帯広女性教諭殺害事件 控訴審で差し戻し判決
高校教師同士の不倫関係から殺人・死体遺棄事件へと発展した事件は、1審の釧路地裁が承諾殺人罪の成立を認め、検察の懲役13年(殺人罪としての求刑)に対し懲役6年6月を言い渡しました。求刑の半分です。これは同時に、殺害された被害者側にも責任の一端があったと認める意味があります
しかし、札幌高裁での控訴審では「殺人罪成立について審議が尽くされていない」と1審判決を破棄し、差し戻す決定を下しています
つまりは承諾殺人罪ではなく殺人罪として裁くべきだと注文をつけた形です
2022年5月、元同僚の女性の首を締めて殺害した罪などに問われ、一審で有罪判決となった元高校教師の男の控訴審判決で、札幌高等裁判所は1月11日、一審釧路地裁で承諾殺人罪を適用した判決を破棄し、釧路地裁に差し戻しました。
控訴した検察側は承諾殺人ではなく殺人罪の適用を求めていました。
一審判決で網走市の無職で元高校教師の片桐朱璃(しゅり)被告(36)は、2022年5月、帯広市内のパチンコ店駐車場に止めた乗用車の中で、交際していた元同僚の女性(当時47)の首を同意の上、シートベルトで絞めて殺害し、遺体を雑木林に埋めて遺棄したとして、殺人罪より刑罰が軽い承諾殺人が適用され懲役6年6か月が言い渡されました。
一審で検察側は被告と被害者がそれぞれ首にシートベルトを巻き付けて互いに相手のベルトを引っ張る殺害の方法が「2人が一緒に死ぬことを前提としたもの」と主張しました。その上で「一緒に死ぬかのように装って被害者を殺したのであるから、被害者の承諾には前提に誤りがある」として殺人罪の適用を求めて控訴していました。
一方で弁護側は控訴棄却を求めていました。
1月11日の控訴審判決で札幌高等裁判所は客観的証拠以外にも妻子と別れ被告との関係をつづけることを望んでいた行動など事実の取り調べなど審理を尽くすべきとして、一審判決を破棄して釧路地裁に差し戻しました。
(北海道文化放送の記事から引用)
片桐被告も弁護人もこの札幌高裁の判断には愕然としたのではないでしょうか?
承諾殺人とする1審の判断がひっくり返された上に、差し戻し裁判では殺人罪でより重い刑罰が科せられると考えられるわけで
1審で積み上げた弁論が無に帰した感があります
そもそも、と書いてしまうのですが、片桐被告がきちんと不倫関係の清算に踏み切っていれば殺人などせずに済んだ可能性もあります。もちろん被害者女性の夫も巻き込み、周囲に不倫の事実を明らかにした上で清算するのですから、関係者全員が傷つく結果になるのは明白です。それでも殺人に手を染めるよりはましでしょう。それを避けて、こっそり始末をつけようとしたのが間違いです
片桐被告は被害者女性から脅され、精神的に追い詰められたと1審でアピールしたわけですが、差し戻し審では通用しないかもしれません
被害者が死亡しており、殺害行為は目撃者のいない車の中で行われましたので、片桐被告側が新たな証言や証拠を用意して、「同意の上で首を絞めた」と立証するのは困難でしょう
検察は片桐被告には被害者と一緒に死ぬ気がなかった、と1審で主張し、承諾殺人は成立せず殺人罪の適用するべきだと主張していました
差し戻し審は釧路地裁で1審とは別の裁判官によって行われます。差し戻し審では1審の判決同様に殺人罪成立を否定し、承諾殺人とする判決を下すことも可能です。が、高等裁判所からは「空気を読まない裁判官」だと睨まれ、人事上の報復を受ける可能性もありますので控訴審の意向を汲んだ判決を下すのが一般的です
(関連記事)
帯広女性教諭殺害事件 懲役6年6月の判決
帯広女性教諭殺害事件 懲役13年求刑
帯広女性教諭殺害事件 初公判で「同意の上で」
帯広女性教諭殺害事件 片桐被告は懲戒免職処分
帯広女性教諭殺害事件 シートベルトで絞殺
帯広女性教諭殺害事件 不倫関係の有無
帯広女性教諭殺害事件 元同僚の教師逮捕
年下男性に貢いだ末殺害された女教師 裁判の結果
不倫の果て 菅井優子被告に無期懲役判決
不倫の果て 殺人に放火保険金詐欺で懲役30年
那須女性遺棄事件 無期懲役判決
那須女性遺棄事件 初公判で犯行認める
千葉妻殺し裁判 親権争いが殺人に
千葉妻殺し裁判 夫に懲役25年求刑
千葉妻殺し裁判 警官の夫は殺意否認
妻殺害の元警察官 懲役14年の実刑判決
殺人死体遺棄で懲役20年と無期懲役判決の凶悪(1)
殺人死体遺棄で懲役20年と無期懲役判決の凶悪(2)
沼津殺人バラバラ事件 殺害認める供述