京都アニメーション放火事件 青葉被告に死刑判決
京都アニメーションのスタジオにガソリンを撒いて放火し、多くの死傷者を出した青葉真司被告に対し、京都地裁は求刑通り死刑判決を言い渡しています。弁護人は控訴する意向のようですから、大阪高裁に舞台を移すのでしょうか?
25日、青葉被告は午前9時40分ごろ京都地裁に入りました。午前10時半に公判がはじまりましたが、短い弁論を経て一時休廷し、午前11時に言い渡しがはじまりました。
結論にあたる「主文」は後回しになりました。裁判長は「有罪判決ですが、主文は最後に告げます」と述べ、先に理由などを読み上げていきます。
裁判長は、判決理由を読み上げる中で争点となっている責任能力についてふれ、「犯行当時、被告人は心神喪失の状態でも、心神耗弱の状態でもなかった」と述べ、青葉被告に善悪を判断する責任能力があることを認めました。
生い立ちに触れながら理由を述べていきました。
裁判長は、青葉被告が「重度の妄想性障害」であったと認めましたが、その妄想が”犯行にどれだけ影響を与えたか”については、「妄想が犯行動機の形成には影響したものの、放火殺人という手段には影響していない」と指摘。
「放火殺人を選んだのは、青葉被告のこれまでの経験や知識、『やられたらやり返す』というパーソナリティーによるものだ」と述べました。
また、犯行については、「生活に困窮する中で、利益を得ている京アニに恨みを募らせ、放火殺人までしないと”盗用が終わらない”と考えて、犯行を決意、京都へ向かった」と認定しました。
「残虐非道の限りである」
責任能力に続いて、量刑について述べていきました。
「被害者の苦痛ははかりしれず、筆舌に尽くしがたい。アニメ業界を良くしようと希望を持って働いていた、落ち度のない被害者らの無念は計り知れない。」と述べ、犯行様態については、「残虐で強固な殺意が感じられる。残虐非道」と述べました。
そして、「経緯、動機、情状等を考慮しても、被告人が人命の尊さを顧みず、ガソリンを撒いて火を放ち、36人を殺害、32人を命の危険に晒したことは、極めて重く、動機に妄想が影響したことなどを考慮しても、死刑を回避する理由にはならない」と、青葉真司被告に死刑判決を言い渡しました。
これまで裁判は22回開かれました。その中で青葉被告が謝罪の言葉を口にしたのは、21回目の裁判でした。遺族らの意見陳述のあと、検察側から受け止めを求められて、「それはやはり申し訳ありませんでしたという形にしかなり得ない」と初めて謝罪の言葉を口にしています。
午後1時40分ごろ、主文が2回読み上げられました。青葉被告は深く頭を下げて、微動だにせずに判決を聞いていました。その後、下を向いた様子で退廷しました。
傍聴席にいた遺族らからは、涙をぬぐう姿が見られました。
(MBSニュースの記事から引用)
36人もの命を奪った犯罪ですから、死刑が適用されるのは当然です
また、これまでの報道では個々の被害者、遺族に焦点を当てた報道があったわけですが、京都アニメーションの事業にも支障を与えたのであり、優秀なアニメーターを多く失ったのは日本のアニメーション文化にとって重大な損失です
京都アニメーションの仕事について語るのは場違いかもしれませんが、日本のアニメーション文化が自分の関心事の1つですから、少しだけ触れておきます
ヴァイオレット・エヴァーガーデン
京都アニメーションの作品はいくつもありますが、最近の作品で特に評価が高いのは「ヴァイオレット・エバーガーデン」でしょう。暁佳奈による同名のライトノベルを原作としてアニメ化された作品で、TVシリーズと劇場版があり、どちらもNetflixで世界に配信されました。特にTVシリーズの第10話は秀作とされ、海外の視聴者が鑑賞しつつ号泣する様子がYOUTUBEにいくつもアップされています
バイオレット・エバーガーデン リアクション
ヴァイオレット・エヴァーガーデン制作中に京都アニメーション放火事件があり、制作資料の多くが焼失する事態になりましたが、生き残った京都アニメーション社員による懸命の取り組みによって完成し、公開されたとの話です
青葉真司被告はこの作品を見たのでしょうか?
「あなたが殺害したアニメーターたちはこれほど素晴らしい作品を生み出すクリエイターだったのだ」と、青葉被告に是非とも観せてやりたいものです
妄想と殺人
最後に青葉被告の精神状態について書きます
弁護人は妄想性障害を理由に、青葉被告の判断能力は低下しており、現実と妄想の区別が曖昧な状態で犯行に及んだと主張しています
しかし、実際には「妄想の中にあって右も左も判別できない状態のまま犯行に至った」のではなく、自分が新人賞に応募した作品が京都アニメーションによってパクられたとの被害妄想が発端となり、それが確信となり、報復計画となり、犯行に至る段階を踏んでいます。きっかけは妄想であり、過度な思い込みであったにせよ、確信をもって報復を思い立ち、より大きな被害を与える手段を模索し、検討し、計画し、実行しているのですから、それぞれの段階で青葉被告なりに考えを巡らせていたと推察でき、十分な判断能力があったと裁判官が認めたのは至極当たり前でしょう。公判の途中まで青葉被告は己の被害妄想を手放そうとはしませんでしたが、妄想に浸りきった昼夜の区別もつかない状態で裁判を受けていたのではなく、自身の置かれた立場、状況などきちんと理解しています。なので妄想を抱いていた上での犯行だから無罪だとか、減刑すべきという主張は通用しないと考えます
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