アニメ「葬送のフリーレン」を称賛する中国

日本のアニメーションは「異世界転生モノばかりでつまらなくなった」との指摘があったのは2020年頃です。確かにその数年前から「異世界転生モノ」が目立ち始め、ついには年間を通して「異世界転生モノ」が5作品も6作品も登場する異常な事態になりました。作り手の言い分からすれば、「異世界転生モノが売れるから」なのでしょうが、かと言って送り出された作品がみなウケたというわけではありません
実際、中国でも以下のように指摘されています


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近年の中国で正規配信されている日本のラノベ原作アニメは異世界モノばかり、それも中国で「龍傲天」(日本で言うところの「俺TUEEEEEE」的なスラングだとか)と言われるような内容のものばかりということで、広い範囲の視聴者から「ずっと同じようなジャンル、同じような内容の作品ばかりで変化がない。中国のネット小説では常に新しいネタを取り入れているのに!」という辛い評価が出るようになっているそうです。
日本の異世界系の作品は現在の中国でも需要はそれなりにあるようで、日本のアニメを配信している中国の動画サイトで異世界転移、転生系の作品は比較的安定した再生数を稼ぐジャンルとなっています。


このように批判を浴びている日本の「異世界モノ」ブームですが、評価をひっくり返したのが「葬送のフリーレン」です。
少し長いのですが、レコードチャイナ掲載の記事から以下、引用します
作品の中に織り込まれた情緒や登場人物の心情を丁寧に読み取ろうとした、良いレビューです


中国メディアの澎湃新聞はこのほど、日本の人気アニメ「葬送のフリーレン」の魅力について論じる文章を掲載した。(※本記事はネタバレを含みます)
文章は、「ここ数年、アニメでは異世界ものが流行しており、中でも勇者や魔王、ドラゴン、冒険などは永遠の王道だ」と指摘。同作について「これまた熱血冒険ものかと思いきや、物語が“冒険終了後”からスタートしたのは実に意外だった」と評した。そして、原作漫画はこれまで数々の賞を受賞しアニメ化前から多くのファンを持っていたとし、アニメが4話一挙放送という驚きの方法で放送されるや、多くの視聴者を感動させたとした。
同作が視聴者をとりこにした理由について、記事は「冒険の殻をかぶった、感傷と優しさがあふれる癒しの物語だったからだ」と分析。仲間が次々に年老いていく中、1000年以上生きたエルフであるフリーレンが仲間の死に直面して、彼らを深く知ろうとしなかったことに後悔するというストーリーに触れつつ、フリーレンが発した「人間の寿命は短いって分かっていたのに…」という言葉を「世界で最も心が痛むセリフだった」と評した。
そして、「第1話で目を引いたのは、フリーレンと勇者ヒンメルが50年ぶりに再会したにもかかわらず2人の感情は淡々としていたが、ヒンメルの死に直面したフリーレンが初めて悲しみをはっきりと表に出したことだ」と言及。「同作は感情面においてひたすらに高ぶりを表現しない。この穏やかで含みのある演出は、好きな人には上品で繊細だと称賛されるが、好きでない人は続けて見ようとは思わないだろう」と推察した。
文章は感服した点として、「過去と現在の自然な交錯と、キャラクター形成におけるヒンメルとフリーレンの生死を隔てた向き合い」を挙げた。「主人公はもちろんフリーレンだが、登場と同時に死んでしまうヒンメルもそうだ。フリーレンが再び出た旅の中で回想として繰り返し登場し、そのイメージが次第に鮮明になっていく。勇敢で、高貴で、私欲がなく、少し幼稚な愛すべき仲間。死んだヒンメルは、仲間たちの人生のともしびとなり、仲間たちは彼を尊敬しているのだ」と述べた。
また、「フリーレンが新たな旅の中で、昔の旅を振り返り、ヒンメルの人柄をしのぶことがある。その大切なものを失った目つき、特別な思いは、その人がいなくなって風化するのではなく、逆に新鮮に彼女の記憶の中で輝きを放ち、彼女を笑顔にさせる。その感情は見ている人々の心を動かすものだ」とした。
そして、「同作にはある美しいテーマがある。それは命には終わりがあるが、その意義は命の終わりと共に終わるものではないということだ」と言及。「それぞれの命の意味は、友人の記憶の中に、そして人々の平和な生活の中に続いている。フリーレンは旅の中で忘れられた魔法を探し続けている。多くの魔法はそれ自体の使い道が分からず、意味がないと思えるが、記録し、語り継ぐことはそれ自体が一つの意味なのだ」とし、「一見すると“ダサい”冒険物語だが、その切り口の違いが新たな価値を生み、より深く優しい感情が伝わってくる。見続けることで深い余韻を味わうことができる作品だ」と評した。
(レコードチャイナの記事から引用)


中国メディアの記事は中国共産党の検閲を受けます。よって、中国共産党の声明文のような四角四面のアニメ評が横行し、日本のアニメは退廃的だの暴力的だのと腐すケースもあります。また、一般視聴者を装ってアニメに「日本は歴史を反省していない」などと、政治的な主張丸出しのイチャモンをつけてくる場合もあります
そのような記事を見るにつけ、中国では本格的なアニメーション批評が展開される可能性はなく、批評が存在しない限りアニメーション制作のレベルも向上し得ないと思ったものです
しかし、今回上記のような「葬送のフリーレン」へのレビューを目にすると、ちゃんと見るべきところを見ているのだな、と感心します
地方新聞の記者?がこれを書いたのかは謎です。毎度、このように質の高いレビューが書けるのであれば、中国のアニメ批評を見直すべきかもしれません
さて、異世界ファンタジーでもかつては「狼と香辛料」のような佳作があったのですが、最近は「俺TUEEE」の主人公だけが法外な能力で無双する作品ばかりで、腐ったジャンルと化していました。が、まだまだ工夫次第では新風を吹き込める可能性があると見直しました

『葬送のフリーレン』【一級魔法使い試験編】PV

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