新居浜一家殺害事件を考える 無期懲役判決
数度にわたって取り上げてきた新居浜市の一家3人殺害事件です。裁判所は河野智被告に対して求刑通り無期懲役の判決を言い渡しました
また、検察側の主張通り、河野被告の心神喪失は否定し心神耗弱状態にあったとの判断を示しています
2021年愛媛県新居浜市で一家3人が殺害された事件で、殺人などの罪に問われた男に対し、松山地裁は18日、無期懲役の判決を言い渡しました。
住所不定・無職の河野智被告(56)は、2021年10月、新居浜市垣生の住宅で岩田友義さん(当時80)と妻のアイ子さん(当時80)、それに三男で職場の同僚だった健一さん(当時51)の一家3人をナイフで殺害したとして、殺人などの罪に問われていました。
裁判では犯行当時、統合失調症を患っていた河野被告の刑事責任能力の有無やその程度が争点となり、12日の公判で検察側は判断能力を完全には失っていない「心神耗弱」だったなどとして、無期懲役を求刑。
一方、弁護側は、判断能力を完全に失った「心神喪失」状態で刑事責任は問えないとして、無罪判決を求めていました。
また、被告人は妄想型の統合失調症を発症していたことから「生活は妄想に支配されていたといっても過言ではない」。
さらに、“電磁波攻撃”されていた元同僚の健一さんや友義さんを殺害した後も「行動を制御できるほど正常な心理が残っていなかったため、アイ子さんを巻き添えにしてしまった」と説明しました。
その後、河野被告は最終陳述で「統合失調症の診断は誤りで、正常者の発言として裁いてもらいたい」などと述べていました。
松山地裁で開かれた18日の判決公判で、渡邉一昭裁判長は、「被害妄想が無ければ犯行に及ぶことはなかった」としたものの、被告が犯行を度々ためらっていたことなどを指摘し「判断能力を完全に失っていたわけではない」と述べ、心神耗弱の状態を認定しました。
その上で「被害結果は極めて重大であり、遺族の悲しみは察するに余りある」として、検察側の求刑どおり無期懲役を言い渡しました。
判決を受け、弁護側は控訴について「検討中」としています。
(iTVあいテレビの記事から引用)
別の報道によれば、裁判長は「友義さんを刺す前などに子どもの人生への影響を考えて殺害をためらうなど、自らの行為の意味を理解し行為を選択する能力は完全に失っていなかった」と、河野被告の刑事責任能力を認める判断を示したと伝えられています
なので、裁判官としては被告の行動(被告が自供した調書によるもの=被告自身による認識)を元にして個別具体的に判断しているのが伝わってきます。これは統合失調症だから心神喪失=無罪、といった乱暴な決めつけではないのが分かります
さて、ここで統合失調症の患者が「電磁波攻撃を受けている」とか「電波に操られそうになる」など、電波を引き合いに出す理由を簡潔に書いておきます
調べてみると明治時代の精神疾患を疑われる患者の場合、「狐憑き」とか「ヘビの祟り」といった動物の霊や物の怪による支配・攻撃を挙げるケースが多かったとされます。それがやがて「自分は天皇である」とか「陸軍大将である」などの権威を称する妄想が出現し(天皇制国家の権威が一般庶民にも浸透した結果でしょう)、やがて「電気」や「エレキ」による障害を訴える人も増えたという変遷があるようです
家庭で電気が使われるようになり、ビリビリと感電する体験が一般化されると「電気」にまつわる妄想が増えたのでしょう
さらにラジオの普及とともに「電波」にまつわる妄想が生じ、現在では「Wi-Fi」の妄想を訴える若者も出現しているそうです
時代の変化や生活環境の変化が妄想に反映しているのが分かります
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