そして、「4階から転落して重傷を負った被害者を見て、躊躇なく強い力で6回も刺して殺害していて、強固な殺意があった」と殺意も認定し、「被害者の絶望は想像を絶するもので、無念は計り知れない。有期刑の上限が相当」であると結論付け、求刑通り懲役20年を言い渡しています
そして、「4階から転落して重傷を負った被害者を見て、躊躇なく強い力で6回も刺して殺害していて、強固な殺意があった」と殺意も認定し、「被害者の絶望は想像を絶するもので、無念は計り知れない。有期刑の上限が相当」であると結論付け、求刑通り懲役20年を言い渡しています
最近の裁判報道では群を抜いて丁寧、かつ要点を押さえた記事です
順を追って説明すると、検察は起訴前に山本被告の精神鑑定を実施しており、精神障害などの影響はないとの鑑定結果を得ていたのでしょう。これに対し、弁護側は山本被告の主張を容れて再度の精神鑑定を要求し、2度目の精神鑑定では「事件当時は非定型精神病を罹患していたと考えられる」とする鑑定結果を得たのでしょう
しかし、裁判官は自身に不都合な事柄のみ「忘れた」と主張する山本被告に不信感を抱き、犯行時の記憶がないとする山本被告の主張を虚偽と断じ、犯行時の責任能力に問題はなかったと判断しています
これも刑事事件ではしばしば目にする被告側の主張で、犯行時の記憶がないと言い続ければ精神疾患により無罪判決になるかも、と期待をし嘘を繰り返すのでしょう
さて、山本巧次郎被告についてですが、詳細な情報が報道には出てきません。被害者大田夏瑚さんとは同じ大学の学生ではないと、大学側が明言しています。「教員試験を受ける準備でストレスが…」などと報じた記事はあるので、どこかの大学に在籍し留年していたとの情報もあるのですが、裏付けはありません。いまどき、これだけの事件を起こしながら被告人の素性が出ないというのは不可解です。インターネット上の特定班も山本被告の個人情報には辿り着けなかったようです
追記:山本被告は「大阪府貝塚市にある大阪大谷大学教育学部の学生だった」との情報があります。これも裏付けはないのですが、教員採用を目指していたと報じられていますので教育学部との線は考えられます
追記:山本被告は「大阪府貝塚市にある大阪大谷大学教育学部の学生だった」との情報があります。これも裏付けはないのですが、教員採用を目指していたと報じられていますので教育学部との線は考えられます
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